上映作品

疾走するアメリカン・インディペンデントの今

11月30日(日)ベルブホール 第1部

10:30-11:54
あまりにも単純化しすぎた彼女の美
12:20-13:46
フランシス・ハ
13:46-14:16
トーク
ゲスト:山崎まどか氏(コラムニスト)、長谷川町蔵氏(コラムニスト/ライター)

チケット料金

  • 一般 前売:1,200円 / 当日:1,400円
  • 子ども(4歳~小学生)前売:800円 / 当日:900円

e+(イープラス)チケット情報 / 子ども共通券

あまりにも単純化しすぎた彼女の美

Oversimplification of Her Beauty

  • 2012年/アメリカ/Variance Films配給/1時間24分
  • 監督・脚本・編集=テレンス・ナンス
  • 撮影=マシュー・ブレイ、ショーン・ピーターズ
  • 音楽=フライング・ロータス
  • プロデューサー=Jay-Z
  • 出演者=テレンス・ナンス、ナミク・ミンター、デクスター・ジョーンズ、シャネル・ピアソン、タリバ・ラティーファ・ニューマン

ストーリー

好きな女性の気を惹くために、一緒にフィクション映画を作ろうと提案する男性が主人公。主人公とその女性の二人の関係をベースにして描かれる映画のその愛はフィクションかもしれないが、それは同時に彼が彼女に近づくための唯一の手段でもある。「彼」と「彼女」のあいだのプラトニックでロマンティックな関係を、実写とアニメーションを組み合わせて描く。

コメント

刺激と心地よさが同居する驚きに満ちた作品である。フィクション/ドキュメンタリー、アニメに、ホームビデオ風の映像といったあらゆる映像表現と、膨大な哲学的ナレーションが、フライング・ロータスのこれまたジャンル横断的な甘美な音楽に乗せて、観客の身体に流れ込んで行く。

本作の「彼」と「彼女」のあいだには、物理的距離とは別の、流動的な空間が広がっている。誰しも隣にいるのにその人を遠くに感じたり、逆に遠くにいるのに触れ合っているような近さを感じたりすることがあるだろう。筆者が思い出したのは、坂口恭平の「幻年時代」という小説である。同著には、幼少期の著者の、幼稚園までのたった400メートルの通学路を舞台にした冒険が描かれている。同著の母親と繋ぐ手の感触、潮風の匂い、地面を踏みつける足の感触などによって立体的に紡がれる空間の味わいは、本作の多様なメディアを駆使して描かれる、恋心と勘繰りによって歪み膨らむ二人のあいだの空間の味わいと近いものがある。

ソーシャル時代の新たなポエティック・ラブロマンスの誕生を見逃すな!(佐)

フランシス・ハ

Frances Ha

  • 2012年/アメリカ/エスパース・サロウ配給/1時間26分
  • 監督・脚本=ノア・バームバック
  • 脚本=グレタ・ガーウィグ
  • 撮影=サム・レヴィ
  • 音楽=ジョージ・ドレイコリアス
  • 出演=グレタ・ガーウィグ、ミッキー・サムナー、アダム・ドライバー、マイケル・ゼゲン、シャーロット・ダンボワーズ、パトリック・ヒューシンガー

ストーリー

27歳のフランシス(G・ガーウィグ)は、ニューヨーク・ブルックリンで学生時代からの親友ソフィー(M・サムナー)と暮らしている。ところが、彼氏と別れ、ソフィーには同居を解消されてしまい、見習いダンサーの仕事では家賃も払うことができず、自分の居場所を探してニューヨークの街を転々とするはめになってしまう。

コメント

「遅れてきたカミング・オブ・エイジ」そんなふうに言われてしまうぐらい、フランシスは不器用で空気も読めないし、子供っぽい。27歳、見習いモダンダンサーの仕事がうまくいく気配もないのに、現実を見ようとしないし、生活は無計画そのもの。ダンサーだから運動しなきゃとか言いながらも、休みの日はごろごろして、部屋は散らかり放題。でもそんなところに実際ちょっと共感してしまうし、何より彼女は最強にチャーミングで、ニューヨークの街を疾走する姿や、だめな自分に落ち込んでとぼとぼ歩く姿にはぐっとくるものがある。

「大人になる」って、みんなが当たり前にやってることなのに、どうしてちゃんとできないんだろう。そんなことを思ったことがある人は、きっとラストで涙がこみ上げてくるかもしれない。走って転んですりむいても、また前を向いて歩き出すフランシスに、私は心からの拍手をおくりたい。不器用だし非モテだし、まだちゃんとした大人にはなれないけど、きっとこれからも大丈夫。(尾)

トーク

ゲスト:山崎まどか氏(コラムニスト)、長谷川町蔵氏(コラムニスト/ライター)

山崎 まどか 氏
Yamasaki Madoka

東京都出身。コラムニスト。著書に「オリーブ少女ライフ」(河出書房新社)、「『自分』整理術」(講談社)、「女子とニューヨーク」(メディア総合研究所)、翻訳書にタオ・リンの「イー・イー・イー」(河出書房新社)がある。

長谷川 町蔵 氏
Hasegawa Machizo

1968年生まれ、東京都出身。ライター/コラムニスト。得意分野はアメリカの今の映画と音楽。著書に「21世紀アメリカの喜劇人」、「聴くシネマ×観るロック」、「文化系のためのヒップホップ入門」(大和田俊之との共著)、「ハイスクールU.S.A.」(山崎まどかとの共著)がある。

プログラムレポート

「疾走するアメリカン・インディペンデントの今」と題して、『あまりにも単純化しすぎた彼女の美』(テレンス・ナンス監督)と『フランシス・ハ』(ノア・バームバック監督)の上映とトークを行いました。

とてもユニークで刺激的な『あまりにも〜』は、日本国内では他の映画祭で数回上映されたきり(国内配給未定)で知名度の低い作品のため集客がかなり不安でしたが、会場一杯にお客さんが集まり感激でした。『フランシス・ハ』も最高に面白い作品だったのですが、一部上映トラブルがあり大変申し訳ございませんでした(以後発生のないよう映写環境を見直ししております)。

さて、上映後に行われた、山﨑まどかさん(コラムニスト)と長谷川町蔵さん(コラムニスト/ライター)のトークは、両作品の魅力をディープに掘り下げるとても濃密なものとなりました。作品の成り立ちから、『あまりにも〜』の内省的な感じと『フランシス・ハ』のマンブルコアという現代的な特徴について、他作品他ジャンルも絡めて解説。両作品の舞台がニューヨークのブルックリンであり、「テレンス・ナンス(『あまりにも〜』の主人公)がしょんぼりしてるすぐ横を、フランシス(『フランシス・ハ』の主人公)が走っていたかも知れない」という両作を繋ぐコメントには、紆余曲折を経て実現した本企画の企画者として、特にグッと来ました。お二方の博識ぶりに舌を巻きつつ、もっともっと映画を見て知りたくなる大充実のトークでした。

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