第27回映画祭TAMA CINEMA FORUM

プログラムレポート

【C-2】アントナン・ペレジャトコ監督特集‐フレンチ・コメディの奇天烈な闘争‐

11/19[日] ベルブホール
  • 12:00-13:28
    7月14日の娘
  • 13:40-15:19
    ジャングルの掟
  • 12:55-13:40
    トーク 
    ゲスト:小柳帝氏(ライター、編集者、翻訳者、フランス語講師)

フランスの雑誌で“ヌーヴェル・ヌーヴェルヴァーグ”といった特集も組まれたりと、新世代監督の代表的な一人としてもあげられるアントナン・ペレジャトコ監督。数々の短編・中編映画で評価を得た後、長編2本を監督している全世界注目の新進監督ですが、今回のプログラムではその長編2本を一挙上映。上映後にはフランスの旬な作品・俳優に造詣が深い小柳帝さんをゲストにお迎えしてトークを開催しました。

『7月14日の娘』(2013)、『ジャングルの掟』(2016)、どちらの作品も日本では劇場未公開のため、日本国内での知名度が高いとは言えないプログラム内容ではありましたが、当日の会場はこの新しい作家による傑作コメディを観ようと、老若男女様々な映画ファンの皆様にお集まりいただきました。また、上映中のホール内では繰り返し観客の皆様の笑い声が響いており、暗闇のなか、未知の映画作品を皆で笑いながら観る映画体験がとても印象的でした。

上映後のトークでは、小柳さんからペレジャトコ作品の魅力を語っていただきました。劇中にいくつかあらわれるオマージュからもわかるように、ペレジャトコ監督の作品には50年代後半から誰も思いつかないような映画を撮ってきたジャン=リュック・ゴダール監督の影響がみてとれるとのこと。またそれが単純な真似やパロディーにとどまらず、現代映画の文脈において上手く捉えなおされていることで、ゴダール作品を知らない観客にも楽しめるエンターテインメントとして成立してる。視覚的なギャグを散りばめるやり方にはどこかジャック・タチ監督の系譜を思わせると、フランス映画史に紐付けて解説していただきました。

現在のフランス映画ではストーリーに忠実でリアリズムに則って描かれる作品が主流となっていて、コメディ作品であってもそのようなスタイルの作品が人気とのことですが、フラッシュバックや、頭のなかの妄想シーンの挿入を多用しながらリアリズム演出をあえて放棄していくペレジャトコ監督の手法は、ゴダール作品のように独自の方法で異化効果をもたらしていて、現実離れした喜劇を画期的に創造していると評価。「監督はあらゆるシークエンスにギャグを散りばめようとするから、演じるうえでは非常に大変だった。」と語る両作品に主演している俳優・ヴァンサン・マケーニュ氏の証言や、「(ギャグは)うけてもうけなくてもいい」という監督本人の談を紹介しながら、ただ笑えるだけには留まらないペレジャトコ監督作品の確固としたスタイルについて明らかにしていただきました。

昨今の日本におけるフランス映画の受容については、国際的に評判の良い映画でもなかなか劇場公開が決まらず、新しい観客がフランス映画に触れ合う機会が減っているというようなネガティブな声も聞こえてきます。その一方で、ペレジャトコ監督を始めとした新しい作家たちによる映画は、新鮮な魅力でフランス映画との出会いを誘う新たなきっかけになっていくのではないかと改めて感じました。劇場未公開のフランス映画については、各地の映画祭や、今回企画にご協力いただいたアンスティチュ・フランセ等で上映されていることがありますので、今回の上映で未公開映画に興味をお持ちいただいた方はそちらをチェックいただくと、新しい映画と出会える機会があるかもしれません。また、TAMA CINEMA FORUMでも引き続き劇場未公開映画の上映プログラムを開催していく予定ですので、是非これからもご注目ください。

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