第28回映画祭TAMA CINEMA FORUM

プログラム紹介

【C-11】アピチャッポン×遠藤麻衣子

11/24[土] ベルブホール

チケット料金

一般
前売:1,200円 / 当日:1,400円
子ども(4歳~小学生)
前売:800円 / 当日:900円

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ブンミおじさんの森

  • 2010年/イギリス、タイ、ドイツ、フランス、スペイン/ムヴィオラ配給/114分
  • 監督・脚本= アピチャッポン・ウィーラセタクン
  • 製作=サイモン・フィールド、キース・グリフィス、シャルル・ド・モー、アピチャッポン・ウィーラセタクン
  • 撮影=サヨムプー・ムックディープロム
  • 編集・ポストプロダクション監修=リー・チャ―タメーティークン
  • 音響デザイン=清水宏一、アクリットチャルーム・カンヤーナミット
  • 出演=タナパット・サーイセイマー、ジェンジラー・ポンパット、サクダー・ケーオブアディ、ナッタカーン・アパイウォン
予告編

ストーリー

腎臓の病に冒され、死を間近にしたブンミは、妻の妹ジェンをタイ東北部にある自分の農園に呼び寄せる。そこに19年前に亡くなった妻が現れ、数年前に行方不明になった息子も姿を変えて現れる。やがてブンミは愛するものたちとともに森に入っていく……。

コメント

タイの僧侶による著書「前世を思い出せる男」より着想を得た本作は、監督の故郷・タイ東北部の災厄の歴史や記憶をまなざす「PRIMITIVE」プロジェクトの一環として製作された。劇中で映される田舎の風景を眺めていると、不思議と自分の過去も思い出されていく。学生時代に訪れたバンコクの騒がしさ、屈託のない人々の「マイペンライ」の響き、夜行バスにゆられて着いたチェンマイのたおやかさ。その後、何人もの男たちが透析を受ける病院で、所在なげにみえた父はいなくなった。アピチャッポンが描く物語は人、動物、精霊たちのうごめき、それらが自然に混ざり合っている。物語を漂いながらも、すっかりと景色が変わった所に自らたどり着いてしまう。それは、目を開けてみる夢であり、ある時は眠りに落ち、そこはかとないざわめきに導かれ、異界への入口を開けてしまうのだ。闇に包まれ霧がたちこめるなか、私たちは森にみられ、月は下界を照らしている。眠りに落ちている間、スクリーンで佇んでいるものたちはこちらをみつめている。終盤、日常にそっとさしこまれる現象とともに流れる、Penguin Villaの「Acrophobia」がただひたすらにしみる。(内)

映画公式サイト

ブンミおじさんの森

KUICHISAN

  • 2011年/日本、アメリカ/A FOOL配給/76分
  • 監督・製作・脚本・編集= 遠藤麻衣子
  • 共同製作= ジェシカ・オレック、奥田彩子
  • 撮影=ショーン・プライス・ウィリアムズ
  • 録音=アレックス・ロッシング
  • 音響デザイン=ブライアン・ハーマン
  • 音楽=服部峻、小林七生、J.C.モリスン、加藤英樹、ブライアン・ハーマン、遠藤麻衣子
  • 出演= 石原雷三、エレノア・ヘンドリックス、李千鶴
予告編

ストーリー

米兵が行きかうとある沖縄の町。少年は、この世の終わりが来るのを、コーラフロートを飲みながら待っている。淡々と進む夏休み、ある出会いをきっかけに、少年は自分のなかに渦巻くものを感じ始める。渦巻はやがてその島の持つ自然の力と一体となり、少年をいざなっていく。

コメント

本作を劇場の暗闇で二回鑑賞したというより、細胞レベルで体感したという言葉が正しい。スクリーンいっぱいに映し出された少年の頭が刈りあげられる冒頭、毛根は波打ち、輪廻のサイクルが回りだす。少年のまなざしは仏陀のうつしみと思うほど、曇りなき眼で幾層もの物語が重なる世界をそのままにとらえている。街をさまよい歩く少年や白人女性の浮遊する視点とよるべなさ、昼とは明らかに異質で畏怖する時間が流れる夜、語られる妖怪と彼岸の世界、変容していく現実。言葉として名づけられる前の生々しい感情がやんばるの森、原始の海にゆらめいている。意識と無意識を行きつ戻りつ、幾人もの夢に入り込んでしまったような映像と音の波が観るものを溶かしていく。それらが押しよせた先の混沌に光がさしこみ、沖縄という土地に根ざした神話が立ち上がってくるのだ。

ジョッシュ・サフディ監督が本作を語る言葉のように、『KUICHISAN』は観たものの体に入り覚醒していく。今まで自分にはなかったと思っていた、ある感覚に気づいてしまうのだから。

MAIKO ENDOは違う惑星から来た。美しくオリジナルな惑星で、そこで見る色や形は以前見たことがあるようで、実際には完全に新しい。(内)

映画公式サイト

kuichi-tech

ゲスト紹介

遠藤 麻衣子 監督

Endo Maiko

1981年生まれ、ヘルシンキ出身。2000年に東京からニューヨークへ渡り、バイオリニストとして演奏活動、映画のサウンドトラックへの音楽提供など音楽中心の活動を展開。アメリカ製作のドキュメンタリー映画『Beetle Queen Conquers Tokyo』(09年) で共同製作を務めたのをきっかけに、日米合作長編映画『KUICHISAN』(11年) で監督デビュー。同作は、12年イフラヴァ国際ドキュメンタリー映画祭にてグランプリを受賞。11年から東京を拠点に活動し、日仏合作で長編2作目となる『TECHNOLOGY』(16年) を完成させた。

夏目 深雪 氏

Natsume Miyuki

批評家、編集者。共編書に「激闘!アジアン・アクション映画大進撃」(洋泉社ムック)「アピチャッポン・ウィーラセタクン 光と記憶のアーティスト」(フィルムアート社)「国境を超える現代ヨーロッパ映画250 移民・辺境・マイノリティ」(河出書房新社)「インド映画完全ガイド」(世界文化社)ほか多数。2008年から東京国際映画祭の選考業務に携わり、アジア映画の未公開作品を多く鑑賞。アプリ版ぴあで水先案内人として映画紹介中。

プログラム一覧

今泉力哉監督、三宅唱監督
東出昌大氏、金原由佳氏(映画ジャーナリスト)
望月衣塑子氏(東京新聞社会部記者)
大九明子監督、菊地健雄監督、白石裕菜企画プロデューサー、八尾香澄プロデューサー
伊藤沙莉氏、渋川清彦氏、飯塚健監督
高橋隆大氏、長尾理世氏、石丸将吾氏、唐鎌将仁氏、飯野舞耶氏、律子氏(以上出演者)、石川貴雄氏(助監督)
清原惟監督、佐々木敦氏(批評家/HEADZ)、長尾理世氏(『ゾンからのメッセージ』出演)、律子氏(『ゾンからのメッセージ』、『わたしたちの家』出演)
ベルトラン・マンディコ監督、エリナ・レーヴェンソン氏(女優)、五所純子氏(文筆家)
有坂塁氏(移動映画館「キノ・イグルー」代表)
原一男監督
遠藤麻衣子監督、夏目深雪氏(批評家、編集者)
村川透監督
団地団
(大山顕氏、佐藤大氏、速水健朗氏、稲田豊史氏、山内マリコ氏)
細川徹監督、三宅弘城氏
菊地健雄監督、片桐はいり氏
カメ止めチーム
中野ダンキチ氏(サメンテイター)、藤田みさ氏(ラジオパーソナリティ)、中野将樹氏(芸術家)ほか
深川麻衣氏、志田彩良氏
枝優花監督、穂志もえか(保紫 萌香)氏、金原由佳氏(映画ジャーナリスト)