第29回映画祭TAMA CINEMA FORUM

プログラム紹介

【A-1】第11回TAMA映画賞授賞式

11/17[日] 中央大学 多摩キャンパス クレセントホール

チケット料金

一般
前売:2,700円 / 当日:3,000円
子ども(4歳~小学生)
前売:800円 / 当日:900円

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長いお別れ

  • 2019年/『長いお別れ』製作委員会製作/アスミック・エース配給/127分
  • 監督・脚本=中野量太
  • エクゼクティブ・プロデューサー=豊島雅郎、福田一平
  • プロデューサー=原尭志、井手陽子
  • 原作=中島京子
  • 脚本=大野敏哉
  • 撮影=月永雄太
  • 美術=丸尾知行
  • 音楽=渡邊崇
  • 編集=伊藤潤一
  • 出演=蒼井優、竹内結子、松原千恵子、山﨑努、北村有起哉、中村倫也、杉田雷麟、蒲田優惟人、松澤匠、清水くるみ

ストーリー

母(松原)から父・昇平(山﨑)の誕生日会に招かれた二人の娘(竹内・蒼井)は、父が認知症になったことを知らされる。厳格だった昇平が、日常生活にも支障をきたすようになり、日々記憶も薄れていくが、昇平には妻や娘たちが忘れていたある思い出が心のなかで息づいていた。

コメント

家族が認知症の進行により日常生活やコミュニケーションに支障をきたすことは周囲にとって精神的・肉体的負担がはかり知れないが、それを<長いお別れ>と受け止められるか否かによって、過ごす時間は随分違ったものになる。この作品は家族を根っこで結びつける<何か>があれば、そう受け止められるようになると希望を与えてくれる。

<長いお別れ>に入った父が一人で遊園地に行き着いてしまうシーンが素敵だ。娘たちが幼かった頃に妻と娘たちが遊園地に行った思い出。行った本人たちはとっくに忘れているが、父のなかには傘を持って行かなかった彼女らが雨に濡れることを案じて居ても発ってもいられなかった思いは今も心のなかで息づいている。そんな父の思いを娘たちが知った時、彼女らにこれまでにない父親像が見えてきて、敬愛の念を深めて新たな関係性を築いていく――。

超高齢社会に入って家族のありように変化が訪れているが、根っこで結びついている<何か>があると誰しもが信じている社会であればと願う。(淳)

嵐電

  • 2019年/ミグラントバーズ、オムロ、京都造形芸術大学製作/ミグラントバーズ、マジックアワー配給/114分
  • 監督・脚本・プロデューサー=鈴木卓爾
  • 企画・プロデュース=西田宣善
  • プロデューサー=田村由美
  • 脚本=浅利宏
  • 撮影=鈴木一博
  • 美術=嵩村裕司
  • 音楽=あがた森魚
  • 編集=鈴木歓
  • 出演=井浦新、大西礼芳、安部聡子、金井浩人、窪瀬環、石田健太、福本純里、水上竜士

ストーリー

鎌倉からやって来た作家の平岡衛星(井浦)は線路そばに部屋を借り、嵐電にまつわる不思議な話を取材し始める。修学旅行で青森から来た北門南天(窪瀬)は電車を8mmカメラで撮影する地元の少年・有村子午線(石田)と出会う。太秦撮影所近くのカフェで働く小倉嘉子(大西)は、東京から来た俳優・吉田譜雨(金井)に京都弁の指導をすることになるが……。

コメント

どうして旅に出なかったんだ、と思いながらも、旅するように生活に入りこむ路面電車に身をまかせた。冬の光に包まれて京都の街なかを走る嵐電はなんだか勇ましく、夜の波間に浮かんでは消える姿は猫バスのようだ。歴史を積み重ねた古都の神話性や異界の磁場を感じながら、出会うはずもなかった人たちがふいに駅のホームで交わったり離れていくさまをみて、いつのまにか嵐電の目線で日々の移ろいをみつめていく。この世界に生きているそれぞれが、呼吸するように街に開かれたり閉じていく姿に心震わされ、その美しさにただ見とれてしまう。「読み合わせ楽しかったです。帷子ノ辻駅で待っています」と絞り出る言の葉はいつしか言霊に。

大きな時のながれのなかで、人間は絶えず何かに悩まされている。電車に乗ること、カメラで撮ること、物語を書くこと、演技すること、どのような局面でも想像することで新たな視点が生まれ、私たちをどこかへ連れ出してくれる。誰かを想うことの尊さとともに、今日も嵐電は走っている。(内)

受賞者プロフィール

鈴木 卓爾 監督

Suzuki Takuji

1967年生まれ、静岡県出身。京都造形芸術大学映画学科准教授。長編映画作品に『私は猫ストーカー』(2009年)、『ゲゲゲの女房』(10年)、『ジョギング渡り鳥』(16年/第8回TAMA映画賞特別賞受賞)、『ゾンからのメッセージ』(18年)などがある。俳優としても活躍し、『容疑者Xの献身』(08年)、『セトウツミ』(16年)、『あゝ、荒野』(17年)など、多数の作品に出演している。本受賞作では脚本・プロデューサーも務めている。

中野 量太 監督

Nakano Ryota

1973年生まれ、京都府出身。日本映画学校卒業制作『バンザイ人生まっ赤っ赤。』(2000年)が第1回TAMA NEW WAVEグランプリを獲得。 12年制作の『チチを撮りに』がSKIPシティ国際Dシネマ映画祭で日本人初の監督賞を受賞。ベルリン国際映画祭など各国の映画祭に招待され、第5回TAMA映画賞最優秀新進監督賞など国内外で14 の賞に輝く。16 年『湯を沸かすほどの熱い愛』を公開し、日本アカデミー賞など14の映画賞で34 部門の受賞を果たした。来年『浅田家!』の公開が控えている。

新海 誠 監督

Shinkai Makoto

1973年生まれ、長野県出身。『ほしのこえ』(2002年)で第1回新世紀東京国際アニメフェア21の公募部門優秀賞などを受賞。以降、『雲のむこう、約束の場所』(04年)、『秒速5センチメートル』(07年)、『星を追う子ども』(11年)、『言の葉の庭』(13年)など数々の作品を発表。16年には社会現象にまでなった『君の名は。』が大ヒット。本年公開の『天気の子』(19年)も2作連続で興行収入100億円を超えるヒットとなり、海外での映画祭上映・公開も相次いでいる。

藤井 道人 監督

Fujii Michihito

1986年生まれ、東京都出身。日本大学芸術学部映画学科卒業。脚本家の青木研次に師事。映像プロダクション「BABEL LABEL」を2010年に設立。伊坂幸太郎原作『オー! ファーザー』(14年)で劇場公開作品監督デビュー。以降、『光と血』(17年)、Netflixオリジナル作品『100万円の女たち』(17年)、『青の帰り道』(18年)などを発表。本年は受賞作のほか『デイアンドナイト』が公開された。

山﨑 努 氏

Yamazaki Tsutomu

1936年生まれ、千葉県出身。俳優座養成所を経て59年に文学座へ入団。60年に『大学の山賊たち』で映画デビュー。『天国と地獄』(63年)の誘拐犯役で脚光を浴び、『赤ひげ』(65年)、『影武者』(80年)といった黒澤明監督作品、『お葬式』(84年)『マルサの女』(87年)などの伊丹十三監督作品に出演。2000年に紫綬褒章、07年に旭日小綬章を受章。近年では『日本のいちばん長い日』(15年)、『無限の住人』(17年)、『モリのいる場所』(18年)などに出演している。

井浦 新 氏

Iura Arata

1974年生まれ、東京都出身。98年、是枝裕和監督作『ワンダフルライフ』の主演で俳優デビュー。2002年、『ピンポン』で注目を集める。その後、『蛇にピアス』(08年)、『キャタピラー』(10年)、『かぞくのくに』『11.25 自決の日 三島由紀夫と若者たち』(共に 12年 )、『そして父になる』(13年)、『止められるか、俺たちを』(18年)などに出演。本年の出演作には『赤い雪 Red Snow』『嵐電』『こはく』『宮本から君へ』『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』がある。

蒼井 優 氏

Aoi Yu

1985年生まれ、福岡県出身。2001年に『リリィ・シュシュのすべて』で映画デビューを果たし、『花とアリス』(04 年)で初主演。『フラガール』(06年)では日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞。 16 年『オーバー・フェンス』で第8回TAMA 映画賞最優秀女優賞を受賞。その他主な出演作に『彼女がその名を知らない鳥たち』(17年)、『斬、』(18年)など。本年は『長いお別れ』『宮本から君へ』『ある船頭の話』などに出演し、来年『ロマンスドール』の公開が控えている。

前田 敦子 氏

Maeda Atsuko

1991年生まれ、千葉県出身。AKB48のメンバーとして活躍し、『あしたの私のつくり方』(2007年)で映画デビュー。12年『苦役列車』で第4回TAMA映画賞最優秀新進女優賞を受賞。その他主な出演作に『もらとりあむタマ子』(13年)、『イニシエーション・ラブ』(15年)、『素敵なダイナマイトスキャンダル』(18年)、『葬式の名人』(19年)などがある。『旅のおわり世界のはじまり』(19年)は『Seventh Code』(14年)、『散歩する侵略者』(17年)に次ぐ黒沢清監督作品への出演となった。

山戸 結希 監督

Yamato Ū-ki

2012年、上智大学在学中に『あの娘が海辺で踊ってる』で監督デビュー。『おとぎ話みたい』(13 年)で日本映画プロフェッショナル大賞新人賞を受賞。映画『溺れるナイフ』(16年)では、小松菜奈、菅田将暉を主演に迎えてヒット。企画・プロデュースを務めたオムニバス作品『21世紀の女の子』(18 - 19 年)は、東京国際映画祭に特別招待される。最新作は『ホットギミック ガールミーツボーイ』(19年)。

奥山 大史 監督

Okuyama Hiroshi

1996年生まれ、東京都出身。青山学院大学卒業。在学中に監督した短編映画『Tokyo 2001/10/21 22:32 ~ 22:41』(2018年、主演:大竹しのぶ)が第23回釜山国際映画祭に出品。監督・脚本・撮影・編集を行った初長編作品『僕はイエス様が嫌い』(19年)がサンセバスチャン国際映画祭において最優秀新人監督賞を史上最年少で受賞すると共にストックホルム国際映画祭・ダブリン国際映画祭で最優秀撮影賞を受賞する。

成田 凌 氏

Narita Ryo

1993年生まれ、埼玉県出身。2014年に連続ドラマ「FLASHBACK」で俳優デビューを果たし、映画『飛べないコトリとメリーゴーランド』(15年)で映画初出演。以降、TV ドラマ、映画に数多く出演し、18年に『スマホを落としただけなのに』、『ビブリア古書堂の事件手帖』で第42回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。本年は『愛がなんだ』『チワワちゃん』『さよならくちびる』など、すでに5作品が公開。12月に『カツベン!』、来年『窮鼠はチーズの夢を見る』などの公開が控えている。

清水 尋也 氏

Shimizu Hiroya

1999年生まれ、東京都出身。2012年に俳優デビューした後『渇き。』(14年)で注目を集め、『ソロモンの偽証 前編・事件/後編 · 裁判』(15 年)、『ちはやふる-上の句-/-下の句-/-結び-』(16 年、18年)など多数の話題作に出演。近年の映画出演作に『ミスミソウ』、『3D彼女 リアルガール』(共に18年)、『貞子』、『パラレルワールド・ラブストーリー』、『ホットギミック ガールミーツボーイ』(19年)に出演。待機作に『甘いお酒でうがい』(20年)などがある。

岸井 ゆきの 氏

Kishii Yukino

1992年生まれ、神奈川県出身。2009年にドラマ「小公女セイラ」でデビュー後、映画、ドラマ、舞台と幅広く活躍。朝の連続テレビ小説「まんぷく」(18 - 19年)の主人公の姪役で話題を呼んだ。映画初主演作『おじいちゃん、死んじゃったって。』(17年)で、第39回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。主な出演作に『友だちのパパが好き』(15年)、『ピンクとグレー』『森山中教習所』(共に16年)、『ここは退屈迎えに来て』(18年)など。最新作『前田建設ファンタジー営業部』は来年公開。

シム・ウンギョン 氏

Shim Eun-kyung

1994年生まれ、韓国ソウル特別市出身。2004年にドラマ「張吉山」でデビュー。名子役として活躍。映画の活動も重ねて『サニー 永遠の仲間たち』(11年)は観客動員740万人、続く『怪しい彼女』(14年)は同860万人を記録し、最優秀主演女優賞を多数受賞した。日本映画初出演の『新聞記者』(19年)では、主人公の若手記者を演じて一躍日本国内の注目を集めた。10月には日本映画2作目となる『ブルーアワーにぶっ飛ばす』が公開された。

プログラム一覧

成田凌氏、今泉力哉監督、木村和平氏(写真家)
前田敦子氏、黒沢清監督
河村光庸プロデューサー 松崎健夫氏(映画評論家)※ビデオメッセージあり(シム・ウンギョン氏、藤井道人監督)
山戸結希監督、志磨遼平氏(ドレスコーズ)
横尾初喜監督、井浦新氏
鈴木卓爾監督、あがた森魚氏(ミュージシャン)、井浦新氏、大森元気氏
鈴木洋平監督、柳英里紗氏、杉原永純氏(元YCAMキュレーター、映画キュレーター、プロデューサー)
アンジャリ<八尋美樹>氏(インド楽しいこと案内人)
佐藤零郎監督、渥美喜子氏(gojo/映画ライター・シネ砦集団代表)
中原仁氏(音楽プロデューサー)
石井達也監督、根矢涼香氏、松崎健夫氏(映画評論家)
寺尾紗穂氏(音楽家・文筆家、「原発労働者」著者)
丸山昇一氏(脚本家)
杉田協士監督、宮崎大祐監督
団地団
坂本浩一監督、山本千尋氏
今泉力哉監督、北條誠人氏(ユーロスペース支配人)
長久允監督、奥山大史監督
宇賀那健一監督、山口明氏(デザイナー)