第29回映画祭TAMA CINEMA FORUM

プログラムレポート

【C-12】福島の声を聴く

11/29[金]ベルブホール
  • 16:00-19:00
    福島は語る
  • 19:45-20:30
    トーク&ミニライブ
    ゲスト:寺尾紗穂氏(音楽家・文筆家、「原発労働者」著者)

東日本大震災から 8 年以上が経過。14 人の証言者による現在進行形の想いにじっくりと耳を澄ませる珠玉のドキュメンタリー映画『福島は語る』を上映しました。

その後、証言者の一人である詩人の星ひかりさんによるギャラリートークが行われました。星さんは冒頭、土井敏邦監督の撮影手法に言及。カメラを回し続けて取材対象の言葉を引き出す姿勢で、時間をかけて制作された作品であることを紹介しました。その後、被災直後からの自身の経験、地域社会の現状、子どもたちを中心に保養に取組む重要性などを、写真パネルを用いながら説明されました。

そして、音楽家・文筆家の寺尾紗穂さんによるトークとライブが行われました。寺尾さんは『福島は語る』には関わっていないですが、「原発労働者」の著者でもあり、ぜひお話を聴きたいと思いトークとライブを依頼させていただきました。寺尾紗穂さんはまず「原発労働者」という本を書いた経緯を語りました。山谷に住み建設現場で働いていた坂本さんと出会ったこと、原発被曝について調べたときに「ここに書かれていることが本当だとしたら原発は普段の日常から危ないんじゃないか?」と思って原発労働者に話を聞きはじめたことなどを語りました。

寺尾さんは『福島は語る』を観て特に印象的だったのは食べ物のことで「少しでも安全なものを食べたいというのは自然なことなのに人間の尊厳が脅かされている」とお話しして現状について胸を痛められました。証言者の名前や話していた内容・数値などをメモしており丁寧に話されていたのが印象的でした。そして福島と東京で相互理解が進んでいないことについて、「人によって情報に対する反応が違うのは当たり前なので、それを踏まえずに相手を批判するとさらに分断が進んでしまう」「こういった映画で知った人々のことを自分の周りに伝えていくことが大切」と話しました。また、この映画のように「上に上がっていかない声」がたくさんある一方で「知ることによって困っている人に寄り添うことができるし、SNSなどで聞こえなかった声を取り上げることができる時代である」と希望を示しました。

最後に「”自分の周りに伝えていくこと”について戸惑いを感じてしまうのだがどうすればいいか」という質問に対して、「単に頭で仕入れた情報を伝えるだけだと敬遠されてしまうかもしれないが、相手に伝わる感情を共有することが大切」とお話しされました。短い時間ではありましたがここでトークは終了しました。

山谷で出会った坂本さんをモデルに書いたという「アジアの汗」からライブはスタート。力強いピアノと伸びやかな歌声が一気にホールに響き渡りました。そして『福島は語る』を観て感じたことや曲にまつわるエピソードを交えながらライブは進んでいきました。2曲目は石牟礼道子さんの詩に寺尾さんが曲をつけた「白虹」。「苦海浄土 わが水俣病」の著書として知られる石牟礼さんは、水俣病被害に関する相談を受ける辛さを吐露した永野三智さんに対して「相手が悶え苦しんでいるときにその横に寄り添っている人がいるかどうかが大事なんですよ」というメッセージを伝えたそうです。

初めて原発労働者の労働組合を立ち上げた斎藤征二さんに思いを馳せて、3曲目は「死んだ男の残したものは」という曲をカバー。4曲目は「闇に消される原発被曝者」(樋口健二/著)を読んだ衝撃や近しい人の自殺などが重なり当時(3.11前)の心境を元にできた歌であるという「私は知らない」。赤裸々な叫びがヒリヒリと会場に響きました。過去の敦賀市長の発言を紹介したあと「いかに未来に対する責任を考えない人たちが政治を牛耳ってきたか。それは今も続いていると思う。どこから変わるんでしょうね。まずは女の人がたくさん政治家にならないといけないと思いますね」と寺尾さんはお話して、最後に「たよりないもののために」を歌いました。

その後の物販では多くのお客様がCDや書籍を手に取り、寺尾さんとお話ししていたのが印象的でした。お越しいただいた皆様、誠にありがとうございました!

セットリスト
1. アジアの汗
2. 白虹(石牟礼道子さんの詩に寺尾紗穂さんが曲をつけたもの)
3. 死んだ男の残したものは(カバー)(作詞:谷川俊太郎、作曲:武満徹)
4. 私は知らない
5. たよりないもののために

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