開催日:2012年11月23日(金・祝)
会場:パルテノン多摩 大ホール
授賞式上映作品(上映順):
『わが母の記』『桐島、部活やめるってよ』『この空の花 ― 長岡花火物語』

授賞式には、大林宣彦監督、吉田大八監督、入江悠監督、役所広司さん、沖田修一監督、神木隆之介さん、満島真之介さん、前田敦子さん、橋本愛さんが登壇し、塚本晋也監督と宮﨑あおいさんはビデオメッセージで参加(塚本晋也監督は別日のプログラムで登壇されました)。

第4回TAMA映画賞授賞式を、受賞者のコメントから振り返りましょう。大林宣彦監督は「映画をこしらえてきて、いつの間にやら老人と呼ばれる歳になってしまった。今日は感慨無量」、「『インディーズじいちゃん』はまだまだ元気」と会場を沸かせました。吉田大八監督は口コミから生まれた「桐島現象」について、「映画から引き出された感情の吹き出す勢いが、ここまで凄いとは」と自身も驚いていることを明かしました。

役所広司さんは『わが母の記』で共演した樹木希林さんについて、「怪女優ですからね。今日は欠席ですけど、その辺にいるんじゃないかと」会場の笑いを誘った後、「どうか皆さん、渋めの映画も応援してください」とアピール。宮﨑あおいさんは「作品を作ることに携われるのは幸せなこと。誠実にちゃんといろいろなことと向き合ってがんばっていきたい」とビデオメッセージを寄せました。

入江悠監督は「(今日の会場に)僕らを目当てに来た人は誰もいないと思うんで」と自虐気味に切り出したあと『SR サイタマノラッパー』の出演者らを招き入れて「かましちゃってください!」とけしかけると、「YO! YO! YO!」とアカペララップのパフォーマンスがスタート。同じく第4回TAMA映画賞を受賞した作品や受賞者らの名前を巧みに織りまぜたライムで笑いを誘い、観客とのコールアンドレスポンスで大いに盛り上がりました。

満島真之介さんは「姉(満島ひかり)には受賞を最初に伝え、とても喜んでくれました。姉も最初にもらえた賞がこのTAMA映画賞だったので」と笑いを誘い、神木隆之介さんは「深みのある人間になり、俳優として成長していきたい」と今後の意気込みを語りました。また、橋本愛さんが「私、この仕事が全然好きじゃなかった時期があって。でもこの現場にいた人たちと出会えたことで、やっと(この仕事が)好きになれました」と感極まって涙を浮かべる一幕も。前田敦子さんは「この映画祭は、市民の方々がボランティアで行われていると聞きました。そんな愛のある映画祭で、素敵な賞をいただけて本当に嬉しいです」とコメントしました。

この年より授賞式会場をパルテノン多摩小ホールから大ホールに変更しましたが、多くのお客様にご来場いただいたおかげでほぼ満席となり、大盛況のうちに終えることができた第4回TAMA映画賞授賞式でした。

ギャラリー
映画賞エピソード

前田敦子さんのご登壇

TAMA映画賞授賞式は第3回までパルテノン多摩小ホール(300席)がほぼ満席になる程度の動員でした。パルテノン多摩大ホール(1400席)の会場も抑えてはいたのですが、まだそれを埋めるほどの集客力はないため、授賞式で使用する予定はありませんでした。第4回では新進女優賞に前田敦子さんを選考させていただきました。前田さんの事務所がスケジュールのご調整をしてくださり、ご登壇が決まったのは10月も中旬に差し掛かる頃でした。それを発表したところWEBニュースなどで大きく取り上げられ、事務局への問い合わせも多数寄せられました。その状況から急遽映画賞授賞式を小ホールから大ホールに変更しました。300席⇒1400席のキャパ変更は無理があるかと思っていたのですが、授賞式当日大ホールがほぼ満席になり、全国ネットのTV局の取材も初めて入りました。以降は会場を大ホールに移して、毎回活況を呈しています。前田敦子さんのご登壇はこの映画賞を全国区に引き上げてくださり、実行委員として感謝の念でいっぱいです。そして、当日授賞式でお越しになった前田さんはとてもきさくで、スタッフ・関係者にフレンドリーに対応されていたのが印象に残っています。

受賞者・受賞理由

最優秀作品賞

-本年度最も活力溢れる作品の監督、及びスタッフ・キャストに対し表彰-

『この空の花 -長岡花火物語』
大林宣彦監督、及びスタッフ・キャスト一同

平和を願い、未来への希望を祈る想いとイマジネーションがずっしり詰まったこの作品は、大震災の体験をとおして生き方を見つめ直している私たちに、生きることの意義を改めて喚起し、勇気を与えてくれた。

『桐島、部活やめるってよ』
吉田大八監督、及びスタッフ・キャスト一同

ごく普通の高校生たちの日常生活を、多面的に登場人物・できごとに光を当てることによって、この年代のもつ心の揺らぎを繊細に救い上げて、青春の一瞬のきらめきとほろ苦さを鮮やかに切り取った。

特別賞

-映画ファンを魅了した事象に対し表彰-

ありあまる母性によって自らが破綻していく、『KOTOKO』の壮絶な女性像に対して
塚本晋也監督&Cocco

母親なら誰しも感じたことのある、弱い存在を抱えて世界と向き合わねばならない恐怖を、塚本晋也監督とCoccoの創造力をもってこの上なく美しく痛ましい映像で表現し、生きていくことへの覚悟を示してくれた。

映画界に新風を巻き起こした「SR サイタマノラッパー」シリーズの快進撃に対して
入江悠監督、及びスタッフ・キャスト一同

シリーズをとおして、インディーズ精神はそのままに、出演者、制作者一丸となって本格派エンタテインメント作品へとステップアップしていった快進撃は映画ファンを熱狂させた。

最優秀男優賞

-本年度最も心に残った男優を表彰-

役所広司
『わが母の記』『キツツキと雨』『聯合艦隊司令長官 山本五十六』

自然体の穏やかな演技のなかにしっかりとした自己を感じさせる人物像をつくりあげるだけでなく、画面にいるだけでまわりの俳優がいきいきと見えてくる影響力を発揮して、作品全体を輝かせていた。

最優秀女優賞

-本年度最も心に残った女優を表彰-

樹木希林
『わが母の記』

時に微笑ましく、時に憎たらしく、時に愛おしく。観客誰しもが自分の母親と重ねあわせ、そのありがたさ、温もりを呼び覚ませてくれる、家族の源・太陽のような母親像の造形に感謝して。

宮﨑あおい
『わが母の記』『天地明察』『ツレがうつになりまして。』『おおかみこどもの雨と雪』

『わが母の記』において、父への反発心を持つ無邪気な少女時代から垣間見える“女”の立ち居振る舞いまで、時間の移ろいのなかで貫き通すまっすぐな家族への想いを女性としての成長のなかで演じきった。

最優秀新進監督賞

-本年度最も飛躍した監督、もしくは顕著な活躍をした新人監督を表彰-

ヤン・ヨンヒ監督
『かぞくのくに』

祖国・北朝鮮の政策とそれに翻弄される家族という重いテーマに対し、その狭間で揺れる家族一人ひとりの心情が手に取るようにわかる普遍性あるドラマに仕立てた手腕は見事というほかはない。

沖田修一監督
『キツツキと雨』

成人した息子と父の情景を、キコリと映画監督の交流を通してユーモラスかつ愛情深く包み込んだ作風は、次の作品を早く観たいと思わせる心豊かな温もりが感じられる。

最優秀新進男優賞

-本年度最も飛躍した男優、もしくは顕著な活躍をした新人男優を表彰-

神木隆之介
『桐島、部活やめるってよ』『SPEC 天』

ナイーブさとコミカルさ、危うさと親しみやすさ、無邪気と屈折、絶妙のバランスと間合いで演じ、幅広い役柄を演じ分ける高い将来性を感じさせた。

満島真之介
『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』

三島由紀夫に心酔する若き活動家・森田の純粋なまでの一途な敬慕と頑強な意志を鋭い眼光で体現し、映画初出演にして第一線の映画俳優になりうることを知らしめた。

最優秀新進女優賞

-本年度最も飛躍した女優、もしくは顕著な活躍をした新人女優を表彰-

前田敦子
『苦役列車』

単なるミューズではなく、生活の実感や煩悶、不安を抱え、バブル期を前にした時代の空気感を身にまとった演技に、今後息の長い女優としての活躍する大きな可能性を感じさせた。

橋本愛
『桐島、部活やめるってよ』『Another』『HOME 愛しの座敷わらし』『貞子3D』など

10代中盤ならではの透明感、苛立ち、戸惑い、不敵さを、時にひらりとした軽さで、時に物語の核となる重さで、青春映画からホラー映画まで見事に演じ分けた。