今年上映されたドキュメンタリーの中から、料理店とその店主である料理人にスポットを当てた二本をご用意いたしました。和食の粋、寿司職人の世界をアメリカ人監督が描き、日本文化の美しさにあふれた『二郎は鮨の夢を見る』と、みんな大好きラーメンの誰もが知る有名店にカメラが入りその知られざる歴史を映し出す『ラーメンより大切なもの 東池袋大勝軒50年の秘密』。どちらの作品もとても味わい深いです。ぜひともご賞味ください。
11月29日(金) ベルブホール 第1部
東京の銀座の地下にある10席ほどの小さな鮨屋、すきやばし次郎は「ミシュランガイド東京」で6年連続、最高評価である三つ星の評価を受け、国内はもとより外国からも高い評価を受けてきた。その店の店主である小野二郎に惹かれ、感動したアメリカ人監督のデヴィッド・ゲルブが、3ヶ月の密着取材を行い完成させたのがこの作品。日本の伝統的な食である“鮨”と、小野二郎の“職人の生き様”がアメリカ人の目線によって描かれる異色のドキュメンタリー。
メニューはおまかせで3万円から。一般庶民からしたら尻込みしてしまう値段だが、この映画を観終わると3万円でも安いかも、と、つい思ってしまった。被写体となっているすきやばし次郎の店主である小野二郎や、店を切り盛りする弟子たちもとても魅力的だが、映画自体に何か不思議な魅力を感じさせられた。実はこの映画、アメリカ人が監督をしている。私たち日本人にとても身近である伝統的な食文化が、外国のフィルターを一旦通されて映像化されたことにより、違和感が感じられるかもしれない。だがそれこそがこの映画の魅力であるのだ。だいぶ鮨からは話がずれてしまったが、日本人が監督をしていたら撮れなかったであろう不思議な魅力をこの映画から感じて欲しい。そして観終わった後は鮨を食べに行きましょう。(光)
池袋駅から徒歩15分の場所にあったラーメン店、「東池袋大勝軒」。連日長蛇の列ができる誰もが認める有名店であった。その店主は、お客さんと弟子たちに慕われ、名人として尊敬を集めていた。この映画は2001年から2007年までカメラが密着して追ったドキュメンタリーに、追加撮影を加えて再編集した作品です。
ラーメンの行列店として有名な「東池袋 大勝軒」。このお店を取り上げたフジテレビの深夜番組「ザ・ノンフィクション」を劇場公開版として再編集したドキュメンタリーです。
大勝軒の厨房に初めてカメラが入り、名店の姿を描いていきます。店の近所の人々、常連客、修行して独立した弟子たちなども描かれますが、映画の中心はその人柄から「ラーメン界の聖人」とも言われる店主の山岸さんです。カメラの前で、山岸さんの温和な表情の奥底にある影が映し出され、店と山岸さんが迎えた重大な転機が描かれます。この作品は「ラーメン映画」みたいなものではなくて、一人の人間の生き様を描いた作品です。なんとも意味深なタイトルである『ラーメンより大切なもの』。でも、この映画を観た人には「大切なもの」とは、何であるか判ってもらえると思う。そして、映画を観終わった後は温かいラーメンを食べに行きましょう。お腹いっぱいになる大盛りのつけ麺もいいなぁ。(友)
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