女優、ディレクターとして目覚ましい活躍を見せる、ミア・ハンセン=ラブ、ジュリー・デルピー監督作品を特集。初恋の出会いと別れを激しくも穏やかに描いたミア・ハンセン=ラブ作品『グッバイ・ファーストラブ』。家族と親戚に囲まれて過ごしたヴァカンスをシニカルに、そしてユーモアを織り交ぜて描いたジュリー・デルピー作品『スカイラブ』。フランス映画の大きな潮流を成す、最重要のシネアストの作品を堪能して下さい。
11月30日(土) ベルブホール 第1部
UN AMOUR DE JEUNESSE
高校生のカミーユ(L・クレトン)とシュリヴァン(B・ウルゼドフスキー)は、深く愛し合っていた。しかし、ふたりの関係はシュリヴァンに海外への渡航の話が出たころから気まずいものに変わってしまう。やがてカミーユの懇願も聞き入れず、シュリヴァンは旅立ってしまう。数年後、建築事務所に勤めるカミーユは、妻子ある教師と付き合い始めていた。そんな折、街で偶然出会ったシュリヴァンの母親から彼の消息を聞き、ふたりはかつてのように再会するのだが……。
ミア・ハンセン=ラブ監督の『グッバイ・ファーストラブ』は監督自身の10代の恋愛体験から着想された映画です。運命的で情熱的な初恋の喪失、そしてその喪失感からの再生を描いています。
主人公を演じるローラ・クレントンは見た目にはクールで理性的な印象が強いのですが、情熱的な感情を内に秘めながらも年月と共に成熟していく女性を演じています。彼女が抱えるものは、自分でコントロールさえ出来ない圧倒的な熱量の感情です。自分一人で作り上げてしまった恋愛感情で、目の前にいる恋人さえ目に入らないくらい激しく盲目的な恋愛という印象があります。
同じフランス出身のフランソワ・トリュフォー監督『アデルの恋の物語』の主人公ほどの極端さはありませんが、その激しさは両作品の間で通低しているように思えます。(彰)
LE SKYLAB
家族旅行の列車の中、4人家族の母、アルベルティーヌ(L・アルヴァレス)は子供の頃のバカンスのことを思い出す。1979年の夏、11歳のアルベルティーヌは父親のジャン(E・エルモスニーノ)、母親のアンナ(J・デルピー)と、祖母の誕生日を祝いにブルターニュ地方へ訪れる。そこに集まった老若男女の大家族はそれぞれの人生模様を繰り広げる。
フランスから素敵な家族の映画が届いた。夏の陽射しに照らされたブルターニュの緑と海、カラフルな70年代ファッションで彩られたポップな画面に写されるのは、個性が豊かすぎてちょっと困る家族たちを「それでも家族って素晴らしい!!」とユーモアと愛しさたっぷりで描いたファミリーコメディである。
監督・脚本は本作にも出演している女優ジュリー・デルピー。老いも若きも集まる大家族のバカンスのなか、それぞれの瞬間を切りとり繋ぐことで、たった一日と半分の時の流れのなかに、一つの大きな人生のストーリーを奇跡的な瑞々しさで見せる手腕が素晴らしい。
さて、タイトルの『スカイラブ』はアメリカの人工衛星の名前から。スカイラブ墜落のニュースが流れるそんな夏の日に「もしかすると世界は今日で終わってしまうかもしれない」と考える少女の目に映った家族の風景は、例えそれが地球最後の日ではなくとも、忘れ得ぬ大切な日々となるのだった。(宮)
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