上映作品

中野量太監督特集 ー作品に息づく人生讃歌ー

『チチを撮りに』が、第3回サハリン国際映画祭グランプリ、第7回アジアン・フィルム・アワードで渡辺真起子が最優秀助演賞受賞など、海外の映画祭で高い評価を得て一躍注目を集める中野量太監督。日本映画学校の卒業制作で第1回TAMA NEW WAVEグランプリ作品でもある処女作『バンザイ人生まっ赤っ赤。』は2度と観ることができないかもしれない貴重な上映。(16mmフィルム上映)お見逃しなく!

11月24日(日) ベルブホール 第1部

10:30~11:53
バンザイ人生まっ赤っ赤。
12:15~12:45
琥珀色のキラキラ
12:45~13:59
チチを撮りに
13:59~14:35
トーク
ゲスト:中野量太監督、柳英里紗氏、松原菜野花氏

チケット料金

  • 一般 前売:1,200円 / 当日:1,400円
    子ども(4歳~小学生) 前売:800円 / 当日:900円

Lコード:38160

バンザイ人生まっ赤っ赤。

  • 2000年/日本映画学校(現・日本映画大学)製作・提供/1時間23分
  • 監督・脚本=中野量太
  • 脚本=丸内敏治、西田直子
  • 撮影=樋野友二、谷本幸治、村上木綿子、谷詩文
  • 出演=山中康弘、沖ともみ、有山尚宏、古波津英隆

コメント

家族を自殺で亡くしている高校生の圭太とハナは、自殺斡旋のチラシを撒いて自殺する人の心境を調べようと試みるが、仕事は舞い込んでこない。そんななか2人は公園で一風変わった老人と出会う……。

TAMA NEW WAVEの栄えある第1回グランプリに輝いた本作品は、当時の中野監督のコメントにあった「自分を愛してくれる人、自分を笑ってくれる人がいて、初めて自分で自分の存在を実感できるのだと思う。でも、どう存在するかは自分自身にかかっている」というメッセージがずっしりと込められた実直な作品だった。登場人物の悩みや情念がスクリーンに鮮明に映し出されて、胸が熱くなったことを昨日のことのように覚えている。十数年ぶりにあの興奮を味わえることが楽しみでならない。(淳)

琥珀色のキラキラ

  • 2008年/ndjc2008事務局(VIPO)製作・提供/30分
  • 監督・脚本=中野量太
  • 製作総指揮=迫本淳一
  • プロデューサー=平形則安
  • 撮影=木村信也
  • 音楽=沢渡一樹
  • 編集=渡辺行夫
  • 出演=尾野真千子、松原菜野花、滝藤賢一、小市慢太郎、長宗我部陽子

ストーリー

中学1年生の藍沢涼子(松原)は、2年前に母を病気で亡くし父・省三(小市)と2人暮らし。そんな藍沢家に道子さん(尾野)がやってきたが、3人の関係は微妙。そんなある日、父の健康を心配せざるをえない事件が起きて涼子は……。

コメント

中学1年生の頃は、大人に憧れる子どもの時期だろうと思う。涼子は父の恋人・道子さんとあまり上手く関係が築けていない。気持ちとしては、母を亡くし父だけが頼りという状況でもあるのかもしれない。家族になろうとする3人だが、まだそういう雰囲気ではない。

しかし、あることがきっかけで(これは観る方のために詳しくは書かない)、涼子は父の健康に不安を抱き、父を想う気持ちが爆発する。そして、思い悩む過程で、さまざまな変化が訪れる。

劇場で観たときは、冒頭で「やられた!」と心のなかで叫んだ。その後も、そのまま物語の展開にのめり込んでいった。30分の短編ながら、ぎっしり詰まったとても濃厚なストーリー。『チチを撮りに』にもつながる、中野量太監督が描く家族の温かいつながりとそのありがたさ。ニヤッと笑わせながら、ホロっとさせる脚本と演出がすばらしい。

本作はVIPO(映像産業振興機構)によるndjc(若手映画作家育成プロジェクト)の一環で2008年に製作された。(渉)

チチを撮りに

  • 2012年/ピクチャーズネットワーク、日吉ヶ丘ピクチャーズ製作/デジタルSKIPステーション配給/1時間14分
  • 監督・脚本=中野量太
  • プロデューサー=平形則安
  • 撮影=平野晋吾
  • 音楽=渡邊崇、
  • 出演=柳英里紗、松原菜野花、渡辺真起子、滝藤賢一、二階堂智、小林海人

ストーリー

フリーターの姉・葉月(柳)と女子高生の妹・呼春(松原)は、母の佐和(渡辺)と3人暮らし。夏のある日、14年前に家を出た父の余命が短いので、会いに行って写真を撮ってきて欲しいと母から頼まれる。父のいる田舎町の駅に降り立った二人は、父が亡くなったことを知る。異母兄弟の出迎えを受け葬儀場に向かう二人だが、そこには人生の修羅場が待っていた……。

コメント

観終わって、心がポカポカと暖かく、幸福感に浸って映画館を後にできる作品との出会いは何よりも嬉しい。2月にレイトショーで公開されたとき、外の空気は寒いのにそんな暖かさにすっぽり包み込んでくれた作品だった。笑いあり、涙ありで、娘二人と母を主人公に夏の数日間を描いた物語だが、家族一人ひとりの異なった想いが、ふわっとひとつの想いに収斂されていく見事なストーリー展開に心を打たれた。日本映画に今までなかった爽やかな母娘ものだと思う。

また、「笑い」の大切さを気づかせてくれた作品でもあった。近頃、実生活を忘れてしばし映画の世界に入り込むことがないなと思っていたが、周りのお客さんと声をあげて「笑う」ことで客席に一体感が生まれ、皆でその世界に共感する映画本来の醍醐味を思い起こさせてくれた。

そして、母と娘を演じた渡辺・柳・松原をはじめ俳優陣もみんなよかった。なかでも亡くなった父の弟役を演じた滝藤賢一の泣かせる演技が強く印象に残った。(淳)

トーク

ゲスト:中野量太監督、柳英里紗氏、松原菜野花氏

中野 量太 監督Nakano Ryota

1973年生まれ、京都出身。日本映画学校の卒業制作『バンザイ人生まっ赤っ赤。』(2000年)が第1回TAMA NEW WAVEグランプリを獲得。08年文化庁若手育成プロジェクトで撮影した『琥珀色のキラキラ』が高い評価を得る。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2012においてSKIPシティアワード及び監督賞を受賞し、SKIPシティDシネマプロジェクト第3弾として公開された『チチを撮りに』は、第63回ベルリン国際映画祭正式招待のほか、第3回サハリン国際映画祭でグランプリなど現在11の賞を受賞、海外でも高い評価を得ている。 

柳 英里紗 氏Yanagi Erisa

1990年生まれ、ハワイ出身。99年犬童一心監督の『金髪の草原』で映画デビュー。以降、『明日があるさ THE MOVIE』(2002年)、『神童』(06年)、『天然コケッコー』『あしたの私のつくり方』(共に07年)、『グーグーだって猫である』(08年)、『婚前特急』『星守る犬』(共に11年)に出演。主演作に『そうなんだ』(09年、水藤友基監督)、『惑星のかけら』(11年、吉田良子監督)がある。12月に舞台 時速246億vol.B「theatrical」に出演、来年1月に『アイドル・イズ・デッド--ノンちゃんのプロパガンダ大戦争--』 の公開が予定されている。

松原 菜野花 氏Matsubara Nanoka

1996年生まれ。10歳の頃から子役として活動を始める。映画出演作に『母べえ』(2007年、山田洋次監督)、『ブタがいた教室』(08年、前田哲監督)など。TVドラマでは、「受験の神様」、「トップセールス」などに出演している。中野量太監督作品では、『琥珀色のキラキラ』(08年)、『チチを撮りに』(12年)『~沈まない三つの家~』(13年)の3作品に主演しているキーパーソン でもある。

Copyright © 2000-2013 TAMA CINEMA FORUM. All rights reserved.