日本が世界に誇るアニメーション映画監督、新海誠。最近ではロシア、フランス、スコットランドなど海外の映画祭でも頻繁に上映され、国内外からの評価が高い。そんな監督の軌跡をたどる珠玉の4作品を一挙上映。いまだ根強い人気を誇る「秒速5センチメートル」から、今年大ヒットを記録した「言の葉の庭」まで、一貫したコンセプトから制作されるその美しい映像と、音楽、感動のストーリーを、是非スクリーンでご覧下さい!
11月30日(土) ベルブホール 第2部
大いなる喪失と、ひそやかな再生への希望にみちた、せつなすぎる傑作である。
本作は3本の短編で構成されている。
中学時代の貴樹と明里の物語「桜花抄」。
種子島へ転校した貴樹と同級生、花苗の物語「コスモナウト」。
貴樹が就職してから転機を迎えるまでの物語「秒速5センチメートル」。
どんなに大切な人であっても、距離の遠さや時間の経過とともに疎遠になっていくことがあるかも知れない。
一方で、すぐ近くにいても気持ちがとどかないもどかしさ。
渡せなかった手紙。
れなかったメール。
言えなかった言葉。
――そこに、ある、たゆとう想い。
映像はひたすら綺麗である。そして、「『秒速5センチメートル」で流れる山崎まさよしの「One more time, One more chance」に重なってたたみかけられる、映像と音楽がシンクロしたシーンのすばらしさ――。
ちなみに、秒速5センチメートルとは桜の花びらの落ちるスピードのこと。(吉)
あなたはラジオを片手に空を見上げたことはありますか? 遠い空の向こうに広がる、不思議な世界を想像したことはありますか? 僕にはあります。この作品『星を追う子ども』はそんな誰でも持つ憧れを美しい映像で描き出したアニメーション作品です。
世界各地に伝承として残る広大な地下世界「アガルタ」。そこに数奇な出会いと運命に導かれて迷い込む主人公、明日菜。アガルタからやって来て明日菜に深い感銘を残す少年、シュン。シュンに瓜二つで明日菜の持つあるものをめぐる秘密に関わる少年、シン。明日菜のクラスの新任教師として赴任してきたが、実はアガルタに関する大きな秘密と野望をもつ男、森崎。彼らが、アガルタとその果てにある死者を甦らせる力をめぐってストーリーは進みます。
この映画の魅力はまず、その美しい映像世界。スクリーンにあふれる異世界を堪能してください。同時に、新海監督ならではの、深い悲しみを追い、それを振り払おうとあがき続ける、愚かで悲しいとも言えるキャラクターの姿を見てください。(友)
いつも自分をみていてくれるだれかのまなざしを感じたとき、人は幸せを感じ、成長する。自然と相手を思いやり、互いの心情をわかちあえるようになる。
そして、だれかを見守るまなざしを持てるようになるのだ。
この6分40秒にはそんな幸せがぎゅっと詰まっている。(遠)
現代の東京を舞台にした、新海誠監督初の“孤悲(こい)”物語。
靴職人を目指す高校生、タカオと謎めいた年上の女性、ユキノ。
雨が降る季節に出会った二人は、それぞれの悩みを抱えながらも、現実に目をそらすことなく、前へ進むため歩こうと決心する。時に静かにやさしく、強く激しく降る雨は、タカオとユキノそれぞれの気持ちを素直に表現し、 作品で用いられる万葉歌は、現代ならではの解釈がなされ、時代を超えて私たちの心に染み入る。
また、本作品の終盤、秦基博が歌う「Rain(作詞、作曲:大江千里)」にあわせて躍動するシーンは圧巻の一言。雨だけでなく、虹、夕日、雲の晴れ間、すべてがダイナミックかつ繊細に、観るものに強く訴えかけてくる。
現実よりも、より現実的な文学作品。
―鳴る神の 少し響みて さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ―
『言の葉の庭』を観れば、6月の雨が少しだけ待ち遠しくなるかもしれない。(松)
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