11月24日(月・祝)ベルブホール 第1部
東京からやってきた青年・工藤(大西)。自然豊かな田舎村で、工藤は自給自足生活を始めようとしていた。ところが、一見平和な村では、地元の土建業者と自然保護団体との対立や、鹿や猪といった害獣から畑を守ろうとする人々と獣の戦いなど、さまざまな問題が起こっていた。そんななか、工藤は人里離れた山奥でひっそりと暮らすお爺(田中)と春菜(武田)に出会う……。
「圧巻」の一言に尽きる。日本三大秘境に数えられる徳島県三好市祖谷で、全編35mmフィルムで撮影。自主制作でありながら3年の歳月をかけ作り込まれた。その舞台や環境を最大限に生かし切り、深山幽谷の地域にある独特の不気味さ、不穏さを吹きさらす風で、木々のざわめきで表現してみせる。普通のものが「そこ」にあることで新たな息が吹き込まれる。祖谷で生を営んだからこそ見えただろうものを確かに捉えて、観客の眼に焼き付ける。この作品独特の魅力、味わい、そして快感とも言える感覚の根幹だ。29歳の蔦哲一朗監督をはじめとするスタッフ・キャストが世に送り出した本作のスケール、インパクトが他の追随を許さないことは誰もが認めるはずだ。そして次作以降に何を生み、仕掛けてくるのか、期待して止まないことも。(橋)
ゲスト:蔦哲一朗監督 司会:大寺眞輔氏(映画批評家)
1984年生まれ、徳島県出身。池田高等学校野球部を高校野球日本一に導いた蔦文也を祖父に持つ。東京工芸大学卒業後、映写技師のかたわら『夢の島』(2009年)を製作し、第31回ぴあフィルムフェスティバルで観客賞を受賞。13年、35mmフィルムで撮影した初長編『祖谷物語 ――おくのひと――』が第26回東京国際映画祭「アジアの未来」部門にて、スペシャル・メンションを受賞。
1965年生まれ。映画批評家、早稲田大学講師、アンスティチュ・フランセ横浜シネクラブ講師、新文芸坐シネマテーク講師、IndieTokyo主催。雑誌や新聞に映画評などを寄稿する傍ら、テレビ出演も。主著は「現代映画講義」「黒沢清の映画術」。2013年DotDashを立ち上げジョアン・ペドロ・ロドリゲス・レトロスペクティヴを開催。
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