11月22日(土)パルテノン多摩 大ホール
e+(イープラス)チケット情報 / 子ども共通券
『野のなななのか』鑑賞チケット(1,000円)の当日販売について
晴夫(大泉)は売れないマジシャン。現状に絶望し、人生を諦めかける。そんな時もたらされた父の訃報。「オヤジ、生きるって難しいな……!」――涙が溢れ出る晴夫。そんな彼に突如として青天から一筋の雷が放たれる!気付けばそこは40年前の浅草だった。やがて晴夫は若かりし頃の父(劇団ひとり)と母(柴咲)に出合い、母は晴夫を妊娠する。
「自分が生まれた時ってどんな感じだったのだろう?」――妊娠~出産の過程において大きなドラマがあるというのは分かっていたつもりであったが、今までそこから私個人の生誕を連想することがなかった。しかし今回、成年・晴夫の視点で晴夫自身の出生までを追うことにより、晴夫と自分を重ね合わせてそういう気持ちを持つことができたようだ。私の時もおそらく、その過程でさまざまな紆余曲折、喜怒哀楽があったはず。過去に思いを馳せ、両親、特に今は亡き母が私を生んで喜ぶ場面を想像した時、もっと人生を頑張ろうと自然に決意することができた。成年層の心に響くものがこの作品にはある。
さまざまな分野で才能を発揮する劇団ひとりの初監督作品。監督自ら晴夫の父を熱演している。晴夫役の大泉とは息もピッタリで絡みも秀逸。二人からはラストシーンまで目が離せない。晴夫の手品シーンや昭和の浅草を見事に再現している映像も見所。(徳)
重度の物忘れにより病院で検査を受けた玲子(原田)は、末期の脳腫瘍で余命1週間と宣告される。そして認知症のような状態になった玲子は、それまで話すことのなかった家族への本音をぶちまける。身重の妻を持つ長男・浩介(妻夫木)は、お気楽大学生の次男・俊平(池松)、頼りにならない父・克明(長塚)を尻目に母を救おうとするが……。
大黒柱とは呼べない頼りない父、壊れかけた家族を見て見ぬふりする兄、一見ちゃらんぽらんな弟、そしてそんな3人を細い糸でなんとか繋ぎ止める母……よくありそうな家族再生映画。と見せかけて――明日は我が身――そんな言葉が頭を過ぎる。そのくらい現実味のある作品。母の病をきっかけにハリボテ家族の姿が浮き彫りになっていく、そんな重くて地味な題材を石井監督はどう描くのか。前作の『舟を編む』のように言葉で表現されない部分はもちろん、長男と次男の対比や、家族4人の関係性など終始惹き付けられる。家族とは?……そう問われているわけではないけれど、観た人は心のなかで自然とそれを探してしまうのではないか。難しいことを考えさせられるのではなく、過去にあんなことあったなーとかそういったちょっぴり懐かしい感じのことや、単純に家族に会いたいとかそういった類のことが頭を巡った。
最後にタイトルが出るのはきっとそこでやっと4人が家族になれたから。家族の再生というよりは成長という方がしっくり来る。(中暢)
受賞作品・受賞者についてはこちらのページをご確認ください。
『この空の花 -長岡花火物語』(2012年)の姉妹編ともいえる震災後の古里映画。ひとりの老人の死によって郷里へ集まった家族の姿と、その老人の人生に大きな影響を及ぼした戦争を描き、3・11以降の日本のあり方を問う。「なななのか」は、四十九日のこと。生と死の境界が曖昧なこの期間に、生者と死者が入り乱れ、過去と現在を行き来する重層的な物語が紡がれる。
前作の「まだ、戦争には間に合う。」と、今作の「まだ、間に合いましたか?」。午後2時46分で止まり続ける時計と、再稼働しつつある原子力発電所。「終戦の日」と、1945年8月15日以降の北海道。中原中也「夏の日の歌」と、朱く染まる裸体。日本国憲法第9条と、不穏な空気が流れる現在。
数々の想いは、ある時は饒舌な会話のなかで発せられ、ある時はパスカルズのメランコリックな音楽で奏でられ、ある時は強烈な色彩をもってキャンバス上に描かれ、ある時は四季折々の芦別の風景に溶け込む。
想像力。それは、1945年8月と2011年3月をつなげ、ソ連軍の侵攻した樺太と福島第一原子力発電所をつなげ、引き裂かれてもなお時空を超えてつながる愛を、わたしたちの心に映し出す。
身を切り刻まれるように痛々しくも、力強く美しい愛の物語を想うとき、わたしたちの心から迷いは消え、止まっていた時間が動き、静かな決意が生まれることに気づく。たとえ次の戦争が起こっても、たとえ肉体としての死が訪れたとしても変わらない、たしかな決意。
今、なななのかが過ぎた。未来を生きよう。(半)
開催6回目にして初めて前売り段階でチケットが完売し、開場前には数百メートルに及ぶ長蛇の列。ご登壇者に近い前列の席からあっという間に埋まっていきました。
太賀さん、菅田将暉さん、門脇麦さん、能年玲奈さん、坂本あゆみ監督、蔦哲一朗監督ら若手のご登壇者は緊張の面持ちながら落ち着いた受け応えでお客様に親しみを与えていきました。妻夫木聡さん、池脇千鶴さん、そしてサプライズゲストとして、武田梨奈さん、大西信満さん、常盤貴子さん、村田雄浩さん、寺島咲さんら豪華な顔ぶれが続々ご登壇。
なかでも会場を盛り上げたのは、『青天の霹靂』の劇団ひとり監督と大泉洋さんのコンビ。即興とは思えない軽妙なやりとりで会場を爆笑の渦に巻き込みました。最優秀作品賞『ぼくたちの家族』の石井裕也監督の三○代前半の若手ながら既に貫禄溢れる壇上での立ち居振る舞いに感心させられた後、最優秀作品賞『野のなななのか』の大林宣彦監督がご登場。「政治や経済は競争社会だから戦争に結びつき易い。しかし、芸術はどんなに違っていても共存する。芸術が政治・経済と三位一体となって、日本の平和にお役に立ちたい」と語られ、充実した授賞式を万雷の拍手で締めくくってくださりました。
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