樹木希林さんがトークにご登壇!! 第7回TAMA 映画賞最優秀女優賞受賞の希林さんの魅力あふれる2作品も上映します。旅する希林さん、ある秘密を持つ老女を演じる希林さんーー今や誰もが知っている役者・樹木希林さん。ふっくり、のんびり、ふうわりと、希林さんワールドをどうぞお楽しみください!
20年に一度の「式年遷宮」の年を迎えた伊勢神宮に、2013年7月、女優の樹木希林が人生で初めてのお伊勢参りに向かった。各地の人々との触れ合いを通して、式年遷宮の4か月の間、伊勢神宮、神様、目に見えないものなどを、希林さんの生き方や考え方にそっと寄り添いながら描き出していく――。
大阪生まれの私は「始末」とは美徳だと思う。モノをしっかり活かし使い尽くす、それが「始末」。希林さんは、ご自分の生活、人生の時間においてもそれを実践されているように思える。私は尊敬と憧れの気持ちを込めて希林さんのことを「人生の始末しぃ」と呼ばせていただきたい。
その希林さんがお伊勢さんやお伊勢さんにまつわる場所や人々を訪ねられた。静かに、のんびり、時にはエッジ深く、朗らかなその旅から伝わるのは、人の命、自然の営み、歴史、生活、「いのち観」とでも言えるもの、見えないもの、神様……「人生の始末しぃ」な希林さんが旅するがゆえに、さりげなく奥行き深くさまざまなことを本作は自由に感じさせてくれる。
2013年に『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』で希林さんと初めてタッグを組んだ東海テレビは、本作を経て、今年は「戦後70年 樹木希林ドキュメンタリーの旅」というシリーズを制作した。今後もどのようなタッグが組まれるか楽しみでならない。(越)
どら焼屋で働く、雇われ店長の千太郎(永瀬)の前に1人の老女・徳江(樹木)が現れる。店で働きたがる徳江にどらやきの粒あん作りを任せると、その美味しさに店は大繁盛。しかし、心ない噂により店を去ることになる徳江。千太郎は、徳江と心を通わせていた中学生のワカナ(内田)と徳江の足跡をたどるが……
借金返済のためにどら焼屋で無気力に働く千太郎。ハンセン病を理由に隔離され生きてきた徳江。母親や友達に馴染めず、窮屈な毎日を過ごすワカナ。籠の中の鳥のような3人がそれぞれの籠を出て行く様子を描いている。
満開の桜、暖かい日差し、風でざわめく木々の音……その瞬間を噛み締め、感謝する徳江が本当に愛おしい。それと同時に人が感謝をする姿の美しさや私たちにとっての当たり前が当たり前ではない人がいることに気付かされる。
「がんばりなさいよ」「美味しいあんになろうね」小豆に語りかける徳江の言葉は自身に向けた言葉でもある。「あんたは生まれてきてよかったんだよ」
その徳江を演じる樹木希林。誰もが知っている女優で、スクリーンで見かけることもそれこそ当たり前だが、彼女の偉大さに改めて圧倒させられる。
日本語の最初の文字「あ」と最後の文字「ん」を繋げた『あん』と言うタイトルにはもっと多くの意味があるのかもしれない。(内暢)
1943年生まれ、東京都出身。1961年に文学座に入り「悠木千帆」名義で女優活動開始。森重久彌主演の「七人の孫」(64年)や「寺内貫太郎一家」(TBS)(74年~)に出演。2008年に紫綬褒章、14年には旭日小授章を受章。『わが母の記』(12年)では第4回TAMA映画賞最優秀女優賞他、多数の女優賞を受賞。近年は他に『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』(07年)、『歩いても歩いても』(08年)、『そして父になる』(13年)、『神宮希林 わたしの神様』(14年)等。本年は『あん』『海街diary』『駆込み女と駆出し男』に出演。
東海テレビ・プロデューサー。1959年、静岡県生まれ。81年東海テレビ放送入社後、アナウンサーを経てドキュメンタリー制作。「はたらいてはたらいて」(92年、文化庁芸術作品賞)、「村と戦争」(95年、放送文化基金優秀賞)、「とうちゃんはエジソン」「裁判長のお弁当」(2003年、07年、ギャラクシー大賞)。今年、「戦後70年 樹木希林ドキュメンタリーの旅」シリーズ6本を制作。『平成ジレンマ』(11年)で劇場公開を開始、『死刑弁護人』(12年)、『神宮希林 わたしの神様』(14年)、来年1月に8作目『ヤクザと憲法』を公開予定。