【B-9】ジャック・ドゥミ 恋の果てに見る夢

11月29日(日)
パルテノン多摩 小ホール
TAMA CINEMA FORUM 25周年記念 日仏映画交流
特別協力:アンスティチュ・フランセ日本

チケット料金

一般
前売:1,200円 / 当日:1,400円
子ども(4歳~小学生)
前売:800円 / 当日:900円

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「ヌーヴェルヴァーグの真珠」と称されるドゥミの長編第一作『ローラ』(音楽はミシェル・ルグラン)と、その続編『モデル・ショップ』の2 本立て。いずれもアヌーク・エーメ演じるローラというキャラクターが存在する。前者では彼女の忘れられない初恋がもたらす出会いとすれ違いが描かれ、後者ではその後アメリカに渡った彼女が登場する。

ローラ

  • 1961年/フランス/アンスティチュ・フランセ日本提供/1時間25分
  • 監督・脚本=ジャック・ドゥミ
  • 製作=ジョルジュ・ド・ボールガール
  • 撮影=ラウール・クタール
  • 音楽=ミシェル・ルグラン
  • 歌詞=アニエス・ヴァルダ
  • 美術・衣装=ベルナール・エヴァン
  • 出演=アヌーク・エーメ、マルク・ミシェル、ジャック・アルダン、アラン・スコット、エリナ・ラブールデット、アニー・デュペルー

ストーリー

ローラン(M・ミシェル)は、書店でデノワイエ夫人(E・ラブールデット)と娘のセシル(A・デュペルー)と知り合う。彼は、セシルという娘の名前を聞き、幼馴染のセシル(A・エーメ)のことを思い出す。セシルは、「ローラ」という名前でキャバレーの踊り子として働き、7年前に姿を消した恋人のミシェルの帰りを待っていた。ローランは、偶然の再会から次第にローラに惹かれる。

コメント

名作『シェルブールの雨傘』(1963年)のジャック・ドゥミ監督の長編デビュー作品がこの『ローラ』です。60年代のフランス映画は、いわゆるヌーヴェル・ヴァーグ(新しい波)と呼ばれた若い監督たちが、新しくて自由な映画制作スタイルで既存の映画の枠組みを大きく広げていました。ドゥミ監督もその新進気鋭の監督のひとりですが、彼の映画の魅力は、古典的なメロドラマの要素が含まれているところにあると思います。恋人を待ち続けるシングルマザーと戦争で将来を閉ざされた青年が、数年の時を経て再会し、懐かしい記憶とともに親密になるものの、最後には別々の人生を歩んでゆく。月日の経過とともに、失ってしまうものへの哀愁を強く感じます。そしてドゥミ作品と相性がよいミシェル・ルグランが紡ぐ切ない旋律も、この映画にとてもよく似合っています。(彰)

モデル・ショップ

  • 1969年/アメリカ/アンスティチュ・フランセ日本上映協力/1時間32分
  • 監督・脚本・製作=ジャック・ドゥミ
  • 撮影=ミシェル・ユゴー
  • 編集=ウォルター・トンプソン
  • 音楽=ザ・スピリット「Nothing to do and little to say」
  • 出演=アヌーク・エーメ、ゲーリー・ロックウッド、アレクサンドラ・ヘイ

ストーリー

ベトナム戦争の懲役に不安を抱いているアメリカ人青年のジョージ(G・ロックウッド)。異国の地で事情があって暮らしているフランス人女性ローラ(A・エーメ)。ある日ジョージは、ロサンゼルスの町で偶然出会ったローラにひと目惚れして尾行し、彼女が働くモデル・ショップで再会する。その後、お互いに抱えている悩みを打ち明けて一夜を共に過ごすが……。

コメント

『ローラ』から数年後、ナントから移りロサンゼルスが舞台となる。主人公のジョージは、恋人と一緒に暮らし、建築家になる夢はあるが、戦争による死への不安から全てにおいて無気力になっている。ひと目惚れしてローラを尾行し、その彼女が乗っていた車は『ローラ』で待ち続けた恋人ミシェルが乗っていた白いマーキュリーだった。『ローラ』を観た観客は、あの頃のチャーミングなローラとミシェルに久々に逢えると期待すると思うが、実際は生活に疲れ果てた無表情の彼女がいた。永遠には続かない愛の現実や、ベトナム戦争真っ只中でアメリカが抱えている社会問題など、数々のメッセージを静かに伝えているところが、ジャック・ドゥミの素晴らしいところである。

ドゥミ作品は、共通の登場人物が複数の作品に出ていて、その人間関係も大変面白いです。ぜひ注目しながら鑑賞してください。(飯絢)

監督紹介

ジャック・ドゥミ

1931年生まれ、フランスのポンシャトー出身。49年にパリに出て、写真映画学校に通った後、フランス・アニメーションの父、ポール・グリモーらの助監督を務める。60年に長編処女作『ローラ』を発表。低予算ながら、後のドゥミ映画の要素を凝縮した作品で、「ヌーヴェルヴァーグの真珠」と称えられる。62年女流監督アニエス・ヴァルダと結婚。63年に名作『シェルブールの雨傘』を発表。64年カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞し、世界的に大ヒット。次いでドヌーヴとフランソワーズ・ドルレアックの姉妹が主演した『ロシュフォールの恋人たち』(66年)を監督。69年には初のアメリカでの作品『モデル・ショップ』を撮る。遺作となった『想い出のマルセイユ』(88年)では、長年ドゥミとの仕事を切望していたイヴ・モンタンを主演に迎える。90年、映画に包まれたその生涯を閉じる。享年59歳。