11月24日 「MUSIC FAIR 2000」 (パルテノン多摩小ホール)
●Time Table● | |
15:00−16:40 17:00−18:32 19:00−20:45 |
サルサ! ナビィの恋 ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ |
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15:00−16:40 17:00−18:32 19:00−20:45 |
サルサ! ナビィの恋 ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ |
サルサ! SALSA |
1999年/フランス、スペイン/コムストック配給/1時間40分 |
監督・原案・脚本=ジョイス・シャルマン・ブニュエル 脚本=ジャン=クロード・カリエール 撮影=ハヴィエル・アグィレサローペ 音楽=グルーポ・シエラ・マエストラ、ジャン・マリ・セニア 美術=ジャン・ボエール 編集=ニコール・ソニエ 出演=ヴァンサン・ルクール、クリスティアンヌ・グゥ、カトリーヌ・サミー、エステバン・ソクラテス・コバス・プエンテ |
[ストーリー] |
「自分の音楽を奏でたい」と若き天才ピアニスト、レミ(V・ルクール)はサルサに魅せられ、輝かしい未来を捨て、パリへ向かう。そして、友人のフェリペにキューババンドに加えてほしいと頼むのだが、チョコレート(黒人)でなければだめだと断られてしまう。諦めきれないレミは、フェリペの紹介で伝説のキューバ人作曲家バレード(E・S・C・プエンテ)がいるバーを訪ねる。そこで、肌と髪の色を変え,“モンゴ”という架空のキューバ人になりきり、サルサのダンスレッスンをする仕事をはじめる。やがてサルサのダンスレッスンで出会った美女ナタリー(C・グゥ)と恋に落ちるのだが。 |
[コメント] |
主人公レミが突然、ショパンを弾くのをやめ、サルサを演奏する冒頭のシーンからすっかりサルサに魅了されてしまった。思わず踊り出したくなる衝動に駆られ、ラストまで何とも言えない心地よさに包まれた。レミは「自分の音楽を奏でたい」と約束された将来を捨てサルサに情熱を燃やすのだが、今この瞬間を楽しむ、刹那を謳歌することのすばらしさ、そして、本当の意味で音楽を楽しむことを感じさせてくれる。その背景にあるものは、キューバ音楽の魅力に他ならない。そこには、昨今のヒーリングやクラブ系など、一過性の音楽とは一線を画している。そして、その歴史や文化など根底にあるもの、背景にあるものを知れば、ますますキューバ音楽というものの魅力を感じずにはいられないだろう(『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』も同様だが)。それは、主人公レミの友人フェリペが「キューバ人になりたいのなら、苦しみは笑いで隠せ」の一言にも現れている。また、この作品の隠し味として、レミとナタリーの恋と同時に、作曲家バレードとナタリーの祖母レティの恋が描かれており、これも作品の見所のひとつである。『サルサ!』といえば、今をときめく叶姉妹の効果で姉妹のイメージが先行してしまった感があるが,作品はキューバ音楽とダンスのすばらしさ! を見事に表した映画である。 (守) |
ナビィの恋 |
1999年/イエス・ビジョンズ、オフィス・シロウズ製作/オフィス・シロウズ、東京テアトル、メディア・ボックス配給/1時間32分 |
監督・脚本=中江裕司 脚本=中江素子 撮影=高間賢治 音楽=磯田健一郎 美術=真喜屋力 編集=宮島竜治 出演=西田尚美、村上淳、平良とみ、登川誠仁、平良進、アシュレイ・マックアイザック |
[ストーリー] |
恵達(登川)は愛する妻ナビィ(平良とみ)と粟国島で穏やかな日々を過ごしていた。ある日、東京で働いていた孫の奈々子(西田)が帰郷する。奈々子が帰郷した頃からだろうか、ナビィの様子がどうもおかしい。どうやら隠れてどこかへ出かけているようだ。しばらくして理由が判明する。奈々子と同じ頃、ナビィの初恋の相手、サンラー(平良進)も粟国島に帰郷していたのだ。恵達とサンラー、2人の男の間で揺れ動くナビィを、恵達は黙って見守るが……。 |
[コメント] |
『ナビィの恋』の出演者でMVPを決めるとしたら、誰を選ぶだろうか? 西田尚美の飾らないまっすぐな演技も捨て難いが、僕が選ぶのはやはり、今回が初めての演技だったという恵達こと登川誠仁氏だ。氏は沖縄民謡の大御所で、カチャーシー(三線の早弾き)の名手であり、自らが開く流派、登川流の宗家(親分)である。沖縄県からは無形文化財技能保持者の称号を受け、一部の人からは「沖縄のジミヘン」と呼ばれているらしい(次回作があったら入れ歯で三線を弾いて、そのことをぜひ証明していただきたい)。また僕の仲間内で「おじいちゃんになって欲しい人ナンバー1」に選ばれ親しまれている。氏の演技は一見すると、ものすごくぎこちなく感じるが、次第にそのぎこちなさのなかに余裕のようなものを感じ取ることができる。そして観終わった後、「もしかして、あのぎこちなさは全部演技だったのではないか?」と疑ってしまう。それほど摩訶不思議で、強烈な存在感を放っているのだ。うまく説明できないが、観れば多分わかっていただけると思う。話は変わって、まばゆい太陽の光、きれいな空と海、穏やかな人々の心、ゆっくりと流れる時間、心地良い琉球音楽。観終わった後は、誰もが沖縄に行きたくなる。沖縄プロモーションビデオの決定版(!?)『ナビィの恋』。是非、御鑑賞下さい。 (哲) |
ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ BUENA VISTA SOCIAL CLUB |
1999年/ドイツ・アメリカ・フランス・キューバ/キントップ・ピクチャーズ、アルテ製作/日活配給/1時間45分 |
監督=ヴィム・ヴェンダース 撮影=イェルク・ヴィトマー、ロビー・ミュラー、リサ・リンズラー 編集=ブライアン・ジョンソン 出演=ライ・クーダー、イブライム・フェレール、ルベーン・ゴンサレス、エリアデス・オチョア、オマーラ・ポルトゥオンド、コンパイ・セグント |
[ストーリー] |
カリスマ・ミュージシャン、ライ・クーダーがキューバを訪れ、往年の一流ミュージシャンを集めて『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』というアルバムを制作していく過程からニューヨーク・カーネギーホールの歴史的演奏までをヴィム・ヴェンダース監督がフィルムに刻み込んだドキュメンタリー。『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』に参加したキューバ・ミュージシャンたちのセクシーな音楽を、彼らの人生とともにフイルムに収めた、感動の音楽ドキュメンタリーである。 |
[コメント] |
『パリ、テキサス』『ベルリン 天使の詩』のヴィム・ヴェンダース監督は、愛情深い眼差しをもって、ハバナの香りと、そこから生まれたソンにボレロの躍動的で優美な古きよきキューバ音楽の神髄を、年齢を感じさせない“キューバのナット・キング・コール”と称される73歳のイブライム・フェレールを軸としたブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブの面々を映し出している。ヴェンダースはいう。「彼らの音楽と彼らの人生、歴史は切り離して語ることはできません。彼らの音楽から伝わる情緒、深みは彼らの人生に満ちているものです。」と。彼らが夢にまでみた、ニューヨーク・カーネギーホールでの真っ赤なジャケットを着て立ったイブライム・フェレール、うれしそうにギターを引いているライ・クーダー、キューバを代表する女性歌手オマ−ラ・ポルトウオンドらのいきいきとした表情と、コンサートの臨場感と感動の嵐で、永遠の若さを誇る奇蹟のミュージシャンたちの歓喜にみちた舞台で映画は終わる。8月末、来日したフェレールは、「キューバ人にとって音楽はコーヒーやたばこと並ぶアイデンティティーのひとつ。音楽は生活の一部で、人生は仕事をするためでなく、楽しむためにある。この発想が音楽を豊かにしている。」と自身に満ちて語っている。生きている実感を伴う映画である。 (津) |