オープニング フォーラム推薦作品上映

11月23日 「オープニング フォーラム推薦作品上映」 (やまばとホール)

●Time Table●
12:00−12:15
12:15−14:13

14:40−15:10

15:30−17:31
17:50−19:44
オープニング
<オープニング上映作品><特別先行プレビュー(来春公開予定作品)>
とらばいゆ
ティーチ・イン ゲスト:大谷健太郎監督、瀬戸朝香氏、市川実日子氏
        聞き手:北川れい子氏(映画評論家)
ショコラ
ホタル

<特別先行プレビュー(来春公開予定作品)>
とらばいゆ
2001年/とらばいゆ・フィルム・パートナーズ製作/ザナドゥー、アスミック・ピクチャーズ配給/1時間58分
 
監督・脚本=大谷健太郎
撮影=鈴木一博
音楽=上田禎
編集=掛須秀一
出演=瀬戸朝香、塚本晋也、市川実日子、村上淳、鈴木一真、大杉漣
 
とらばいゆ
 
[ストーリー]
 男よりも将棋が大事な女流棋士の姉アサミ(瀬戸)と、彼女を見守る普通のサラリーマンの夫カズヤ(塚本)。同じく女流棋士の妹リナ(市川)と同棲中の無職ヒロキ(村上)。この2組のカップルのぎくしゃくした関係を描いた作品。アサミはここ最近の棋士としての不調からカズヤに当たり、リナはヒロキへの想いをうまく伝えられない。二人がいかにパートナーとのこんな関係を乗り越え、幸せを掴むのか?
 
[コメント]
 まず設定が女流棋士の姉妹というところが面白い。初めは姉アサミの方が強かったが、次第に妹リナが頭角を現してきて、アサミの方は逆に不調が続く。二人とも強がりな性格のせいで、お互いパートナーとぎくしゃくした関係になった時、アサミはリナの彼氏ヒロキ、リナはアサミの夫カズヤには弱い部分を見せ、それぞれ自分のパートナーにはそういう部分を見せられないでいる。しまいにはお互いのパートナーを交換しちゃおうという話にまで発展していく。人間が常に抱いているワガママな部分、見られたくない部分が、この姉妹と夫・彼氏によって語られ、心の奥底にあるそういう気持ちが、掘り起こされたように感じた。しかも会話の内容、セリフまわしがとてもリアルであるため、その感は強まっていく一方だった。素直になれない姉妹のキャラクター、不満を抱きつつも自分なりにアサミを見守っているカズヤのキャラクター、同じようにわがままなリナにカズヤと同じ気持ちを抱くヒロキのキャラクターが、それぞれの俳優によってうまく引き出されている。人間関係に悩んでいる人、これを観れば少しは気が楽になるかも!? (朋)

ショコラ
CHOCOLAT
2000年/アメリカ/アスミック・エース、松竹配給/2時間1分
 
監督=ラッセ・ハルストレム
脚色=ロバート・ネルスン・ジェイコブス
撮影=ロジャー・プラット
撮音楽=レイチェル・ポートマン
出演=ジュリエット・ビノシュ、ジュデイ・デンチ、アルフレッド・モリーナ、レナ・オリン、ジョニー・デップ
 
ショコラ
 
[ストーリー]
 小さな村に、ヴィアンヌ母娘がやって来て、すべての人々を幸せにする不思議なチョコレート・ショップを開店。因習にとらわれていた村人たちは彼女のチョコレートに次第に魅了され、少しずつ変わっていく。村の指導者レノ伯爵はこの変化に愕然となり、ヴィアンヌを追放しようと画策する。彼女に好意を抱くジプシーの青年ルーと協力して対抗するのだが……。
 
[コメント]
 『サイダーハウス・ルール』『ギルバート・グレイブ』のハルストレム監督が、まるで童話を読んでいるかのように素直で暖かく描いて、観終わった後、幸せな気持ちにひたることができる。
 チョコレートは、甘くてちょっぴり苦い。登場する数々のチョコレートは、古い伝統や因習にがんじがらめになっている村人たちを解放し、様々な悩みを解決して甘いおいしさを味あわせてくれるが、少々苦みが足りないかもしれない。しかし、めったに甘いものを口にしない私だが、おいしいものを食べた時に味わうあの幸福感、陶酔感をこの映画で体験できた。
 『存在の耐えられない軽さ』で複雑な女友達の友情を演じたジュリエット・ビノシュ、レナ・オリンがこの映画で再び共演していて、二人の成長ぶりを目のあたりにした。とくに、ビノシュは英国の大御所女優、ジュディ・デンチと渡り合って余裕すら感じるほど堂々と演じていた。 (恵)

ホタル
2000年/『ホタル』制作委員会製作/東映配給/1時間54分
 
監督・脚本=降旗康男
脚本=竹山洋
撮影=木村大作
美術=福澤勝広
音楽=国吉良一
編集=西東清明
出演=高倉健、田中裕子、夏八木勲、中井貴一、井川比佐志、小林稔侍
 
ホタル
 
[ストーリー]
 山岡秀治(高倉)は腎臓の悪い妻・知子(田中)とともに九州で養殖業を営んでいる。
 昭和天皇崩御の後に、同じ特攻隊員の藤枝(井川)の死を知る。藤枝は死ぬ直前に知覧で食堂を営む富子と会っている。しかし、旧友に会わないまま死んでしまった藤枝のその心境を思う山岡。また山岡は富子から、上官であった金山少尉の遺品を故郷の韓国へ届けて欲しいと頼まれる。かつて金山は知子の許嫁だった。そして山岡は金山の死に悲しむ知子を支え結婚したのだった。
 山岡は、病状が悪化し、死の近くなった知子と二人で韓国へ渡った……。
 
[コメント]
 終戦後50年以上を経て世紀が変わった今、「真剣に語らなければならないことがある。時代を越えて伝えたい想いがある。」との言葉のもとに語られるこのテーマの持つ意味の深さ・重さには口を噤まされる。ただ、今この時をもってようやく語られることがある。(そしてまた語り得ないこともきっと……)
 朝鮮人の特攻隊員、託された遺言と記されなかった想い。そこからは当時の日本社会とそこに置かれた朝鮮人の境遇が滲み出てくる。そして高倉健扮する山岡の鎮魂の想いとそれを認めようとしない韓国の人々。
 溝の深さ、事実の重さ。まして語られることのない真実を前にするとき、改めて沈黙せざるを得ない。 (家)

●プロフィール
ラッセ・ハルストレム監督

 1946年スウェーデン、ストックホルム生まれ。幼少期より8mm映画に熱中。音楽学校在学中に16mmで音楽映画を撮り、テレビで放映される。それをきっかけにテレビを中心に活動を開始。75年に『En Kille och en tjej(恋する男と彼の彼女)』で映画監督デビュー。77年にスウェーデンの人気グループ・アバを題材に『アバ・ザ・ムービー』を監督し、世界的なヒットとなる。85年に『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』を監督・脚本し、数々の賞を受賞して国際的な評価を得る。続いてテレビでリンドグレーン原作の「やかまし村のこどもたち」(86年)「やかまし村の春夏秋冬」(87年)を映像化した後、アメリカに渡る。93年『ギルバート・グレイプ』を製作・監督後、95年に『愛に迷った時』を撮る。99年の『サイダーハウス・ルール』では第72回アカデミー賞の主要7部門にノミネートされ、助演男優賞、脚色賞を受賞。『ショコラ』も第73回アカデミー賞に作品賞、主演女優賞など5部門にノミネートされ、いまやアメリカでも押しも押されぬ世界のトップ監督として認知されている。94年に女優レナ・オリンと結婚し、2児の父。スウェーデンとアメリカを行き来している。
 
降旗 康男(ふるはた やすお)監督

 1934年生まれ、長野県出身。57年に東京大学卒業後、東映東京撮影所に入社。助監督を経て、66年に『非行少女ヨーコ』で監督デビュー。同年『地獄の掟に明日はない』で高倉健と初めて顔を合わせ、以後『網走番外地』シリーズのうちの6作、『冬の華』(78年)、『駅 STATION』(81年)、『あ・うん』(89年)など数々の傑作をこのコンビで生み出している。
 最近作は、『蔵』(95年)、『現代任侠伝』(97年)そして再び高倉健と組んだ『鉄道員(ぽっぽや)』(99年)で数々の賞を受賞した。

高倉健・降旗康男コンビ作品(全18作品)
 66年 地獄の掟に明日はない
 68年 獄中の顔役
 69年 新網走番外地 流人岬の決斗
 70年 日本女侠伝 真赤な度胸花
    捨て身のならず者
    新網走番外地 大森林の決斗
    新網走番外地 吹雪のはぐれ娘
 71年 ごろつき無宿
    新網走番外地 嵐を呼ぶ知床岬
    新網走番外地 吹雪の大脱走
 72年 新網走番外地 嵐を呼ぶダンプ仁義
 78年 冬の華
 81年 駅 STATION
 83年 居酒屋兆治
 85年 夜叉
 89年 あ・うん
 99年 鉄道員(ぽっぽや)
 01年 ホタル

●ゲストの紹介
瀬戸 朝香(せと あさか)氏

 1976年12月12日生まれ、愛知県瀬戸市出身。92年『湾岸バットボーイブルー』でスクリーンデビュー。以後、映画はもちろん、TVドラマ、CM、ラジオ、歌手として多方面で活躍。2001年は、TVドラマで「さよなら、小津先生」をON AIR中で、映画では香港映画『バレット・オブ・ラブ』に主演し、香港の大スター、レオン・ライと共演した。
 受賞歴として、92年キネマ旬報新人女優賞、95年第32回ゴールデン・アロー賞「グラフ賞」、日本新語・流行語大賞、97年エランドール賞などがある。
○主な出演作品
 『湾岸バットボーイブルー』(92年)、『大失恋』(95年)、『のぞき屋』『シャ乱Qの演歌の花道』(共に97年)、『バレット・オブ・ラブ』『とらばいゆ』(共に2001年)
 
市川 実日子(いちかわ みかこ)氏

 1978年6月13日生まれ、東京都出身。モデルとして雑誌、CMで活躍し、注目を集める。映画では『タイムレスメロディ』(99年)で初主演を果たす。本作が2本目の主演にあたり、前作とうって変わって、膨大なせりふを見事にこなした。最新作として魚喃キリコの人気コミックの映画化『blue』に主演し、2002年夏の公開を控えている。また、「装苑」にコラムを連載するなど、多方面で多彩な才能を発揮している。市川実和子は実姉にあたる。
 
大谷 健太郎(おおたに けんたろう)監督

 1965年京都府生まれ。多摩美術大学芸術学科卒業。在学中に多数の8mm映画を作る。その1本『青緑』が88年PFFで入賞し、高い評価を得る。卒業後、映像制作会社で企業用PRビデオの演出を手掛けるかたわら、映画製作も続け、91年のPFFでは『私と、他人になった彼は』が3部門で受賞、その年の最も人気の高い作品となった。その後会社を辞め、5年間準備を掛けた初の劇場公開作品『アベックモンマリ』(99年)が、今までにない恋愛映画を撮れる監督として絶賛を集めた。『とらばいゆ』(2001年)はそれに続く劇場公開監督作品第2弾にあたる。
 
司会:北川 れい子 (きたがわ れいこ)氏

 東京中野生まれ。映画評論家。70年代初め、「映画芸術」の小川徹編集長に知遇を得たのをきっかけに映画批評を書き始め、各誌紙に精力的に執筆。国家公務員を85年に退職し文筆業専業に。「週刊漫画ゴラク」誌の日本映画評が連載900回を超えるほか、ミステリー評なども。猫5匹が同居。