11月23日 「ありがとう、相米監督。 Vol.1」 (パルテノン多摩小ホール)
●Time Table● | |
13:00−14:46 15:05−17:09 17:30−18:30 18:50−20:30 |
翔んだカップル お引越し 座談会「ありがとう、相米監督。」 ゲスト:榎戸耕史監督、篠田昇氏、速水典子氏、寺田農氏 司会:内海陽子氏(映画評論家) あ、春 |
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13:00−14:46 15:05−17:09 17:30−18:30 18:50−20:30 |
翔んだカップル お引越し 座談会「ありがとう、相米監督。」 ゲスト:榎戸耕史監督、篠田昇氏、速水典子氏、寺田農氏 司会:内海陽子氏(映画評論家) あ、春 |
翔んだカップル |
1980年/東京12チャンネル製作/東宝、キティ・フィルム配給/1時間46分 |
監督=相米慎二 原作=柳沢きみお 脚本=丸山昇一 撮影=水野尾信正 音楽=小林泉美 美術=徳田博 編集=井上治 出演=鶴見辰吾、薬師丸ひろ子、尾美としのり、石原真理子、原田美枝子、真田広之 |
[コメント] |
この作品は、東宝の夏休み2本立の1本として公開された。それまでの東宝の青春映画と言えば、『青い山脈』をひきずったようなおじさんが描く青春劇だっただけに、高校生4人をのびやかに描いたこの作品での監督の目線の低さに驚き、興奮した。何度も繰り返し観た作品だが、ストーリーはほとんど記憶に残っておらず、断片的なシーンだけが鮮明に印象に残っている。特に4人の別れと旅立ちをワンシーンで描ききった文化祭のもぐらたたきのシーンが忘れられない。感情を押し殺そうとしているもぐら役の鶴見君、尾美君。涙声になって次第に叩く手が止まっていく薬師丸さん、石原さん。こんなドラマが描けるんだと、ひどく元気づけられ、何だか明るい未来が始まっていくように思えた。 このデビュー作以降相米監督作品は欠かさず観ていたが、3、4年のブランクが空いても新作を待ち侘びていたわけでもなかった。だから、もう新作を観ることが出来ないという事実がこんなに寂しいこととは思ってもみなかった。いなくなって初めて自分のなかでの存在の大きさに気づかされることは確かにあるけれど、監督と観客の関係でもそんなことがあるんだなと思いました。ありがとう、相米監督。 (淳) |
お引越し |
1993年/讀賣テレビ放送製作/ヘラルド、ヘラルド・エース、アルゴプロジェクト配給/2時間4分 |
監督=相米慎二 原作=ひこ・田中 脚本=奥寺佐渡子、小比木聡 撮影=栗田豊通 音楽=三枝成章 美術=下石坂成典 編集=奥原好幸 出演=中井貴一、桜田淳子、田畑智子、須藤真理子、田中太郎、茂山逸平、笑福亭鶴瓶 |
[コメント] |
チャップリンは「私は子供が嫌いだ」と言った。あの『キッド』を作った監督の、意外な言葉である。その言葉を評してエイゼンシュタインは「だが、子供を嫌いなのは子供自身なのである」と語る。 レンコを演じる12歳の田畑智子が遭遇したのは、幸か不幸か、まさに映画を創る「子供自身」の1人だったのだ。それまで普通の子供だった田畑は、いきなり映画の現場に放り込まれ、日常のなかに潜む劇的瞬間を見るように強いられる。大人たちの間に何が起こっているのか? 男と女の間に何が起こってしまったのか? 人と人がなぜ別れ、また出会うのか? ——目撃してしまった事件に、文字どおり目を白黒させて戸惑いながら、必死で立ち向かう田畑=レンコが、やがて祭りと長い夜(現場)を通過して、1つの発見をする——それはまさしく「子供自身」の映画監督が、混乱した少女の視線を通して、この作品で見出したかった宝物なのだ。 『お引越し』は、そんな少女の冒険物語と言えるでしょう。 (黒) |
あ、春 |
1998年/トラム、松竹、衛星劇場製作/松竹配給/1時間40分 |
監督=相米慎二 原作=村上政彦 脚色=中島丈博 撮影=長沼六男 音楽=大友良英 美術=小川富美男 編集=奥原好幸 出演=佐藤浩市、斎藤由貴、富司純子、藤村志保、山崎努、余貴美子、河合美智子、三林京子 |
[コメント] |
『あ、春』を観終わった時、これが相米監督の映画? と不思議に思った。80年代に観た相米監督の映画は躍動感のある<強さ>が印象に残るものだった。が、この作品は違う印象を私にもたらした。<けなげさ>だ。主人公はバブル崩壊により会社が傾いているが、転職もせず、とりあえず順調に人生を送ってきた。妻は夫と実母の間にはさまれているが、精神安定剤を飲みながら、妻・母・娘の役割を努めている。父は浮浪者で社会のゴミあつかいをされているが、主人公の前に姿を現わし、生活をともにするようになる。各々が自分の立場を淡々と精一杯生きている。舞台となる都心の閑静な日本家屋は、心優しき登場人物たちを包み込むようにたたずみ、庭木は季節の移ろいと命の移ろいを静かに交差させる。こういう相米作品もいいなと思った。『あ、春』は1999年度キネ旬の日本映画第1位になり、これからの作品を期待していただけに、突然の死は私たちに寂寥感をもたらしている。 (裕美) |
●相米慎二監督プロフィール |
1948年1月13日岩手県盛岡市生まれ。中大法学部中退。72年契約助監督で日活入社。80年薬師丸ひろ子主演『翔んだカップル』で監督デビュー。同じく薬師丸ひろ子主演の第2作『セーラー服と機関銃』が大ヒット。少年少女の揺れる心をテーマにした『台風クラブ』(85年)で東京国際映画祭ヤング・シネマ大賞、家族の再生をテーマにした『お引越し』(93年)で芸術選奨文部大臣賞、『あ、春』(99年)でベルリン映画祭国際批評家連盟賞、と精力的に話題作を生み出した。 ワンシーン・ワンショットの長まわしなど独特の演出法を用い、薬師丸ひろ子をはじめ、永瀬正敏、工藤夕貴、牧瀬里穂など若手俳優を育てることにも定評があった。 2001年9月9日午後4時10分、肺がんのため死去。享年53歳。『風花』(01年)が遺作となった。 |
●フィルモグラフィ |
1980年 翔んだカップル 1981年 セーラー服と機関銃 1983年 ションベン・ライダー 魚影の群れ 1985年 ラブホテル 台風クラブ 雪の断章 情熱 1987年 光る女 1990年 東京上空いらっしゃいませ 1993年 お引越し 1994年 夏の庭 The Friends 1998年 あ、春 2001年 風花 |
●ゲストの紹介 |
榎戸 耕史(えのきど こうじ)監督 1952年茨城県生まれ。上智大学文学部卒業後、フリーの助監督として長谷川和彦監督をはじめ、数々の監督につく。特に相米慎二、寺山修司、根岸吉太郎監督作品に参加。88年『ふ・た・り・ぼ・っ・ち』で監督デビュー。以後、映画、TVドラマ、Vシネマ、スポーツドキュメントなど多数手掛ける。94年映像制作プロダクション「ヴォルテクス」を設立。 ○主な監督作品 『ふ・た・り・ぼ・っ・ち』(88年)、『ありふれた愛に関する調査』(92年)、『J・MOVIE・WARS 殺し屋アミ』(93年)、『渇きの街』(97年) ○相米監督作品での助監督作品 『セーラー服と機関銃』『ションベン・ライダー』『魚影の群れ』『ラブホテル』『台風クラブ』 |
篠田 昇(しのだ のぼる)氏 1952年2月2日、埼玉県生まれ。フリーカメラマン。日本大学芸術学部卒。75年大学在学中に自主映画製作グループ「グループポジポジ」発足。16mm作品『合言葉』(堀越一哉監督)、『ハードボイルド・ハネムーン』(後藤和夫監督)を撮影。プロとしては85年に相米慎二監督の『ラブホテル』が最初の撮影監督作品となり、以後、岩井俊二監督作品(『UNDO』、『LOVE LETTER』(共に94年)、『スワロウテイル』(97年)、『リリィシュシュのすべて』(2001年)ほか)をはじめ、井筒和幸監督、利重剛監督作品なども多く手がける日本映画界第一線のカメラマン。また、映画以外にもTVドキュメンタリー、CM、プロモーションビデオなど幅広く撮影を行なっている。 相米監督作品では、他に『夏の庭』の撮影を担当している。 |
寺田 農(てらだ みのり)氏 1942年生まれ。早稲田大学を中退し、文学座研究生となる。68年『肉弾』で毎日映画コンクール男優主演賞受賞。以後『ラブホテル』(85年)など、多数の映画、TVドラマの名作に出演、演技力の根底にある独特の存在感で、幅広い役柄をこなす。演劇、ナレーションなどにも活躍の場を広げる。 ○相米監督出演作品 『セーラー服と機関銃』『ションベン・ライダー』『ラブホテル』『台風クラブ』『雪の断章 情熱』『夏の庭』『風花』 |
速水 典子(はやみ のりこ)氏 1959年生まれ、東京都出身。女優。映画、TV、Vシネマと幅広く活躍しており、最近ではNHKのドラマ「陰陽師」、CMの「野村證券 お茶会篇」や「サントリーモルツ 大人の遠足」などに出演。相米監督作品では『ラブホテル』に主演し、同作品でヨコハマ映画祭新人賞を受賞している。 |
司会:内海 陽子(うちうみ ようこ)氏 1950年、東京生まれ。映画評論家。高校卒業後、会社勤務を経て、「キネマ旬報」誌“ニッポン個性派時代”のインタヴュアーとして出発。現在、「週刊ザテレビジョン」、「ロードショー」、「C+[シープラス]」などに執筆中。 |