11月25日 「日本映画を盛り上げるヒーロー像」 (パルテノン多摩小ホール)
●Time Table● | |
12:00−13:48 14:30−16:11 16:30−18:10 |
RED SHADOW 赤影 溺れる魚 LOVE SONG |
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12:00−13:48 14:30−16:11 16:30−18:10 |
RED SHADOW 赤影 溺れる魚 LOVE SONG |
RED SHADOW 赤影 |
2001年/『RED SHADOW 赤影』製作委員会製作/東映配給/1時間48分 |
監督・編集=中野裕之 原作=横山光輝 脚本=斉藤ひろし 撮影=山本英夫 美術=内藤昭 音楽=岸利至 編集=米田武朗 出演=安藤政信、奥菜恵、麻生久美子、村上淳、竹中直人 |
[ストーリー] |
時は戦乱の世。戦国大名に仕える忍者たちも激しい死闘を繰り広げている。影一族と呼ばれる忍者集団もそのひとつであり、頭領の白影(竹中)を筆頭に赤影(安藤)、青影(村上)、飛鳥(麻生)は戦国大名・東郷のもと、あらゆる任務をこなしていた。そんなある日、赤影たちに「京極城の地下に眠る新式兵器を偵察せよ」という任務が下る。 |
[コメント] |
『とにかく誰が観ても楽しめる映画。これこそ娯楽! キャストだってとても豪華だ。脇役に至るまで「みーんな知ってる」人たちばかりで、それぞれがいい味を出している。「こんなチョイ役でいいの!? もっと観たい!」と思わずにいられない(私が個人的に好きなのはオカマ忍者役の吹越満さんと老師役の谷啓さん)。人をいくらブッた切ってもヒーローなら許されてしまう時代劇には、常々疑問を感じていた。ヒーローにだってどうしようもない悩みや情けないところだってあるはずだ。中野監督はそういうヒーローの人間的な部分をしっかり描きつつ、今まで培われてきた時代劇のかっこ良さやチャンバラシーンのドキドキも忘れなかった。すなわちニュー・ヒーロー赤影の誕生。古いものと新しいものとの融合。CGでもワイヤーでもないアクション、大掛かりなセット、2300ものカット数、あり得ない忍者コスチュームなど、この映画の魅力は言い尽くせないが、これらを駆使して投じた一石が今後の時代劇や日本映画にどう波紋を広げていくのか? 興味深いところである。 (ル) |
溺れる魚 |
2001年/東映、エイチ・エム・ビィ、東映エージェンシー製作/東映配給/1時間41分 |
監督=堤幸彦 原作=戸梶圭太 脚本=横谷昌宏 撮影=唐沢悟 美術=稲垣尚夫 音楽=見岳章 編集=深野俊英 出演=窪塚洋介、椎名桔平、仲間由紀恵、勝部演之、IZAM、渡辺謙 |
[ストーリー] |
ある企業は奇妙な脅迫に悩まされていた。犯人の名は「溺れる魚」。一方、署内で起きているある事件の捜査を命じられた2人の刑事、宍戸錠マニアの白州(椎名)と女装癖アリの秋吉(窪塚)。捜査が深まるにつれ、2つの事件は徐々につながっていく。しかしすべてはある者によって仕組まれた、1つのゲームなのであった。 |
[コメント] |
堤監督の作品の登場人物たちは、みんな素敵(?)な個性を持っていて、とても愛着が沸く。彼らは完璧とは程遠く、決して同じ型ではない。その人間臭さが、スクリーンと観客との距離をぎゅっと縮ませていると思う。きっとこの映画を観た人みんなが、それぞれ自分のお気に入りキャラを持っているんじゃないかな(ちなみに私は白竜さん)。 エヴァ世代に育った私としては、理想を突っ走った完璧なものよりも、どことなく病んでいて、観客に分かり易く説明する気などさらさら無く、それどころか、あえて謎だらけにしてしまうような、完璧とは程遠いもののほうが好きだ。完璧なものには、反対に重みさえ感じてしまう。たぶんそれは、私が架空の世界に求めているものが、理想ではなくて、自分と同じものなのだと思う。私はまだ不安定な年頃だから、まるで自分だけが違った世界にいるように感じてしまう。そんな時に、同じように欠けたものを観ると、自分だけではない、という安心感を持つことができる。 完璧なものはウソ臭い。欠けているほうがよっぽど素敵だと思う。 (竹) |
LOVE SONG |
2001年/LOVE SONG Partners製作/ソニー・ピクチャーズ・エンターテインメント配給/1時間40分 |
監督・脚本=佐藤信介 撮影=河津太郎 美術=斉藤岩男 音楽=須藤晃 編集=田中愼二 出演=伊藤英明、仲間由紀恵、一條俊、原沙知絵 |
[ストーリー] |
北海道に住む女子高校生・彰子(仲間)はレコードショップで尾崎豊の音楽を愛する青年・松岡(伊藤)と知り合う。彼の音楽に対する情熱的なまでの姿に彰子は惹かれていく。 しかし、そんな彼女の気持ちも知らず、松岡は自分の夢を求めて、ある日突然、姿を消してしまう。1987年、彰子にとって高校生活最後の夏休み、彼女は高校時代のけじめとして彼を捜しに東京へ行くのだった。 |
[コメント] |
意志が微妙にすれ違う若者像を巧みに映像化、脚本化してきた佐藤信介監督であるが、本作品でもその技量にますますみがきがかかっている。
主人公・彰子は初恋の人を捜しに行くのだが、なかなか見つからず、また、見つかったとしてそこに何かしらの結果を求めに行くのではなく、そうしなければ一生後悔するであろう高校生活の最後の夏に、自分自身に対する決着らしきものを求めて、衝動的なまでに松岡を捜しさまよう。一方、青年・松岡も夢破れ自堕落な生活を過ごしながら、何かを探している。 本来ならこの2人はなんらかの(劇的な)形で再会を果たし、感動的な結末を迎えたりするのだが、本作ではそういう意味での安易なカタルシスを生む結末は用意されていない。松岡には彰子の存在もまったくないものとして、別の女性との出会いが待っている。そのすれ違いの妙が生々しく、ある結末を迎える。それは彰子にとっても納得のいくものだった。そしてそれは青春を過ごした者ならば誰もがうなずく青春の通過点だ。そこに佐藤信介しか描けないまったく新しい青春映画がある! 評価の高い脚本以上に、何気ない東京の現在の路地裏を舞台に、記号化された東京の風景ではなく、そこでしかありえない場所として描く演出家としての監督・佐藤信介にますます期待したい。 (セ) |
●プロフィール |
安藤 政信(あんどう まさのぶ)氏 975年神奈川県生まれ。96年第49回カンヌ国際映画祭出品作品『キッズ・リターン』(北野武監督)でプロボクサーを目指す青年役を好演し、第21回報知映画賞最優秀新人賞、第9回日刊スポーツ映画大賞新人賞受賞と高い評価をうける。その後「聖者の行進」(98年)「青の時代」(98年)などのテレビドラマへ出演。映画は『アドレナリン・ドライブ』『鉄道員<ぽっぽや>』(共に99年)『スペーストラベラーズ』『MONDAY』『バトル・ロワイアル』(以上2000年)『サトラレ』(01年)とつぎつぎと話題作に出演。NTT DoCoMo、伊藤園ほかCM出演も多数。今回は、彼自身「やってみたかった」という時代劇に初挑戦している。 |
中野 裕之(なかの ひろゆき)監督 1958年広島県生まれ。85年、日本初の本格的なミュージック・ビデオ制作会社となったタイレル・コーポレーションを設立。傍ら、ビデオアート作家として、ブラジル、フランスなどで作品を公開。90年MTV MUSIC AWARD 6部門にノミネートされたディー・ライト「GROOVE IS IN THE HEART」以来、精力的に海外で活動。93年ピースデリック・スタジオを設立。ここから生まれたミュージック・ビデオを中心とする映像は世界中で放送され、ポール・ウェラーをはじめ多くのクリエイターから支持を得る。96年日光江戸村で撮ったPHOTEK(イギリスのドラムンベースアーティスト)の「二天一流」は監督デビュー作『SF サムライフィクション』(98年)の予告編的作品で、海外のMTVで熱狂的なファンを作り、エジンバラ国際映画祭Mirrorballでも上映された。 |
窪塚 洋介(くぼづか ようすけ)氏 1979年神奈川県横須賀市生まれ。横須賀高卒。95年16歳で「金田一少年の事件簿 ファイルNo5」で、ドラマデビュー。その後、数多くのドラマに出演。98年「GTO」や99年「リップスティック」の人気ドラマ出演をきっかけに注目を浴びる。2000年には、堤幸彦監督「池袋ウエストゲートパーク」で街の不良のボス役を見事に演じ、人気を決定的なものにした。同年、映画『富江 replay』にも出演し、その演技力は評価が高い。ファッションショーへのモデル出演、花王メンズビオレなどのCMをはじめ、エッセイを出版するなど、活躍は多岐に渡る。現在絶賛公開中の在日コリアンを演じる『GO』に続き、2002年には『Laundry』『ピンポン』の公開が控えている。 |
堤 幸彦(つつみ ゆきひこ)監督 1955年愛知県生まれ。法政大学社会学部社会学科中退、東放学園放送学部放送学科卒業後、80年ディレクターデビュー。数々の音楽番組、音楽ビデオの制作をする一方、舞台やコンサートなどの演出も手がける。88年『バカヤロー!! 英語がなんだ!』にて映画初監督。この後、活動拠点をニューヨークに移し、ビデオクリップ等の演出をする一方、オノ・ヨーコ主演『HOMELESS』を監督。95年には「金田一少年の事件簿」の斬新な演出でその作風を世に知らしめ、99年「ケイゾク」ではクールな演出スタイルで多くの堤ファンを生み出す。2000年には「池袋ゲストウエストパーク」「トリック」と意欲的に話題作を送り出した。映画界においても『金田一少年の事件簿 上海魚人伝説』『ケイゾク/映画』(00年)とヒット作を手掛けている。 |
伊藤 英明(いとう ひであき)氏 1975年岐阜県生まれ。97年テレビドラマ「デッサン」で俳優デビュー。以後テレビドラマ「YASHA(夜叉)」「愛をください」(共に2000年)「女子アナ。」「救急病棟24時」「恋を何年休んでいますか?」(以上01年)など。映画デビューは滝田洋二郎監督の『秘密』(99年)、 主演作品として『Blister』『クロスファイア』(共に00年)などがある。2001年エランドール新人賞を受賞し、有望若手俳優として注目を浴びている。今年は本作のほか、大ヒット公開中の『陰陽師』(01年)、そして『修羅雪姫』(01年)の公開が予定されている。 |
佐藤 信介(さとう しんすけ)監督 1970年、広島県生まれ。武蔵野美術大学映像学科卒業。『寮内厳粛』が、ぴあフィルムフェスティバル・アワード'94にてグランプリを受賞。大学在学中に監督した2本の中編『月島狂奏』『正門前行』も高い評価を受け、テアトル新宿をはじめ全国各地で上映される。その後、ぴあフィルムフェスティバル・アワード'94の審査員だった市川準の監督作品『東京夜曲』(97年)『たどんとちくわ』(98年)『ざわざわ下北沢』(2000年)や行定勲監督作品『ひまわり』(00年)の脚本を執筆する一方で、テレビドラマの脚本や演出を手掛ける。2000年夏には、中野武蔵野ホールで「佐藤信介アンコール!!」と銘打たれた作品上映が行なわれるなど、評価は日に日に高まっている。この『LOVE SONG』がメジャー映画進出第一作となり、次回作として『修羅雪姫』(01年)の公開が控えている。 |