インディーズを面白くする男 鈴木卓爾特集

12月1日 「インディーズを面白くする男 鈴木卓爾特集」 (ベルブホール)

●Time Table●
13:00−14:20

14:40−16:39
17:00−18:20
18:40−19:20

19:40−19:59
夏の思い出
異・常・快・楽・殺・人・者
うつしみ
痴漢電車 弁天のお尻
トーク ゲスト:鈴木卓爾氏、長曽我部蓉子氏、田中要次氏(予定)
    聞き手:井口昇監督
おっけっ毛ピピロボス
(ワンピース最新作上映予定)

夏の思い出 異・常・快・楽・殺・人・者
1995年/夏の思い出プロジェクト製作/VTR/1時間20分
 
原作=山本直樹
監督=斎藤久志
出演=鈴木卓爾、小松留美、石田貴子、諏訪太郎
 
夏の思い出 異・常・快・楽・殺・人・者
 
[コメント]
 映画を観ようと思う時はまずタイトルを読むわけだから、そこからどんな内容か想像をめぐらせるわけだが、この作品を観終わってどこか肩透かしを食らったような心持ちになってしまった。それはきっと、「異・常・快・楽・殺・人・者」というサブタイトルとこの映画が持つ雰囲気に大きな隔たりを感じたからだ。確かにこの作品に登場する犯人は15人もの女性に暴行を加えたのち殺害しているので、その点ではサブタイトルどおり「異常」ではあるが、そのようなことが行われているような雰囲気がこの作品からは微塵も感じられず、逆にのほほんとした空気すら感じられるのである。
 しかし、その雰囲気ゆえに暴行シーンを観ていても大変なことが起こっているなどとは少しも思わなくなり、まさに取り調べを行う刑事のようにこちらの感覚がおかしくなってしまったのではと不安な心持ちにさせるなど、観ていて背筋が寒くなってくる。そして、この犯人を演じている俳優が鈴木卓爾である。彼によって映画全体の緊張感が保たれつつ、のどかで不思議な雰囲気がつくり出され、異常な行為が作品のタイトルどおり単なる「思い出」として描かれていることにただただ驚嘆するほかはないのである。 (大)

うつしみ
1999年/愛知芸術文化センター製作/16mm(VTR)/1時間59分
 
製作・監督=園子温
出演=鈴木卓爾、澤田由紀子、荒木経椎、麿赤児、シンイチロウアラカワ
 
うつしみ
 
[コメント]
 走る。とにかく走る。恋愛映画でこれほどまでに走る映画はあっただろうか。「太陽にほえろ」真っ青である。
 純なというよりアーパーな女子高生に真っ直ぐに愛を告白されるおでん屋のお兄さん(鈴木)。その幼くも恐ろしい求愛からはただただ逃げるしかなかった。
 しかしそのあまりに剛速球な求愛に対し、最後はフルスイングで答えるおでん屋のお兄さん。
そのすべてがまったく観たことのないラブストーリーであり、最後のSEXシーンは映画史に残る名場面と断言したい。
 ここでおでん屋のお兄さんを演じる鈴木卓爾は他の多くの出演作では観られないおかしみと剛毅が突出して演じられ、主演の高校生(澤田)ともども、怪演している。 ほんと、こんな映画みたことないッ! (セ)

痴漢電車 弁天のお尻
(原題「デメキング」)
1998年/国映製作/35mm/1時間20分
 
監督=いまおかしんぢ
出演=鈴木卓爾、長曾我部蓉子、川瀬陽太、伊藤猛、林由美香
 
痴漢電車 弁天のお尻
 
[コメント]
 今、ピンク映画で最も注目されているいまおかしんぢ監督の傑作である。原題が示すようにここでは「デメキング」という怪獣が終末感漂う荒涼とした世界に現れ、主人公:大黒(鈴木)は痴漢した女(長曾我部)を救うため、七福神の一人、ダイコクとなって闘おうとするが、それも大黒の幻影でしかなかった。
 そんな夢と現実を判別できない、現実感を持てない狂気を秘めた大黒を、鈴木卓爾はあるがままに何気なく演ずる。それはなんとも頼りなげで、現実感のない、夢うつつと狂気を不安定に行き来する危うい姿だ。それはまた世紀末を表現したかったこの作品のある種の芯のなさを見事に体現している。
 何気なく狂気を演ずる男=鈴木卓爾。この図式以上に当てはまる役者を私は他に知らない。 (セ)

おっけっ毛ビビロボス
1996年/矢口史靖製作/16mm/19分
 
監督=鈴木卓爾
出演=西田尚美、猫田直、田中要次、鈴木卓爾
 
おっけっ毛ビビロボス
 
[コメント]
 そんな遠くない昔、深夜に再放送されていたNHK教育の『さわやか三組』のとある回を見ていて、「おい、おい、おい、いいのかよ!」、もしくは「おい、おい、おい、そんなのありかよ!!」、と思わず突っ込みを入れてしまいたくなったことがあります。何故って? それは『おっ毛っけビビロボス』が出ていたからです。小学生が道徳(懐かしい響き。)の時間に見る番組で、そんなエスプリの効いたおふざけが許されるんだろうか? とNHKに思わず抗議の電話を入れてしまいたくなったものの、そもそも『おっ毛っけビビロボス』って、一体何々だろう? と疑問に思ったことを、今でも昨日のことのように覚えています。またそう言えば、「サンサンサン♪太陽の〜ひかり〜♪」とオープニング曲をフォルダーが歌っていたのですが、女子たちは今やフォルダー5として華々しく活躍しているのに対して、Vo. のダイチくん(彼はそのうちほっといても出てくるでしょう。)の他にもう一人いた男の子は一体どこにいってしまったのかが非常に気になる今日この頃です。 (斎)

●ゲストの紹介
鈴木 卓爾(すずき たくじ)氏

 1967年静岡県生まれ。高校時代より映画制作に興味を持つ。85年、東京造形大学入学後、自主映画製作開始。87年『にじ』(8mm・PFF88審査員特別賞受賞)、96年『おっけっ毛ビビロボス』(16mm)、94年〜現在継続中『ワンピース・プロジェクト』(共同・矢口史靖監督)などの作品を監督しながら脚本家、俳優として多方面に活躍中。
 ○主な出演作品
  『トキワ荘の青春』(市川準監督)
  『ひみつの花園』(矢口史靖監督)
  『雷魚』(瀬々敬久監督)
  『東京夜曲』(市川準監督)
  『アドレナリンドライブ』(矢口史靖監督)
  『サンディドライブ』(斎藤久志監督)
  『ざわざわ下北沢』(市川準監督)
  『忘れられぬ人々』(篠崎誠監督)など多数。
 
長曾我部 蓉子(ちょうそかべ ようこ)氏

 岩手県出身。端正な容姿で「新・Vシネの女王」として多数のOVに出演。TV、映画にも活躍の場を広げつつある。
 ○主な出演作品
  『のど自慢』(井筒和幸監督)
  『リング2』(中田秀夫監督)
  『ISOLA 多重人格少女』(水谷俊之監督)
  『東京マリーゴールド』(市川準監督)ほか。
 
井口 昇(いぐち のぼる)監督

 1969年、東京生まれ。AV監督。その特異な風貌で平野勝之や矢口史靖監督らの作品にも出演。強烈な印象を残す。劇団「大人計画」の役者でもある。監督作品は『クルシメさん』の他に『わびしゃび』(88年)がある。