●挨拶●
映画祭TAMA CINEMA FORUMが始まったのは、1991年のことでした。多摩市制20周年を記念したTAMA CINEMA FORUMとして始まりました。本当に市民の手づくりのささやかな催しでした。毎年少しずつではありますが、この映画祭を手助けしてくださる市民ネットワークが広がってきました。観客動員数も増え、その参加者のエリアも広くなりました。私たちの映画祭は、実行委員会方式による市民による市民のための、手づくり映画祭として育ってまいりました。
実行委員として活動しているのは、10代の若者から60代のシニア世代、また学生から、サラリーマン、主婦層、現役から引退した層を含む幅広い人々です。手弁当で集まってきたこれらのメンバーが、企画から始まり、プログラム構成、ゲストスピーカーの選定と依頼、配給・製作会社とのプリント交渉、そして、ポスター作製からその掲示といった種々の仕事をこなします。年間20数回の定例会議を含む毎月の打ち合わせ。そしてチケットの販売もあります。市をはじめとするいろいろな機関からの補助はいただいておりますが、この映画祭の大きな部分は、チケット売上げ、すなわち、参加してくださった方々のふところに頼っているわけです。
一番頭を悩ませるのは、この資金調達です。労働力やサービスは、私たちの意志で提供できますが、お金だけは、そうはいきません。会期が終わるまで、何人の入場者があったか、チケットの売上はどうだったかと数字と首っぴきになり、一喜一憂しております。
私事ですが、私はJICA(国際協力事業団)のシニアボランティアの一員として、中東のヨルダンという国に2年間行っておりました。本年9月末に帰国したばかりで、昨年・今年とこの映画祭で、どういう取り組みが行われてきたのか皆目わかりません。2年間の不在で、映画祭の活動にたずさわっていないため、私自身、委員長としてのご挨拶をするには不適任と思っております。委員会メンバーも新しい人が多く入っており、映画祭の内容・構成も随分変化してきているように思います。しかし、11年という新しい節目を迎えることになったということは、新たな発展を求めて、今までとは異なった方向を探す時期にさしかかっていると思っています。新しい方向は、新しい血、新しいエネルギーを注入することで、可能となってくるのではないかと思います。私も、ヨルダンの大学では、演劇、フィルム部門を自分の専門とした若い学生たちといっしょにすごしてまいりました。映像を作ろうとする若者たちが何を考え、何を目指しているのか、それは興味深いものがありました。こういった若い世代の発想、そして私たちシニア世代との協働で何が生まれてくるか、彼らはお金が不足しているなかで、演出、出演、音楽、撮影……をそれぞれ共同でシェアしながら、発表する作品づくりに取り組んでいました。
私どもの映画祭も同様に、新しいエネルギーの注入、そして幅広い分野の広がりを求め、作品を鑑賞するだけでなく、新しい映像文化の未来を見つめて行動しなければ……と思っております。
最後に、ずっと私どもの映画祭を支えてくださった市当局、市教育委員会、多摩市文化振興財団をはじめとする行政サイド、苦しい経済市況のなかで、いろいろの形で援助の手をさしのべてくださった企業・団体、そして何よりも、陰に陽に私どもの活動を支えてくださる市民の皆様に?? 感謝の念をささげます。
TAMA映画フォーラム実行委員会
委員長 水野信利