痛快! 時代劇 PART 2

11月28日 「痛快! 時代劇 PART 2」 (やまばとホール)

●Time Table●
13:00−13:10
13:10−14:32
14:50−17:20
17:40−19:28
オープニング
銭形平次捕物控 人肌蜘蛛
赤穂浪士
旗本退屈男

銭形平次捕物控 人肌蜘蛛
1956年/大映(京都)製作・配給/1時間22分
 
監督=森一生
原作=野村胡堂
脚本=小国英雄
撮影=杉山公平
音楽=斎藤一郎
美術=西岡善信
出演=長谷川一夫、山本富士子、市川雷蔵、黒川弥太郎、夏目俊二、堺駿二、中村玉緒
 
[コメント]
 長谷川一夫の銭形平次……とても艶かしくて頼り甲斐がある。
 世間中の人々が、市川雷蔵演じる新次郎に疑いをかけていた時、ただ一人彼を信じていたのが銭形平次であった。深く落ち込み、希望の持てなくなっている新次郎にとって、この銭形平次がいかに心強く、大きな存在に見えただろうか。長谷川一夫がそのような役を演じるのにふさわしい役者であることは、すべての人が理解に苦しまないであろう。
 また、脇を固める役者も見応えがある。純粋で真面目であるがために騙されてしまう新次郎を演じる市川雷蔵。市川雷蔵のファン(私もその一人です。)は、このような役を演じる彼を見たら、ますます惚れ込んでしまうに違いない。
 そして森一生監督のカメラワークに、驚きを覚えるばかりであった。1つの画面のなかに様々な要素、動きを入れてしまう構図。大切な場面こそ切り替えしショットを利用しないテクニック。目を見張るものがあった。 (朋)

赤穂浪士
1961年/東映(京都)製作・配給/2時間30分
 
監督=松田定次
原作=大仏次郎
脚色=小国英雄
撮影=川崎新太郎
音楽=富永三郎
美術=川島泰三
出演=片岡知恵蔵、中村錦之助、東千代之介、大川橋蔵、里見浩太朗、柳永二郎、大河内伝次郎
 
[コメント]
 赤穂浪士の吉良邸討ち入りから今年で300年。逸話もないまぜになりながら未だ人気衰えることのない赤穂浪士の物語。近年都内で催されている討ち入りゆかりの地を訪ねるイベントには老若男女が参加し、大盛況だという。300年の時を経てなお、赤穂浪士は愛され、ファンを魅了している。義士銘々伝および忠臣蔵外伝も含め、映画やTVドラマなどでこんなにたくさんの作品が生まれている物語が他にあるだろうか。
 本作品は東映創立10周年記念映画として製作された。どのシーンもドラマティックに描かれている。大内蔵助を演ずる片岡知恵蔵の、言葉を発せずとも差し迫った空気を伝える演技は素晴らしい。また、月形龍之介扮する吉良上野介の「禄盗人に触られては上野介の衣服が汚れる」の言い回しと、ゆっくりと大紋を払うわざとらしい仕草も圧巻だ。
 世の中を渡っていく上で信義を立て通すことは難しく、それゆえに美しい。元禄の世も平成の世も。 (望)

旗本退屈男
1958年/東映(京都)製作・配給/1時間48分
 
監督=松田定次
原作=佐々木味津三
脚色=比佐芳武
撮影=川崎新太郎
音楽=深井史郎
美術=川島泰三
出演=市川右太衛門、桜町弘子、片岡知恵蔵、大河内伝次郎、月形龍之介、大友柳太郎
 
[コメント]
 気がふれた伊達藩主の乱行のもとで着々と進む大老幕閣の手による幼い跡継ぎの殺害計画。そこに現れるは市川右太衛門演ずる退屈男とその一行。悪は鮮やかな推理と見事な太刀さばきのもと、善に一刀両断される。という典型的な勧善懲悪の時代劇なのだが、右太衛門、映画300本出演記念版というだけあって、東映時代劇スターが総出演している豪華な作品である。
 永遠のチャンバラスター右太衛門の見事な太刀裁きや風格ある演技、特に「この眉間三日月傷が目に入らぬか。知らぬとあらば教えてしんぜよう。天下御免の向こう傷、人呼んで旗本退屈男」と啖呵をきり、悪をばっさばっさと蹴散らしていく様は痛快そのものであるし、そのライバル片岡千恵蔵の気がふれたお殿様の演技は型破りで、とても面白い。また、右太衛門のクライマックスに近づくほど派手になっていく豪華な衣装は観る価値あり。
 これぞ映画黄金期の娯楽大作時代劇といえる作品である。 (未)