●挨拶●
本年、映画祭TAMA CINEMA FORUMは、第12回を迎えることになりました。
多摩市制20周年を機として始まった、ささやかな手づくり映画祭が、ここまで継続してきたということは、私にとっては驚くべきことでありました。少しずつではありますが規模が大きくなり、1会場から4会場5スクリーンを使用するまでになり、上映作品もいろいろな分野に広がっていきました。
日本映画の活性化を目指し、創造の若い芽を育てようと、ビデオ及びフィルム部門のコンペティションを行い、世に知られていない若い才能の発掘を夢見てNEW EIGA WORKSHOPを開き、企画から始まり、シナリオ・撮影・編集を経て作品化しようという試みも行っています。
一年をひとつのサイクルとして準備し、映画祭を頂点とするプロセスのなかで、実行委員として参加してくれた60人余りの人々のアイデア、努力、熱意が、この映画祭を支えてくれています。観客動員数も毎年延べ2万人を超えるようになりました。
こうなってきたのは、多摩市をはじめとする行政のバックアップ、映画関連業界、協賛あるいは協力していただける企業や各団体、そして多くの市民の存在があります。
そういったなかで、手弁当で集まってきた10代の高校生から60代70代のシニア世代を含む幅広い人々が、企画、プログラム構成、ゲスト依頼、フィルム交渉、ポスター・パンフレット制作及び配布、資金集めの活動などいろいろな作業をこなしてこの映画祭がつくられていきます。
フォーラムという名が示すように、映画を通してのさまざまの活動が、私たちの住むこの多摩の地にエネルギーをもたらし、映画祭という姿で表現されるのです。
毎年のことではありますが、いつも頭を悩ますのは、資金繰りのことです。映画祭ではかなりの経費が発生します。それを支える多くの部分をチケット収入に頼っています。つまり、観客として参加してくださる人々によって、この映画祭は成立しています。チケット収入に頼らざるを得ないという不安定要素にいつもおびえながら一喜一憂しています。
この映画祭は、継続することによって、文化発信のエネルギーとなりえます。基盤の弱い私どもが、この映画祭を継続していくためには赤字を出してはいけない、欠損を出したら終わらなければならぬという厳しい現実は、常に不安と危惧を私たちにつきつけてきます。
私たちは、これからの日本を担うことになる若い人々の発想を育てなければ……と言う使命感ももっています。多くの人々が集まり古い映画をなつかしみ、新しい映画の動きに刺激を受けて時代を体感する。そうしたなかで自ら文化をはぐくみ育て、それが新しい文化の形成へとつながるエネルギーとして成長していくことを夢見ています。
単なる映画祭という範疇に止まらず変化し続ける、そして送り手、受け手がいっしょに作りあげていく場でありたい。これを目指して私どもは行動します。
最後に、ずっと私どもの映画祭を支えてくださった多摩市当局、多摩市教育委員会、多摩市文化振興財団を始めとする行政サイド、苦しい経済環境のなかでいろいろな形で援助してくださった企業、団体、そしてさまざまの場で私どもの活動を支えてくださる市民の皆様に深い感謝の念をささげます。
TAMA映画フォーラム実行委員会
委員長 水野信利