国際映画を席巻した話題作

11月22日 「国際映画を席巻した話題作」 (やまばとホール)

●Time Table●
11:00−11:15
11:15−13:15
14:00−15:53
16:15−17:52
オープニング
ボウリング・フォー・コロンバイン
トーク・トゥ・ハー
過去のない男

ボウリング・フォー・コロンバイン
Bowling for Columbine
2002年/カナダ/ギャガ・コミュニケーションズ Gシネマグループ配給/2時間
 
監督・脚本・出演=マイケル・ムーア
編集=カート・イングファー
出演=マリリン・マンソン、チャールトン・ヘストン
 
ボウリング・フォー・コロンバイン
 
[ストーリー]
 1999年4月20日。米コロラド州のコロンバイン高校で、同校の男子生徒2名が高校内で銃を乱射して13人の命を奪った後、自殺するという衝撃的な事件が起きた。メディアはその後さまざまな原因を騒ぎ立てるがどれも腑に落ちない。何故にアメリカでは銃犯罪の数が圧倒的に多いのか? 問題の核心に迫るため、マイケル・ムーアが突撃取材を敢行していく。
 
[コメント]
 このコロンバイン高校の事件をニュースで観た時は本当に驚きました。その後ドキュメント番組でもう一度観た時は驚きだけでなく、更に恐怖感におそわれました。
 銃犯罪が多発するアメリカ。銃による年間の死者数は1万人を越えているそうです。銃を持っている人の大半は身を守るためのハズなのに、それが凶器になるとは。映画のなかでもありますが、銃の世帯保有率はカナダの方が高いのです。でも死者数は……。(実際に映画を観て確かめてください。ビックリしますよ)
 この映画で印象的なのは、コロンバイン高校事件で障害者になった少年と監督がKマートに行くシーンです。ここで自分は初めて、普通に店で銃が買えると知り、驚きました。そしてついに……。(ここも映画で。ちょっと感動というか安心しますよ)最後に、チャールトン・ヘストン氏は、今年全米ライフル協会会長を高齢のため引退しました。何か疑ってしまうのは自分だけかな? (仁)

トーク・トゥ・ハー
talk to her
2002年/スペイン/ギャガ・コミュニケーションズ Gシネマグループ配給/1時間53分
 
監督・脚本=ペドロ・アルモバドル
撮影=ハビエル・アギーレサロベ
音楽=アルベルト・イグレシアス
出演=レオノール・ワトリング、ハビエル・カマラ、ダリオ・グランディネッティ、ロサリオ・フローレス
 
トーク・トゥ・ハー
 
[ストーリー]
 交通事故で植物状態となったアリシア(L・ワトリング)を4年も世話する看護士ベニグノ(J・カマラ)。競技中の事故によって昏睡状態で運ばれ、入院する女闘牛士リディア(R・フローレス)。困惑している彼女の恋人マルコ(D・グランディネッティ)を励ますベニグノ。同じ境遇の2人は深い友情で結ばれる。4人の生と死、愛と孤独、痛みと希望。切なくも温かい究極の愛の物語。
 
[コメント]
 『トーク・トゥ・ハー』は、外国語作品が37年ぶりにアカデミー賞脚本賞受賞という快挙を成し遂げた映画である。
 いささか奇想天外でスリリングな構成ではあるが、過去と現在に行き来しながら4人の男女の恋愛を明かしていく。冒頭とラストにドイツの有名な舞踏家の舞台、ブラジルの国際ミュージシャンのライブ、闘牛シーン、モノクロのサイレント映画『縮みゆく恋人』を織り交ぜ、可憐なバレリーナと情熱的な女闘牛士、泣く男と微笑む男を対比させながら愛の奇跡を描いている。よく練りあげられた脚本である。
 看護士ベニグノの愛は献身的なのか、ストーカ的な狂気なのかと論じられる。だが、ラストの奇跡がそれらを帳消しにして私たちの心を揺さぶる。アルモドバル監督が語る「愛するものは泣き、愛する者は語りかける」は、人間を見つめる温かさ、深さを感じる。 (恵)

過去のない男
Mies vailla menneisyytta
(The man without a past)
2002年/フィンランド/ユーロスペース配給/1時間37分
 
監督・脚本=アキ・カウリスマキ
撮影=ティモ・サルミネン
音楽=マルコ・ハーヴィスト&ポウタハウカ、クレイジーケンバンド他
出演=マルッキィ・ペルトラ、カティ・オウティネン、ユハニ・ニエミラ、カイヤ・パカリネン
 
過去のない男
 
[ストーリー]
 フィンランドはヘルシンキ。そこにやってきた一人の男(M・ペルトラ)は、公園で強盗に襲われて、死にかけてしまう。男は奇跡的に意識を取り戻すが、過去の記憶をすべて失っていた。
 そんな男にコンテナで暮らす一家が暖かい手を差し伸べ、男はそこで新たな生活を始める。そしてある日、男は救世軍の女性イルマ(K・オウティネン)と出会う。
 ふたりは愛を育むが、男には更なる運命が待っていた……。
 
[コメント]
 カウリスマキ監督の国、フィンランドにはかつて一度だけ行ったことがある。路面電車が走るヘルシンキの街並みや、酔っ払った男が歩いている様子はまるでカウリスマキの映画のようだと思った。
 この映画のキャッチコピーは「人生は前にしか進まない」であるが、むしろ記憶を失った男にとっては「人生は前にしか進めない」のではなかったろうか。そして、その結果、男は容易だが、最高に素敵なハッピーエンドを迎える。
 くしくも今年はカウリスマキ監督が崇拝する小津安二郎監督の生誕100周年に当たる。その記念すべき年に、日本でこの映画を観ることができたのはやはり何かの縁であろうか。
 美しい映像とクレイジーケンバンドを始めとする素晴らしい音楽とともに、この映画はやさしさに満ちている。 (治)