家族の絆とは

11月24日 「家族の絆とは」 (やまばとホール)

●Time Table●
11:00−13:10
13:50−15:17
15:40−17:37
アバウト・シュミット
おばあちゃんの家
北京ヴァイオリン

アバウト・シュミット
ABOUT SCHMIDT
2002年/アメリカ/ギャガ=ヒューマックス配給/2時間5分
 
監督・脚本=アレクサンダー・ペイン
脚本=ジム・テイラー
撮影=ジェームズ・グレノン
音楽=ロルフ・ケント
編集=ケヴィン・テント
出演=ジャック・ニコルソン、キャシー・ベイツ、ダーモット・マルロニー、ホープ・デイヴィス、ハワード・ヘッセマン、レン・キャリオー
 
アバウト・シュミット
 
[ストーリー]
 シュミット(J・ニコルソン)は、長年社長として勤めた会社を引退し、妻との2人の生活を始めた。しかし、その矢先に訪れた突然の妻の死。仕事一筋に生きてきたシュミットは生活もままならず、友人とはすれ違い、孤立してゆく。ひとり娘(H・デイヴィス)とは結婚をめぐって確執ができてしまう。居場所をなくしたシュミットは、ひとり車で自分探しの旅に出る。
 
[コメント]
 とにかくジャック・ニコルソンが凄い!
 「あれ? こんな人だった?」と見違えてしまうほど、シュミットになりきっているのである。仕事の虫、自尊心のかたまり、ため息がでるほど見栄っ張り、頑固。「いるいる、こんな人〜」ときっと誰もが感じることだろう。憎らしいけど憎めない、でもあきれる、どうしようもない男が、ニコルソンによって非常にリアルに表現されている。
 脇を固めるキャラクターたちがまた個性的。彼らの存在が、映画全体を適度に真剣に、ユーモラスに、メリハリの効いた展開に仕立てているのだ。
 全体として地味な作品ではあるが、「引退した男の生き様」というテーマは大胆であると思う。女性は客観的にすんなりと受け入れられそうだが、男性はこの映画を観てどう感じるのか? シュミットの描写がリアルであるだけに思わずドキッとするのではないだろうか。ともあれ、地味である分、細やかで大胆なニコルソンの演技が光っているのが見所! (斉)

おばあちゃんの家
The Way Home
2002年/韓国/東京テアトル、ツイン配給/1時間27分
 
監督・脚本=イ・ジョンヒャン
撮影=ユン・ホンシク
美術=シン・チョミ
音楽=キム・テホン、キム・ヤンフィ
編集=キム・サンボン、キム・ジェボン
出演=キム・ウルブン、ユ・スンホ、ミン・ギョンフン、イム・ウンギョン、トン・ヒョフィ、イ・チュニ、イ・トンジウォル
 
おばあちゃんの家
 
[ストーリー]
 母親が仕事を見つけるまで、田舎のおばあちゃん(キム・ウルブン)と暮らすことになった7歳のサンウ(ユ・スンホ)。耳が遠く、口もきけないおばあちゃんをバカにして、ゲームに熱中するサンウだが、ある日ゲームの電池が切れてしまう。ふてくされて駄々をこねるサンウに、おばあちゃんは精一杯のことをしてやるが、サンウは泣きわめくばかり。町に出かければ、おばあちゃんはサンウに新しい靴を買い、麺を食べさせる。わがままを黙って聞いてくれるおばあちゃんに、次第にサンウは心を開いていく……。
 
[コメント]
 おばあちゃんと一緒に暮らしたことがある人間にとって、涙なしには見られない映画だろう。”生まれて初めておばあちゃんの家に預けられた男の子とおばあちゃんとのひと夏の思い出”と、いたって物語はシンプル。しかしシンプルゆえにストレートに心に響いてくるのである。また、おばあちゃんをはじめとして、サンウ役の男の子以外すべて素人が演じているということもあり、その自然体な演技がノスタルジックな気持ちを引き起こさせてくれる。そして見る人によっては我がままし放題のサンウに自分と姿をダブらせては、とうの昔に忘れていた思いがこみ上げてくるのではないだろうか。ひきこもり、不登校の増加等々人間関係そのものが問題となってきている現代。人間関係の基礎ともいうべき家族の絆が描かれているこの映画こそ、子供からお年寄りの方まで幅広い年齢層の人々に是非観てもらいたい。 (浜)

北京ヴァイオリン
TOGETHER
2002年/中国/シネカノン配給/1時間58分
 
監督・脚本=チェン・カイコー
脚本=シュエ・シャオルー
撮影=キム・ヒョング
美術=ツァオ・ジョンピン
音楽=チャオ・リン
編集=チョウ・イン
出演=タン・ユン、リウ・ペイチー、チェン・ホン、ワン・チーウェン、チェン・カイコー、チェン・チアン、チェン・チン、キム・ヘリ、リー・チュアンユン
 
北京ヴァイオリン
 
[ストーリー]
 中国北部の田舎町に暮す貧しい父リウ(リウ・ペイチー)と13歳の息子チュン(タン・ユン)。リウの夢は母親の残したヴァイオリンを弾くチュンを一流のヴァイオリニストにすることだった。ある日、コンクール出場のため北京へでかけた2人は著名な先生の個人指導を受けるため北京で暮し始める。急激に変化する大都会はチュンの心に影を落とすが、彼の奏でる旋律は人々の心を癒していく。やがてチュンは国際コンクール出場のチャンスをつかむが……。
 
[コメント]
 本作はハリウッドに進出したチェン・カイコー監督が再び中国を舞台に、大都会で懸命に生きる父子の絆と、彼らをめぐる市井の人々の心の機微をあたたかく描き出した作品であるのだが、本作において際立っているのはやはりその音楽と父親リウの姿であると思う。リウの、息子の才能を信じて慣れない都会でレッスン代のために必死で働く姿、いい先生の名を聞けば恥も外聞も捨てて指導を頼みこむ姿、息子のためにセーターを編む姿はどこかユーモラスで、そして切ない。また、全編を通して流れるクラシック音楽・中国の伝統音楽の数々は物語と交錯して観る者を圧倒し、その心を揺さぶる。少年犯罪やひきこもりといった事柄がニュースをにぎわし、とかく親子の関係が取り沙汰されるいま、観終わったあとに「家族」、「親子」のあり方に思いをはせたのは私だけではなかっただろう。 (未)