マヌーシュ・スウィングを楽しもう

11月23日 「マヌーシュ・スウィングを楽しもう」 (ベルブホール)

●Time Table●
13:00−14:30
14:45−16:28
16:45−18:20
僕のスウィング
ラッチョ・ドローム
ギター弾きの恋

僕のスウィング
SWING
2002年/フランス/日活配給/1時間30分
 
監督・脚本=トニー・ガトリフ
撮影=クロード・ガルニエ
編集=モニック・ダルトンヌ
音楽=マンディーノ・ラインハルト、チャボロ・シュミット、アブデラティフ・チャラ—ニ、トニー・ガトリフ
出演=オスカー・コップ、ルー・レッシュ、チャボロ・シュミット、マンディーノ・ラインハルト、ベン・ズィメット、ファヴィエーヌ・マイ
 
僕のスウィング
 
[ストーリー]
 ジプシー・ギターの音色に心奪われた10歳の少年マックス(O・コップ)は、マヌーシュの住む地区で少女スウィング(L・レッシュ)に出会う。ギターを習いにミラルド(T・シュミット)のトレーラーに通ううちに、音楽に囲まれた陽気で自由なマヌーシュとスウィングに魅せられていく。ストラスブールのマヌーシュ・コミュニティを舞台にした白人の少年とロマの少女の小さな恋の物語。
 
[コメント]
 夏休みに祖母の家に預けられたマックスが、ギターをきっかけに踏み込んだ新しい世界。異なる文化の出会いであるが、小難しく説明するのではなく、子供たちの動きを通してさらりと描かれている。
 自由で軽やかに駆け抜けるスウィング。二人のいたずらや冒険の日々は、夏の芳香と眩しいほどのきらめきに満ち溢れている。そばかす顔の少年マックスと黒い大きな瞳のスウィングの、思春期前の一時に見られる笑顔が、この映画の魅力と言えよう。
 全編にフィーチャーされているのは、陽気でどこかノスタルジーを感じさせるマヌーシュ・スウィング。ギターを教えるミラルド役のチャボロ・シュミットはジャンゴ・ラインハルトの後継者といわれるギタリストである。彼の指は弦から弦へと自由に動きまわる。彼曰く「楽譜の音楽ではなく、心と耳の音楽」とのこと。
 そんな陽気で軽快なマヌーシュ・スウィングに乗って、キラキラした夏の日々を一緒に味わおう。 (柴)

ラッチョ・ドローム
LATCHO DROM
1993年/フランス/ケイブルホーグ配給/1時間43分
 
監督・脚本=トニー・ガトリフ
撮影=エリック・ギシャール
美術=デゥニ・メルシェ
音楽=アラン・ヴェベール
録音=ニコラ・D.V.・ベルクマン
 
ラッチョ・ドローム
 
[ストーリー]
 今からおよそ1000年ほど前にインド、ラジャスタンを出発点に、エジプト、トルコ、ヨーロッパへと放浪し続けたジプシー。彼らは独自の言葉であるロマ語を話し、文字は持たない。本作はジプシーたちの旅路を音楽と踊りで表現した映像詩である。“ラッチョ・ドローム”とはロマ語で“よい旅を”の意。
 
[コメント]
 本作品は、アンダルシア地方のロマ(ジプシー)の血をひくトニー・ガトリフ監督が、自らのルーツでもある“ロマ民族”をテーマに撮った作品である。ルーマニアのタラフ・ドゥ・ハイドゥークス、エジプトのザ・ミュージシャン・オブ・ザ・ナイル、スペインのラ・カイータといった強力なミュージシャンが出演しており、東欧のジプシー音楽とスペインのフラメンコが同じルーツを持つことを認識させられ、壮大なロマンを感じさせる。
 大人たちが歌い、踊り、演奏する横で、真似をする子供たち。その姿は微笑ましくもあり、文字を持たないロマの、何代にも渡って受け継がれていく歴史と民族の絆が感じられる。日本ではロマに対して偏見だけが一人歩きしている感があるけれども、この映画から見られるロマは、誇り高き友愛の民であった。長きに渡って迫害や差別を受けながらも生き抜いてきたロマ。彼らにとって音楽とは、生きる歓びであり、生命の叫びである。ジプシー音楽は魂の音楽である。 (柴)

ギター弾きの恋
Sweet And Lowdown
2000年/アメリカ/ギャガ・コミュニケーションズ配給/1時間35分
 
監督・脚本=ウディ・アレン
製作総指揮=J・E・ボーケア
撮影=チャオ・フェイ
音楽=ディック・ハイマン
出演=ショーン・ペン、サマンサ・モートン、ユマ・サーマン、グレッチェン・モル
 
ギター弾きの恋
 
[ストーリー]
 1930年代のシカゴ。何ごとにも派手好きのエメット(S・ペン)は、才能あふれるジプシージャスギタリスト。だがある一方で、女遊びも豪快で、娼婦の元締めをするなど、裏社会でも顔のきく破滅的な人生を送っていた。そんなある日、口のきけない娘・ハッティ(S・モートン)と出会う。エメットは次第にハッティに心惹かれていくのだが……。
 
[コメント]
 常に話題作を手がけてきた奇才ウディ・アレンの記念すべき30本目の監督作品。身勝手で派手好きなギタリストと、純真で素朴な心を持った女との恋の行き違いを描いている。
 ジャズ好きのウディ・アレンのジャズへの愛が感じられる作品で、ジャズ・ギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトを崇拝する主人公エメットの演奏シーンは、実際に演奏しているように見えるほどで(実際の音は吹替)、ウディ・アレンのこだわりが感じられる。
 すくいようもないダメ男を憎めない魅力的な男に演じきっているショーン・ペン以上に本作品で目が離せないのは、なんといってもサマンサ・モートン。ハッティは口がきけないので、台詞は一言もないのだが、表情や仕草だけで感情をうまく表現していて、それがとてもコミカルでありながら、恋する女の子をキュートに演じている。そして、ショーンとサマンサの息はピッタリでテンポがよく、映画的には何となくチャップリンの映画のような雰囲気もある。
 失ってからこそ分かる大切な人の存在の大きさを気付かせてくれる、心のどこかにしまっておきたい切ないジャジーなラブストーリーです。 (大)