11月27日 「行定勲監督特集」 (パルテノン多摩小ホール)
●Time Table● | |
12:00ー14:01 14:30ー16:20 16:40ー17:20 17:40ー19:58 |
ひまわり きょうのできごと トーク ゲスト:行定勲監督、福本淳キャメラマン、長澤まさみ氏 司会 :森直人氏(映画ライター) 世界の中心で、愛をさけぶ |
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12:00ー14:01 14:30ー16:20 16:40ー17:20 17:40ー19:58 |
ひまわり きょうのできごと トーク ゲスト:行定勲監督、福本淳キャメラマン、長澤まさみ氏 司会 :森直人氏(映画ライター) 世界の中心で、愛をさけぶ |
ひまわり |
2000年/ケイエスエス製作・配給/2時間1分 |
監督・脚本=行定勲 脚本=佐藤信介 撮影=福本淳 音楽=朝本浩文 出演=麻生久美子、袴田吉彦、河村彩、マギー、粟田麗、光石研、北村一輝 |
[ストーリー] |
ひとりの女性(麻生)が海難事故で行方不明になり、遺体があがらないまま葬式が行われていく。そして、その場に集まった小学校時代の同級生や恋人などさまざまな若者たちが、次々と彼女との思い出を回想していくのだが……。 |
[コメント] |
ひとつひとつ歳を重ねていくうちに、子供の頃の初恋の記憶が消えて行くような気がするのは私だけではないはず。物語は小学校の同級生が事故で亡くなったことからお葬式で旧友たちと再会することから沸き起こる過去の思い出探し。亡くなった少女はどんな人だったのか同級生だった彼らに何を伝えたかったのか、少しずつ謎を解き明かす。主人公袴田吉彦演じる青年が、亡くなった少女と過ごした小学校時代のできごとを少しずつ思い出していくことで、少女の生きていた証を探していく。思い出は記憶の彼方に忘れ去られていても、それを断片的にでも引き出すことで、まるでその場所にいたような懐かしい思いをくれた映画であった。そうした過程が、実に自然で繊細な描写で描き込まれていて、観ている方も胸が痛くなる。自分の思い出が知らずに映画の登場人物たちのそれと重なって、鮮やかに彩られていくことに気付かされる。 (石カ) |
きょうのできごと a day on the planet |
2003年/きょうのできごと製作委員会/コムストック配給/1時間50分 |
監督・脚本=行定勲 原作=柴崎友香 脚本=益子昌一 撮影=福本淳 音楽=矢井田瞳 出演=田中麗奈、妻夫木聡、伊藤歩、池脇千鶴、柏原収史、三浦誠巳、石野敦士 |
[ストーリー] |
京都の大学院に進学が決まった正道の引っ越し祝いに集まった中沢(妻夫木)、真紀(田中)らの仲間たち。その日、彼らの身に起こったちょっとしたできごと、そして一日の間で揺れ動くそれぞれの思いが交錯しながら物語は展開していく。 |
[コメント] |
柴崎友香さんの原作を先に読んでいた私は、映画の『きょうのできごと』を観るのが億劫であった。 映画化するには地味な作品に感じられたし、若い女性をターゲットにしたような映画の仕上がりが想像された。「男の観るもんじゃないわ」とぶーたれつつ、本編を見た。ところが、原作にはないエピソードを絡ませた映画版の『きょうのできごと』に引き寄せられてしまった。妻夫木聡、田中麗奈といった旬の俳優たちのフレッシュな演技も、この作品の大きなウリのひとつである。 窓から飛び降りてビルの間に挟まった男、座礁した鯨を海に戻そうとする人たち、スクリーンの中のニュース番組(この番組も『きょうのできごと』)では、うかがい知れないドラマがそこにはあった。丹念に描かれた各々の思いの移ろいは、同年代の私にもリアルに感じられる。言葉で言い表せないような曖昧な気持ち、上手く通じてくれない愛情や優しさ、そのひとつひとつが、さりげなく描かれつつも心に残るものとなっている。 (森) |
世界の中心で、愛をさけぶ |
2004年/「世界の中心で、愛をさけぶ」製作委員会/東宝配給/2時間18分 |
監督・脚本=行定勲 原作=片山恭一 脚本=坂本裕二、伊藤ちひろ 撮影=篠田昇 音楽=めいなCo. 出演=大沢たかお、柴崎コウ、長澤まさみ、森山未来、山崎努、宮藤官九郎 |
[ストーリー] |
朔太郎(大沢)の婚約者律子(柴崎)が失踪する。律子の行き先が四国だと知り、あとを追う朔太郎。そこは亜紀(長澤)との思い出の場所、朔太郎は思い出のなかに迷い込んでしまう。朔(森山)と亜紀の初恋は甘く淡いものだった。亜紀が白血病であることが発覚し、運命が急転する。朔は亜紀のあこがれだったオーストラリアの神聖な土地ウルルに亜紀をつれていく計画をする。しかし、病院を抜け出した二人が飛行機に乗ることはなかった。そして、伝えられることのなかった亜紀のメッセージが十数年を超えて朔のもとへ届くこととなる……。 |
[コメント] |
朔と亜紀の純愛はその時永遠のものと二人は信じていたに違いない。しかし人の死は突然にもくることがある。愛する人が亡くなった後、残された人はどれだけ心に空白の時間を持たなければならないのか。そこを助けることは誰にも出来ないのでは……考えさせられます。物語は回想と現在とを織り込みながら進むのですが、斬新な演出がこの映画を何倍も感動させてくれた気がします。行定監督の力量に拍手を送りたい。朔太郎を演じた大沢たかおさんと高校生を演じた森山未來さんが、同じ俳優さんかしらと見紛うほど素晴らしかった。高校生の純愛物語に涙などは出るはずはないと思った私ですが、3度も大粒の涙がこぼれてしまいました。人の死、悲恋、私のは何の涙だったのでしょうか……。 (紀) |
●ゲストの紹介 |
行定 勲(ゆきさだ いさお)監督 1968年8月3日、熊本県生まれ。TVドラマの助監督を経て、映画助監督として林海象、天願大介、山本政志などのインディーズ系の作品に積極的に参加。特に『Love Letter』(95年)『スワロウテイル』(96年)など岩井俊二監督作品に多く携わる。 97年に『OPEN HOUSE』で監督デビュー。『ひまわり』(2000年)は第5回釜山国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞など高い評価を受ける。01年に窪塚洋介主演の『GO』でキネマ旬報第1位、日本アカデミー賞最優秀監督賞など各映画賞を総なめにする。TVドラマやCMでも活躍する一方、『ロックンロールミシン』(02年)、『Seventh Anniversary』(03年)とコンスタントに映画を撮り、04年は『きょうのできごと』『世界の中心で、愛をさけぶ』が公開され、立て続けにスマッシュヒットを飛ばして記念すべき年となった。 次回作は吉永小百合主演の大作『北の零年』。 |
●監督からのメッセージ この度、私の作品がTAMA CINEMA FORUM で初めて『世界の中心で、愛をさけぶ』を上映させて頂けることを大変嬉しく思っております。しかも、旧作の『ひまわり』『きょうのできごと』も上映され、初の回顧展のような場を与えてくださったことに感謝致します。映画祭というのは作り手と観客の交流の場だと思っています。映画を愛する者同士、語り合うひとときが生まれることを心から願う次第です。 |
●フィルモグラフィ 1997年 OPEN HOUSE (公開は2003年) 2000年 ひまわり 2000年 閉じる日 2001年 贅沢な骨 えんがわの犬 GO 2002年 ロックンロールミシン Justice(Jam Filmsの挿話) 2003年 Seventh Anniversary きょうのできごと a day on the planet 2004年 世界の中心で、愛をさけぶ 2005年 北の零年 |
福本 淳(ふくもと じゅん)氏 1964年、神奈川県生まれ。90年頃より篠田昇キャメラマンに師事し、岩井俊二監督の『Love Letter』『スワロウテイル』などの篠田撮影のほとんどの作品にかかわる。98年からキャメラマンとして活動。行定監督の多くの撮影に携わり、『ひまわり』『閉じる日』『贅沢な骨』『きょうのできごと』などがあり、ほかに『タイムレスメロディ』(奥原浩志監督、2000年) 『玩具修理者』(はくぶん監督 、02年)などの作品がある。 |
司会:森 直人(もり なおと)氏 1971年、和歌山県生まれ。映画批評+趣味系ライター。「キネマ旬報」「流行通信」「テレビブロス」「クイックジャパン」などにレギュラー執筆中。編著「日本製映画の読み方」「21世紀/シネマX」「シネ・アーティスト伝説」(いずれもフィルムアート社)。 ホームページは、http://www3.ocn.ne.jp/~missitsu/ |