ヨーロッパの巨匠たち

11月25日 「ヨーロッパの巨匠たち」 (パルテノン多摩小ホール)

●Time Table●
15:00−17:50
18:10−20:44
エレニの旅
ライフ・イズ・ミラクル

エレニの旅
Trilogia
2004年/フランス、ギリシャ、イタリア/フランス映画社配給/2時間50分
 
監督・脚本=テオ・アンゲロプロス
脚本=トニーノ・グエッラ、ペトロス・マルカリス、ジョルジオ・シルヴァーニ
撮影=アンドレアス・シナノス
音楽=エレニ・カラインドロウ
出演=アレクサンドラ・アイディニ、ニコス・プルサディニス、ヴァシリス・コロヴォス
 
エレニの旅
 
[ストーリー]
 エレニ(A・アイディニ)はロシア革命で孤児となった。彼女はオデッサから追われて難民となったギリシャ人のスピロス(V・コロヴォス)に拾われた。スピロスたちは新たな土地にニューオデッサという村を築いた。エレニはスピロスの息子アレクシス(N・プルサディニス)と恋に落ちるが……。
 
[コメント]
 アンゲロプロスの作品で初めて観たのは『旅芸人の記録』であったと思う。TV放送でしかも1回の放送ではなく、何日かに分けての放送であった。14インチのTVではその映像美を堪能するでもなかったが、それでも印象に残るものがあった。
 その後はほとんどの作品を劇場で観ているが、アンゲロプロスの作品はやはり映像美がその魅力の一つであろう。本作品でも水のシーンなど、言葉では表現できないほど素晴らしい。アンゲロプロスの作品はストーリーが分かりづらくまた時間も長いので、ハリウッド作品を好むような人にはとっつきにくいかもしれないが、ぜひ一度大きなスクリーンでその魅力を味わってもらいたい。芸術としての映画の側面を体現し続けるアンゲロプロスにはこれからも作品を撮り続けて欲しい。(治)
 
[監督プロフィール]
 1935年ギリシャ生まれ。子供時代にナチスによる占領を体験する。戦後パリのソルボンヌ大学に入学するが、中途退学してギリシャに戻り、映画評を執筆する。68年に短編『放送』を撮り、70年に長編『再現』でジョルジュ・サドゥール賞を受賞する。75年に大作『旅芸人の記録』を監督、80年の『アレクサンダー大王』でヴェネチア映画祭グランプリを受賞。その後もコンスタントに作品を発表し続けている。

ライフ・イズ・ミラクル
Life Is a Miracle
2004年/セルビア・モンテネグロ、フランス/ギャガ・コミュニケーションズ/2時間34分
 
監督・脚本=エミール・クストリッツァ
脚本=ンコ・ボジッチ
撮影=ミシェル・アマテュー
音楽=エミール・クストリッツァ、デヤン・スパラヴァロ
出演=スラヴコ・スティマチ、ナターシャ・ソラック、ヴク・コスティッチ
 
ライフ・イズ・ミラクル
 
[ストーリー]
 1992年ボスニアの片田舎に住むセルビア人のルカ(S・スティマチ)は鉄道を敷くためやって来た技師。息子ミロシュ(B・コスティッチ)はある日軍に招集され、おまけに妻は別の男と駆け落ちしてしまう。内戦が勃発し、ミロシュは捕虜になる。その数日後、ムスリム人のサバーハ(N・ソラック)が捕まり、ミロシュとの交換要員のためルカが預かることになる。ふたりは奇妙な共同生活を送ることになるが……。
 
[コメント]
 エミール・クストリッツァ監督の最新作は実話をもとにしているとのことである。紛争下での敵と味方の恋愛劇となれば、本来、それだけでものすごい悲劇になるところだが、クストリッツァ監督のハイテンションな作風は悲劇を軽く乗り越え、素晴らしき喜劇へと昇華している。
 また、映画のなかに時々でてくるクマやロバが何とも言えない味を醸し出している。映画はノースモーキング・オーケストラの素敵な音楽と独特なユーモアに乗って上映時間の長さを忘れさせ、ラストまで突っ走る。最後はまさに奇跡(ミラクル)のハッピーエンドなのか、それともルカが見た夢なのか。きっとそれを知っているのはロバさんだけなのだ。 (治)
 
[監督プロフィール]
 1954年旧ユーゴスラビア(現ボスニア・ヘルツェゴビナ)のサラエボに生まれる。深刻な題材をとりあげながらも、コミカルでハイテンションな作風は定評がある。『パパは出張中!』『アンダーグラウンド』でカンヌ映画祭のパルムドールを受賞し、『黒猫・白猫』では、ヴェネチア映画祭の銀獅子賞を受賞している。エミール・クストリッツァ独特の映像世界には世界中にファンが多い。