11月25日 「新井浩文特集」 (パルテノン多摩小ホール)
●Time Table● | |
12:00−13:23 14:10−15:57 16:15−16:55 17:15−19:54 |
青い春 ゲルマニウムの夜 トーク 新井浩文氏 赤目四十八瀧心中未遂(R18) |
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12:00−13:23 14:10−15:57 16:15−16:55 17:15−19:54 |
青い春 ゲルマニウムの夜 トーク 新井浩文氏 赤目四十八瀧心中未遂(R18) |
青い春 |
2002年/『青い春』製作委員会/ゼアリズエンタープライズ/1時間23分 |
監督・脚本=豊田利晃 原作=松本大洋 プロデューサー=宮崎大、小林智浩 撮影=笠松則通 美術=原田満生 音楽=上田ケンジ 出演=松田龍平、新井浩文、高岡蒼佑、大柴裕介、山崎裕太、忍成修吾、塚本高史 |
[ストーリー] |
卒業式の「仰げば尊し」が聞こえるなか、九條(松田)、青木(新井)らのメンバーは、校舎の屋上にいた。「幸せなら手を叩こう」を合言葉に、度胸だめしが始まる。手すりを放して何回手を叩けるか。勝者は九條だ。しかし九條にはゲームの勝利など、もはや何の意味ももたない。自分は何者か、そしてどこに行くのか。青い春の終わりは、もうそこまで迫ってきていた。 |
[コメント] |
本作品は新井氏のデビュー2作目。そして共演は松田龍平を筆頭に、高岡蒼祐、塚本高史、瑛太など現在の日本映画の中心的若手俳優が多く出演しているのにも注目したい。 自分のなかのアイデンティティが確立しない頃、人間は何を求めて生きていけばいいのだろう。迷いの渦の中に彼らは佇んでいた。そして混沌の真っ只中でも、九條は眼の色一つ変えない。そんな九條は青木にとって、自分の迷いを払拭してくれる唯一の存在だったのだ。しかし本当は九條自身が、自分のなかに可能性を見出せないでいた迷い犬だったのだろう。言葉が触れ合わない時代、コミュニケーションが取れなくなった二人の関係は、とたんに破綻の一途を下る。そして「幸せなら手を叩こう」、この言葉にすべての意味が集約されていると感じ、屋上に佇む青木。(余談だがこの校舎は多摩市内の某学校である。その見慣れた風景に、あっと思う方も少なからずいらっしゃるだろう)彼が一晩中、校舎の屋上で一点を見る長回しのシーンが圧巻だ。そしてそこに役者・新井浩文氏の「佇まいのリアルさ」、の原点があるのではと感じているのは私だけだろうか。そしてこの屋上から、狂気と迷いに満ちたなかでも、どこか自信と誇りにあふれた眼差しをみせる、役者・新井浩文が走り出したといっても過言ではない。 (ひなた) |
ゲルマニウムの夜 |
2005年/ネオプレックス、荒戸映画事務所製作・配給/1時間47分 |
製作総指揮=荒戸源次郎 監督=大森立嗣 原作=花村萬月 脚本=大塚亮 撮影=舘野秀樹 美術=金勝浩一 音楽=千野秀一 出演=新井浩文、広田レオナ、早良めぐみ、石橋蓮司、佐藤慶 |
[ストーリー] |
殺人を犯し教会の救護院に舞い戻ってきた青年・籠(新井)。彼は冒涜の限りを尽くし、宗教を試す。動物への虐待。シスターへかける侮辱の言葉。そこに生があるかのように、確かめるかのように、彼は試す。そして一人で部屋のベッドに横たわり、ゲルマニウムラジオから聞こえてくる澄んだ神の囁きに耳を傾ける。すべてを許容することができない生への怒りを抑えるかのように。 |
[コメント] |
新井浩文氏の初主演となった本作品は、新井氏と以前より交流がある大森立嗣の、第1回監督作品となる。そして初監督作品とは思えぬ映像の貫禄ぶりは、二人の信頼がもたらした影響も少なからずあるのだろう。 その絵画を思わせる終止一貫した映像は、観る者の心を痛いほど切りつける。この映画に広がる空気感、それは自分が今どこにいるのか確認させないのだ。山もそして見慣れた木々もない、そんな風景だ。そして新井氏の佇まいが、さらに観る人の心を揺さぶる。それはもはや演技の枠を超えている。ただそこに存在する、そのリアルさが彼自身だ。大森監督も本作品を製作するにあたり、こんなことを話している。「誰も生そのものを、意味によって理解できない」。 新井浩文というリアル、この存在により『ゲルマニウムの夜』という映画の生は、作り物ではない意味を超えたものになったのだろう。(ひなた) |
赤目四十八瀧心中未遂 |
2003年/赤目製作所製作・配給/2時間39分 |
製作・監督=荒戸源次郎 原作=車谷長吉 撮影=笠松則通 美術=金勝浩一 音楽=千野秀一 出演=大西滝次郎、寺島しのぶ、新井浩文、大楠道代、内田裕也 |
[ストーリー] |
最底辺の町・尼崎(アマ)へ流れ着いた生島与一(大西)は、アパートの一室で臓物さばきに日を送る中、綾(寺島)と出会う。二人は赤目四十八瀧へと心中の道行を辿っていく。車谷長吉の直木賞受賞作を荒戸源次郎が映画化。映画賞30冠超を独占した本作は国内外でも高く評価された。 |
[コメント] |
新井浩文氏の得意技とする「その存在するリアルさ」を脇役ながら強く感じた。首に刻まれたバーコードのタトゥー(他の登場人物はみな刺青)は「今」のリアルを生き抜く為のパスポートなのかもしれない。 寺島しのぶ、大楠道代、内田裕也など色とりどりの強烈な個性が混在し、また、しがらみの多い古き良き日本の原風景、まさに「アマ」を体感させてくれる。その人選とそれらを引き出した監督・荒戸源次郎氏の力量に感服した。そして、赤目四十八瀧の景色の美しさに桃源郷を見るような思いであった。 私はいつも現実に嫌な事があると空想の世界に羽ばたっていくのであるが、その景色はまさに赤目四十八瀧のように美しい。流れ落ちるその瀧の透明な水で嫌なことをすべて洗い流してもらえるような感覚になる。綾もそんな現実=アマを羽ばたき、桃源郷=赤目四十八瀧に身を委ねたかったのではなかったのだろうか、と感じた。 (愛) |
●ゲストの紹介 |
新井 浩文(あらい ひろふみ)氏 1979年、青森県生まれ。2001年『GO』(行定勲監督)でデビュー。『青い春』(02年・豊田利晃監督)では新人離れした存在感で高崎映画祭最優秀新人男優賞を受賞。以降『さよなら、クロ』(03年・松岡錠司監督)、『ジョゼと虎と魚たち』(03年・犬童一心監督)、『赤目四十八瀧心中未遂』(03年・荒戸源次郎監督)など次々話題作に出演。『血と骨』(04年・崔洋一監督)では原作者・梁石日を演じ、俳優としての評価を確実なものとした。今後、その活動が最も注目される若手俳優の一人である。 |
●監督紹介 |
大森 立嗣(おおもり たつじ)氏 父親は舞踏家で「大駱駝艦」の創始者である麿赤兒、弟は俳優の大森南朋。2001年、自らプロデュースし、出演した『波』(奥原浩志監督)で、第31回ロッテルダム映画祭最優秀アジア映画賞“NETPAC AWARD”を受賞。03年、『赤目四十八瀧心中未遂』(荒戸源次郎監督)の製作に携わる。満を持して05年、『ゲルマニウムの夜』で監督デビューを果たす。初監督にして堂々とした作風と独自の感性が注目を集め、国内外で高い評価を得ている。 |
荒戸 源次郎(あらと げんじろう)氏 1980年『ツィゴイネルワイゼン』(鈴木清順監督)を製作。映画と映画館を同時に立ち上げて上映するという“産直映画方式”を提唱。エアドーム型映画館で長期興行を成功させる。89年『どついたるねん』で監督阪本順治と俳優赤井英和のデビューを手掛け、再び映画界に旋風を起こす。その後も清順監督『陽炎座』(81年)『夢二』(91年)、阪本監督『鉄拳』(90年)『王手』(91年)『トカレフ』(94年)、また坂東玉三郎監督『外科室』(92年)を製作。2003年『赤目四十八瀧心中未遂』を監督。主演大西滝次郎、寺島しのぶの映画デビューを手掛け、30冠超の映画賞を受賞。更に14ヶ月のロングランという快挙を成し遂げる。05年、大森立嗣監督『ゲルマニウムの夜』及び、東京国立博物館内に建てられた特設映画館・一角座の製作総指揮を執る。 |