TAMA映画賞2009授賞式

11月28日 (パルテノン多摩小ホール)

●Time Table●
10:30−11:55
12:40−14:40
15:00−16:30
16:50−18:57
ハルフウェイ
ウルトラミラクルラブストーリー
授賞式
ディア・ドクター

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ハルフウェイ
2009年/2009「ハルフウェイ」製作委員会製作/シネカノン配給/1時間25分
 
監督・原作・脚本=北川悦吏子
プロデュース=岩井俊二、小林武史
音楽=小林武史
主題歌=Salyu
出演=北乃きい、岡田将生、溝端淳平、仲里依紗、成宮寛貴、白石美帆、大沢たかお
 
ハルフウェイ
© 2009「ハルフウェイ」製作委員会
 
[ストーリー]
 保健室でのふとした出来事から、ヒロ(北乃)は思いを寄せていたとシュウ(岡田)と付き合うことになった。それは、高校生活最後に起きた奇跡。しかし、ふたりの行く末には卒業が待っていた。そして、地元の北海道の大学に進学するヒロに対し、シュウはあることを言い出せないでいた。実は、東京の大学に進学するつもりだったのだ……。
 
[コメント]
 男の僕から正直に言うと、終始ヒロのことが“うざい”と思えて仕方なかった。こちらの悩みも知らずに感情的になり、笑ったと思ったら怒り、そして泣き出し、言うことがコロコロ変わる。何故こんな女に告白したかと疑いたくなってしまう。だが、シュウの言葉「俺ってお前のことやっぱ好きなんだなぁって思ったよ」に行き着く。そう、恋なんて思った以上に中身はロマンティックじゃない。意見の違いでいつもぶつかる。喧嘩する。どちらかが妥協する。疲れ果ててしまったりもする。それでも、「好き」だから離れようと思わず、守りたいと思う。結果的にそれでロマンティックな恋となるのだ。恋人を後ろから抱きしめたあの日を思い出し、映画を観ながらこそばゆい気持ちになった。
 ごく自然な演出で生み出された映画だからこそ、我々はあの頃の気持ちに、戻れるのであろう。淡い青春の心を戻してくれた北川監督に、感謝。(瑞)

ウルトラミラクルラブストーリー
2009年/「ウルトラミラクルラブストーリー」製作委員会製作/リトルモア配給/2時間
 
監督・脚本=横浜聡子
プロデューサー=中野朝子、土井智生
撮影=近藤龍人
音楽=大友良英
出演=松山ケンイチ、麻生久美子、ノゾエ征爾、ARATA、渡辺美佐子、原田芳雄、藤田弓子
 
ウルトラミラクルラブストーリー
© 2009「ウルトラミラクルラブストーリー」製作委員会
 
[ストーリー]
 青森で農業を営みながら一人で暮らす陽人(松山)は、やることなすことすべてが常識外れな変わり者。ある日陽人は、東京からやって来た保育士の町子先生(麻生)に一目ぼれをする。町子先生が青森に来たのはカミサマと呼ばれる占い師に会うため。それは、事故で死んだ元カレの首がまだ見つかっていないから。町子先生と“両思い”になるため、陽人は常識を超えた奇跡のような出来事を次々に巻き起こす。
 
[コメント]
 心に寄り添うようなシーンもあれば、想像超えた展開に突き放されたり。そのギャップがどこかに引っかかってもう一度観れば何か分かるんじゃないかと、また見直したくなる。 ただ、何度観ても衝撃のラストに、あっさり置いてけぼりにされてしまう。(今のは何だったの?)と戸惑っていると、すぐさまエンドロールと同時に100sの映画主題歌が流れ始める。中村一義の甲高い声で何度もリフレインされる「♪そぉりゃそおだ!」のフレーズ。その歌を聴いているうちに、「うん! そうか、そうなのか!」と思わず納得させられてしまうのは、主演の松山ケンイチ、麻生久美子から幼稚園児に至るまで、すべての登場人物が魅力的に描かれているから。観終わっても数日はこの映画のことが頭から離れない。思い返しているうちに、「いや、でもおかしいな」という気になり、もう一度観てしまう。こんなに何度も観たくなる映画は、最近珍しいと思う。漫画や小説の映画化が全盛の時代に、これだけオリジナリティの強い作品で商業映画デビューを果たし、またその作品がこれだけ強く観客の心を掴むなんて、素晴らしすぎる!! そのうち、「ウルトラミラクルラブストーリーを観て映画監督を志しました」、なんて言う映画監督が出てくる気がする。(葉)

ディア・ドクター
2008年/「Dear Doctor」製作委員会製作/エンジンフイルム+アスミック・エース配給/2時間7分
 
監督・原作・脚本=西川美和
企画=安田匡裕
プロデューサー=加藤悦弘
撮影=柳島克己
音楽=モアリズム
出演=笑福亭鶴瓶、瑛太、余貴美子、井川遥、香川照之、八千草薫
 
ディア・ドクター
© 2009『Dear Doctor』製作委員会
 
[ストーリー]
 研修医の相馬(瑛太)が赴任した山間の小さな村。その村で、唯一の医師であり村人たちから全幅の信頼を得ていた伊野(鶴瓶)が、突然謎の失踪を遂げる。事件の少し前、伊野は未亡人のかづ子(八千草)を診療していたのだが……。警察による捜査が進むにつれ、伊野が隠してきたある嘘が浮かび上がってくる。
 
[コメント]
 観終わったあとのこの感覚は何なのだろうか。笑福亭鶴瓶演じる伊野の、人のよさそうな屈託のない笑顔を思い出し泣きそうになってしまった。
 人間の複雑な内面をえぐり出すことに定評がある西川美和監督の長編3作目。主演は誰もが知っている大芸人、笑福亭鶴瓶。まずそのはまり具合にびっくりした。スクリーンの中にいたのは伊野という秘密を抱えた医師以外の何者でもなく、嘘と良心に揺れる心を見事に演じきっている。また脇を固める俳優も屈指の演技派揃いで、物語に奥行きをもたらし、観客の感情を揺さぶり続けている。
 「嘘とは、罪とは何なのか。善なのか悪なのか」「人はどのように死にたいか、また身近な人をどのように死なせたいか」
 余計な説明は一切なく、明確な答えも示されない。答えはすべて観客に委ねられ、悲しいような可笑しいような不思議な余韻だけが残る。だからこそ観終わったあと、誰かと無性に話がしたくなった。あなたならどんな答えをだしますか。(菜)

●受賞者の紹介
最優秀作品賞:西川 美和監督(Nishikawa Miwa)

 1974年、広島県生まれ。大学在学中に是枝裕和監督の『ワンダフルライフ』(99年)にスタッフとして参加。2002年、『蛇イチゴ』で監督デビュー。数々の国内映画賞の新人賞を獲得。03年、テレビ作品「いま裸にしたい男達/宮迫が笑わなくなった日」でATP賞・ドキュメンタリー部門優秀賞を受賞。06年、『ゆれる』が異例のロングランを記録。国内主要映画賞を総なめにし、カンヌ国際映画祭「監督週間」では日本からの唯一の出品作となり高い評価を得た。『ディア・ドクター』が3作目の長編となる。
 
最優秀作品賞:横浜 聡子監督(Yokohama Satoko)

 1978年生まれ、青森県出身。大学卒業後、OLを経て、映画美学校第6期フィクションコース初等科に入学。卒業制作の短編『ちえみちゃんとこっくんぱっちょ』が2006年第2回CO2オープンコンペ部門最優秀賞受賞。CO2からの助成金を元に長編1作目『ジャーマン+雨』を自主制作。07年、同作で第3回CO2シネアスト大阪市長賞を受賞。自主制作映画としては異例の全国劇場公開され、同作にて2007年度日本映画監督協会新人賞受賞。『ウルトラミラクルラブストーリー』が商業映画デビュー作となる。
 
最優秀新進監督賞:深川 栄洋監督(Fukagawa Yoshihiro)

 1976年生まれ、千葉県出身。専門学校東京ビジュアルアーツ在学中から自主制作映画を監督。卒業後に『ジャイアントナキムシ』(99年)、『自転車とハイヒール』(2000年)(第2回 TAMA NEW WAVEフィルム部門グランプリを受賞)がそれぞれPFFアワードで入選し、注目を集める。『自転少年』(04年)で商業監督デビュー、『狼少女』(05年)で劇場用長編映画監督デビューを果たし、『60歳のラブレター』(09年)でメジャー監督デビューとなる。本映画祭でも上映されるオムニバス映画『非女子図鑑』(09年)では、「B(ビー)」という短編で参加している。
 
最優秀新進監督賞:北川 悦吏子監督(Kitagawa Eriko)

 1961年生まれ、岐阜県出身。テレビドラマの企画の仕事を経て、「素顔のままで」(92年)で連続ドラマデビュー。「あすなろ白書」(93年)「愛していると言ってくれ」(95年)「ロングバケーション」(96年)「ビューティフルライフ」(2000年)「オレンジデイズ」(04年)「たったひとつの恋」(06年)など話題作を数多く手掛け、「ビューティフルライフ」(00年)では向田邦子賞、橋田須賀子賞を受賞。脚本の他にエッセイ、作詞などでも人気を集める。
 
最優秀新進男優賞:高良 健吾(Kora Kengo)

 1987年生まれ、熊本県出身。2006年『ハリヨの夏』(中村真夕監督)で映画デビュー。以降『サッド ヴァケイション』(07年・青山真治監督)、『M』(07年、廣木隆一監督)、『ひゃくはち』(08年、森義隆監督)、『蛇にピアス』(08年、蜷川幸雄監督)、『禅 ZEN』(09年、高橋伴明監督)など、作家性の高い監督作品に立て続けに出演。鮮烈な印象を残し、注目をあびた『M』では第19回東京国際映画祭「日本映画・ある視点」特別賞を受賞。本年はこのほか、『ハゲタカ』『蟹工船』『南極料理人』が公開された。
 
最優秀新進男優賞:渡辺 大知(黒猫チェルシー)(Watanabe Daichi(kuroneko chelsea))

 1990年生まれ、兵庫県出身。オーディションで、2000人を超える候補者のなかから『色即ぜねれいしょん』の主役を射止めた2009年注目度急上昇中の文科系大型新人。07年に友人たちとバンド“黒猫チェルシー”を結成。地元神戸を中心にライブ活動を開始する。08年に日本テレビの深夜音楽番組「音燃え!」に地元ライブハウスの推薦で出演し、圧倒的にエネルギッシュで予測不能なライブパフォーマンスで大注目される。09年春に活動の拠点を東京に移し「黒猫チェルシー」をリリース。12月2日には2ndミニアルバム「All de Fashion」を発売。http://kuronekochelsea.jp/
 
最優秀新進女優賞:満島 ひかり(Mitsushima Hikari)

 1985年生まれ、沖縄県出身。97年『モスラ2 海底の大決戦』でデビュー。以後、『デスノート 前・後編』(2006年)、『エクステ』(07年)『プライド』(09年)『クヒオ大佐』(09年)など数多くの話題作に出演。『愛のむきだし』(09年)では主演を演じ、多くの映画祭から高い評価を受けた。10年は『食堂かたつむり』『カケラ』『川の底からこんにちは』など公開待機作品も多数。今、注目の若手女優である。
 
最優秀新進女優賞:金澤 美穂(Kanazawa Miho)

 1994年生まれ、神奈川県出身。2006年、エイベックスのオーディションに11歳で合格。07年、TBS系愛の劇場「愛のうた!」で女優デビュー。08年『容疑者Xの献身』で映画デビュー。09年、『はじめての家出』が初主演作。続いて映画『ソロコンテスト』(09年)に主演、『60歳のラブレター』(09年)、TVドラマ「チーム・バチスタの栄光」(09年)に出演など、TV・映画での今後の活躍がおおいに期待される若手女優である。
 
特別賞:八千草 薫(Yachigusa Kaoru)

 大阪府出身。宝塚歌劇団で活躍後、『宝塚夫人』(1951年)でスクリーンデビュー。アカデミー外国語映画賞名誉賞を獲得した『宮本武蔵』(54年)など多くの巨匠たちのもとで名作に出演し、日本映画黄金期を支える。60年代からはテレビドラマにも積極的に出演。山田太一脚本「岸辺のアルバム」(77年)の主婦役でテレビ大賞主演女優賞を受賞した。近年の映画出演作に『阿修羅のごとく』(2003年)『しゃべれども しゃべれども』(07年)『ガマの油』(08年)『引き出しの中のラブレター』(09年)など。
 
特別賞:木村 大作監督(Kimura Daisaku)

 1939年生まれ、東京都出身。58年東宝撮影部にキャメラ助手として入社。黒澤明監督の組に所属。73年『野獣狩り』で初めての撮影監督。代表作は『八甲田山』『復活の日』『居酒屋兆治』『華の乱』『あ・うん』『誘拐』『ホタル』『赤い月』『憑神』など。『劔岳 点の記』は初監督作品。監督の原点は東宝に入社して初めて参加した黒澤明監督の『隠し砦の三悪人』の撮影現場で、今も黒澤明監督を映画の師と思っている。

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