第1部 特選映画上映(洋画篇)
第2部 特選映画上映(日本映画篇)

11月20日 (パルテノン多摩小ホール)

●Time Table●
第1部
11:00−11:10
11:10−12:54
13:20−15:09
第2部
16:30−18:26
18:40−20:04
20:05−20:45

オープニング
ボローニャの夕暮れ
プレシャス(R15+)

トロッコ
キャタピラー(R15+)
ティーチ・イン ゲスト:若松孝二監督、寺島しのぶ氏

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第1部 オープニング/TCF特選映画上映(洋画篇)

ボローニャの夕暮れ
Il Papa Di Giovanna
2008年/イタリア/アルシネテラン配給/1時間44分
 
監督・脚本・原案=プーピ・アヴァーティ
撮影=パスクワーレ・ラキーニ
美術=ジュリアーノ・パンヌティ
音楽=リズ・オルトラーニ
出演=シルヴィオ・オルランド、フランチェスカ・ネリ、アルバ・ロルヴァケル、エツィオ・グレッジョ
 
ボローニャの夕暮れ
© 2008 DUEA FILM - MEDUSA FILM
 
[ストーリー]
 1938年のイタリア・ボローニャ。17歳の高校生・ジョヴァンナ(A・ロルヴァケル)は自分の容姿に自信が持てず、美しい母親に憧れと劣等感を抱いていた。彼女を溺愛する美術教師の父・ミケーレ(S・オルランド)は、ジョヴァンナの力になろうと努力する。そんななか、ジョヴァンナの同級生が他殺体で発見される。
 
[コメント]
 第2次世界大戦前夜のイタリア・ボローニャを舞台に、ファシスト政権下の時代に生きたあるひとつの家庭の崩壊と再生を描いたのは、ヨーロッパで高く評価されている名匠プーピ監督。ボローニャは自身の故郷でもあり、この作品以外にもボローニャを舞台にした作品が多い。
 原題は『ジョヴァンナの父』。いわゆる家族ものを描いた作品では、母の愛がよくクローズアップされるが、この作品で目にするのは、愚かなほど一途に娘を愛し守り抜こうとする父の愛だ。その父を見事に演じきり、2008年ヴェネチア国際映画祭で主演男優賞を受賞したのは、ベテラン俳優シルヴィオ・オルランド。
 第2次世界大戦の影を巧みに混ぜこみながら、激動の時代を生きぬいたひとつの家族を通じて、ベテラン監督は人間の愚かさ・強さを私たちに投げかける。予定調和どおりではないストーリーの結末は、あなたを新鮮な気持ちにさせるだろう。たとえ傷ついても、強くしたたかに生きていくのが普通の人々なのだ。(塚)

プレシャス
Precious: based on the novel "Push" by Sapphire
2009年/アメリカ/ファントム・フィルム配給/1時間49分
 
監督・製作=リー・ダニエルズ
原作=サファイア
撮影監督=アンドリュー・ダン
編集=ジョー・クロッツ
美術=ロシェル・バーリナー
出演=ガボレイ・シディベ、モニーク、ポーラ・パットン、マライア・キャリー、シェリー・シェパード、レニー・クラヴィッツ
 
プレシャス
© PUSH PICTURES, LLC
 
[ストーリー]
 1987年のハーレム。理想とかけ離れた過酷な現実。クレアリース"プレシャス"ジョーンズ(G・シディベ)は、16歳にして父の性的虐待により2人目の子どもを身ごもり、学校を退学させられた。母メアリー(モニーク)からも精神的・肉体的な虐待を受けていた彼女は、フリースクールに通い始めたことをきっかけに、学ぶ喜び、そして人を愛し愛される喜びを知り、最悪の状況から抜け出そうとする。
 
[コメント]
 教室の後方で、静かに授業の時間を過ごすプレシャス。決して積極的に発言することはなく、頭のなかで理想とする自分を描き続けている。彼女は、とても過酷な現実のなかにいるが、それを認めまいとする姿勢で、でも、現実を生きている。
 原作者のサファイアは、実際にニューヨークのハーレムでソーシャルワーカーや教師をした経験を持つ女性詩人。本作でも貧困家庭に暮らす黒人の子どもたちが抱える困難な状況などが映しだされる。
 読み書きのできなかったプレシャスが、自己を表現する喜びを知り、周囲とのかかわりのなかで夢を語る姿に勇気をもらった。そしてそれが、自分で人生を切り拓くという覚悟についても教えてくれる。愛されたいということと、愛するということの関係性について考えてみたところで僕は答えを出せないが、母メアリーの感情の吐露に引き込まれる自分もいた。いったいどうしたらいいものか。でも、前を向いていたいと思った。(渉)

第2部 オープニング/TCF特選映画上映(日本映画篇)

トロッコ
2009年/トロッコLLP製作/ビターズ・エンド配給/1時間56分
 
監督・脚本=川口浩史
撮影=リー・ピンビン
音楽=川井郁子
出演=尾野真千子、原田賢人、大前喬一、ホン・リウ、チャン・ハン、ブライアン・チャン
 
トロッコ
© 2009 TOROCCO LLP
 
[ストーリー]
 東京に住む矢野敦<あつし・8歳>(原田)と凱<とき・6歳>(大前)の兄弟は、台湾人の父と日本人の母(尾野)のもと、何の不自由もなく生まれ育った現代っ子だった。大好きな父が体を壊し、急死してしまうまではーー「いつか父さんの故郷を見に、皆で一緒に台湾に行こう」ーー。図らずも敦と凱の初めての台湾訪問は、母に連れられて、父の遺灰をその故郷に届ける旅となった。
 
[コメント]
 芥川龍之介の同名タイトル短編小説にインスピレーションを受けた川口監督が、時代・舞台設定(原作は大正時代の伊豆が舞台)を現代の台湾に置き換えて、色鮮やかによみがえらせた。
 日本語を話す優しいおじいさん、残された子供たちとのこれからの人生に不安を抱いている若い母親、弟のように素直に母に心のうちをさらけだせない兄ーー家族を亡くした悲しみを抱えたそれぞれが再生していく姿を、「どこか懐かしさを感じさせる」"台湾"の美しい田舎を風景に静かに描く。「トロッコ」乗車の短い大冒険の旅が、みるみる少年を成長させていくのを目のあたりにした時、かつて子供だったあなた自身を思い出すはずだ。
 日本・台湾の優れたキャスト&スタッフが、この監督デビュー作品に集結した。母親役に『殯の森』尾野真千子、祖父役にホウ・シャオシェン作品で知られるホン・リウ、撮影監督に『空気人形』『ノルウェイの森』など近年国際的に活躍しているリー・ピンビン。台北金馬奨映画祭 正式招待作品、モントリオール世界映画祭・新人コンペティション部門正式出品。(塚)

キャタピラー
2010年/若松プロダクション製作/若松プロダクション、スコーレ配給/1時間24分
 
製作・監督=若松孝二
脚本=黒沢久子、出口出
撮影=辻智彦、戸田義久
編集=掛須秀一
出演=寺島しのぶ、大西信満、吉澤健、粕谷佳五、増田恵美、河原さぶ、石川真希、飯島大介、地曳豪、ARATA、篠原勝之
 
キャタピラー
© 2010 若松プロダクション All Rights Reserved
 
[ストーリー]
 第ニ次世界大戦中の日本。戦場から戻ったシゲ子の夫・久蔵(大西)の顔は無残に焼けただれ、四肢を失っていた。村に戻った久蔵は、多くの勲章を得たことで「生ける軍神」として崇められる。そしてシゲ子(寺島)は戸惑いながらも久蔵の尽きることのない食欲と性欲を埋めていく。
 
[コメント]
 戦争は体験したそれぞれが、さまざまな記憶やトラウマに苦しみ、その人間関係に影を落とす。戦場から戻り、姿かたちの変わってしまった夫に対し戸惑うシゲ子。そんな妻の気持ちを知ってか知らずか、生きる性がむき出しになっていく久蔵。丸裸にされたそれぞれの思いをよそに、戦争は終わるが、人間は置いてきぼりだ。
 戦後65年が経過し、自分をはじめとした戦後生まれの世代にとって第二次世界大戦は、教科書や歴史書のなかのことだけになってきている。そんななか、この作品が第60回ベルリン国際映画祭で上映され、寺島しのぶ氏が銀熊賞最優秀女優賞を受賞したことで、多くの人が改めて戦争について考えるきっかけとなったのではないだろうか。
 悲惨な記憶を風化させない、この映画がそんな懸け橋になったことに、大きな拍手を送りたい。(蛭)

●ゲストの紹介
若松 孝二監督(Wakamatsu Koji)

 若松孝二監督のプロフィールは、「こちら」をご覧ください。
 
寺島 しのぶ氏(Terajima Shinobu)

 寺島しのぶ氏のプロフィールは、「こちら」をご覧ください。

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