オープニング企画:フォーラム推薦作品

11月20日 「オープニング企画:フォーラム推薦作品」 (やまばとホール)

外科室
1992年/テレビ朝日、松竹、荒戸源次郎事務所/50分
 
監督=坂東玉三郎
原作=泉鏡花
脚本=橋本裕志、吉村元希、坂東玉三郎
撮影=坂本典隆
出演=吉永小百合、加藤雅也、中井貴一
 
[コメント]
 麻酔を拒否し手術を受ける伯爵夫人と若き医学士との心の奥深く刻み込まれた愛を描く。
 明治の階級社会の中で弱いもの、はかないもの、虐げられたものへの共感をもつ泉鏡花の観念的で極端な表現となっている「外科室」の映像化である。
 それは一瞬の出会いであった。言葉を交わさぬまま池をはさんで見つめ合う二人、咲き誇るつつじの花越しにそっと覗く高峰。9年前の情景を描く演出は観客を静かに引き込んでいく。若葉ゆれる植物園と外科室の二つの場面で構成されている。
 再会の外科室にくり広げられる、あの純化された精神世界の中で秘めた愛をつらぬく貴船伯爵夫人。演ずる吉永小百合は妖しく激しく美しい。思わず重ね合わせるその光景に潜在する自分を発見し、たじろぎをおぼえるのかも知れない。玉三郎の世界を演出したこの作品は、ラフマニノフの曲と共にあくまでも美しく流れていく凝縮された“50分”。 (野)

JFK
1992年/アメリカ・ワーナーブラザース/3時間8分
 
監督・脚本=オリバー・ストーン
原作=ジム・ギャリソン
撮影=ザカリー・スカラー
出演=ケビン・コスナー、シシー・スぺイセク
 
[コメント]
 この映画は、1963年11月に、テキサス州グラスで起きたケネディ大統領暗殺事件が発端となり、その後に展開する様々な“謎”に追っています。迫ってはいても決して事実と言いきれるものではありません。この“謎”に関しては、あまりに問騒が大きすぎる為に、いったいどこまでが真実で、どこまでがカモフラージュの情報であるのかわからなくなってしまいます。しかしストーン監督は、それに憶することなく堂々と描いている為、見ている方としては、これが真実ではないかと錯覚してしまう程、説得力があります。
 原作は、この映画の主人公のモデルとなった、ジム・ギャリソン検事(当時)。その後弁護士。ストーリーは、ケビン・コスナー演ずるギャリソン検事の行動を通して描かれています。手際良い演出とフィルムの編集により、3時間以上の上映時間も退屈を感じません。正義と秩序のバランス、政府の策略、その他の様々な思惑が交錯し、我々に強烈なメッセージが投げかけられる映画です。見終って思うことは、この映画が真実であるかどうかというよりも、真実を探究することの大切さと、勇気を強く感じずにはいられません。 (菅)