日本のインディペンデント映画

11月23日 「日本のインディペンデント映画」 (特別会場)

無敵のハンディキャップ
1993年/ヘッドオフィス、ガロシネマ、『無敵のハンディキャップ』製作実行委員会/16mm/108分
 
監督=天願大介
プロデューサー=岡見圭
製作協力=中山潤
撮影=田端仁憲、本吉修、岡田初彦、高野公男、ほか
編集=阿部浩美
音楽=めいなco.
出演=北島行徳、サンポ慎太郎、獣神マグナム浪貝
 
[ストーリー]
 恋する為に戦った。まっすぐで純粋な思いで……。そのストレートな行為はあくまでふたりの戦いだった。やがてその戦いは自分を表現する為のものへ位置を変えていった。そのストレートな行為に周りの皆もいちもく置く。そしてルールを作った。それはもうふたりだけの戦いではなく周りの皆に波及していく。
 
[コメント]
 何故プロレスという格闘技が多くの人の心を熱くさせ、レスラーたちの燃え尽きる程の思いは一体何がそうさせているのであろう。そのエネルギーの核となるもの一その核からうず巻状に広がる人達の熱−その図式がきちんと表われている映画『無敵のハンディキャップ』。撮る側と撮られる側の意識を越えて描き出される言葉はとても素直で、自然に心に入る。東京・世田谷のボランティア集団<ドックレックス>が始めた障害者プロレスの中に天願大介監督は人と人の心がぶつかり合いが産み出す、純粋さと熱きエネルギーを感じ、スクリーンに生かしたのだ。 (櫻)

手紙
1992年/製作=藤村太、和田尚也/16mm/60分
 
監督・脚本=横山健二
助監督=谷口勇司、佐藤徹、野口陽一、杉本佳彦
音楽=鈴川友也、中本徳朗
録音=鈴木啓三
出演=和田尚也、服部明子、横山典枝、佐山洋子
 
[ストーリー]
 大学生の「俺」のもとに住所不明、差出人不明のラブレターが届いたことから日常を探偵するはめになる「俺」。ふとした思いつきで始めたものの半年かかりやっと差出人の友人という女の子までたどり着くのだが…。
 
[コメント]
 自分自身を見つめる、理解すること。それが個人的なものから個性的なものへと変貌するための道具ではないだろうか。作者自身の体験をもとに語られる物語は超個人的な物語になりやすい。この作品は監督自身が自ら体験したエピソードをもとに製作されているため、超個人的映画となる要素を多く含んでいる。しかし、この作品は超個人的なことを追求し、より個人的なことを描くことにより逆に個人的な領域を越え、広がりのある世界へと導かれ、超個性的娯楽映画として仕上がっている。それは個人的から個性的への変貌である。また、横山健二監督はこの作品を「起我侭な個人的私小説娯楽大作映画」と語っている。 (櫻)

見えない
1985年/製作=小沢毅/16mm/58分
 
監督・脚本=利重剛
撮影=阿部剛
音楽=大塚ガリバー
編集=田中浩司
出演=佐野貢司、小林朝夫、利重剛
 
[ストーリー]
 “映画を創りたいと思っているのに何故、一向に進まないのか”と悩んでいた利重剛は、東京で働く新聞輸送トラック運転手の青年と知り合う。その彼の日常を自らインタビュアーとなり追ってゆく。だが何も進展のないことに再び悩み、彼に何かをさせようとアプローチを始めるのだが…。
 
[コメント]
 日々すれ違っていく生活に疲れ、その“憂鬱”に負けてゆきそうな日常。その中に含まれている“何か”を引っ張り出し、仕掛ける…それが利重剛の作品群の魅力ではないであろうか。この作品は彼の血肉から生まれた日常の断片であり、普遍への静かな抵抗であり、核なる部分への挑戦であると共に、自らの心の芯に響くように切々と語られる。監督自身がインタビュアーとなり、切り取られる“現実”は表現者としての利重剛と物事を見据えようとする彼の視点の鋭さを見事にクロスさせた彼自身のドキュメントでもあるように思える。見えない何かを捜していく映画『見えない』利重映画の原点であろう。 (櫻)