英国万歳 VOL.2

11月28日 「英国万歳 VOL.2」 (やまばとホール)

●Time Table●
12:00−12:10
12:10−13:43
14:10−15:57
16:20−17:47
オープニング
フル・モンティ
ブラス!
キャリア・ガールズ

フル・モンティ
THE FULL MONTY
1997年/イギリス/レッド・ウェイヴ・フィルムズ/20世紀FOX配給/1時間33分
 
監督=ピーター・カッタネオ
脚本=サイモン・ボーフォイ
撮影=ジョン・デ・ボーマン B.S.C
音楽=アン・ダドリー
美術=マックス・ゴットリープ
出演=ロバート・カーライル、トム・ウィルキンソン、マーク・アディ
 
フル・モンティ
 
[ストーリー]
 かつて鉄鋼業で栄えたイギリス北部の工業都市シェフィールド。今では工場閉鎖で職を失った男たちで溢れている。新しい職にありつけず、どん底状態の男たちが苦肉の策で思いついたのが、自分の肉体で稼ぐこと。 子どもの養育費さえ払えないバツイチのガズ(R・カーライル)。ガズの親友で太り過ぎのデイブ(M・アディ)。自殺未遂の気弱なロンパー。失業を妻に言い出せない元上司のジェラルド。ホモセクシャルのガイにヤク中のホース。諸々の事情を抱えた6人の男が結束し、ストリップ・ショーを開くまでを描いた、ユーモアたっぷりのハートフル・コメディ。デブでジジイでタレパイのド素人軍団の最後の切り札は、フル・モンティ(スッポンポン)になること。
 果してお客は集まるのか? 果してホントにフル・モンティになるのか?
 
[コメント]
 男の裸が娯楽になった。昔から貧しさで身売りする女の話には、涙や同情がつきものだった。ところがこの映画、涙を笑いに、同情を称賛にと変えてしまった。人生の一番困難な時に希望やユーモアを失わずにいること。シチュエーションは悲劇で、表現は喜劇なこの作品、悲惨な現実がショーを通して生きる希望へと転化している。恥や外聞を捨てショーに挑む男たち。いや、もしかしたら素っ裸になることが、自尊心を取り戻す一つのプロセスなのかもしれない。
 それにしても女は強い。不況なんてどこ吹く風と、男の裸にお金を払う。ところで肝心のフル・モンティのシーン、バックからしか見せないなんてちょっとズルイ。私だってお金ちゃんと払って観てるんだぞ。 (志穂)

ブラス!
BRASSED OFF
1997年/イギリス/チャネル4/シネカノン配給/1時間47分
 
監督・脚本=マーク・ハーマン
撮影=アンディ・コリンズ
音楽=トレヴァー・ジョーンズ
美術=ドン・テイラー
編集=マイケル・エリス・エース
出演=ピート・ポスルスウェイト、ユアン・マクレガー、タラ・フィッツジェラルド
 
ブラス!
 
[ストーリー]
 炭坑閉鎖の波が押し寄せた街、イギリス・グレムリー。半ば生きる望みさえ失いかけていた人々のなかに、炭坑夫仲間で結成されたブラスバンド、グレムリー・コリアリー・バンドのメンバーもいた。彼らも失業に対する不安や苛立ちを募らせ、今後のバンド活動への意思も失いかけていた。しかしその彼らに夢と希望を与えてくれたのは、やはり音楽だった。彼らは街の、そして自らのプライドを賭けて、全英選手権に出場し、そして決勝が開かれるロイヤル・アルバートホールを目指す。
 
[コメント]
 現在の日本も映画でのイギリスのように不況の波の真っ只中にいます。過去最高の失業率、雇用の低下、大手銀行や証券会社の倒産……明るい兆しすら感じられない状況のなかを私たちは漂流しています。政府としても経済の安定、景気回復が早急に求められている課題です。しかしそれだけが人の心を救えると思ったらとんでもない! です。日本の文化や芸術に対する軽視ぶりやレベルの低さといったら世界広しと言え他にないんじゃないですか? 人の心を救うのはお金だけじゃない、音楽も人の心を救うのです。『ブラス!』はそれを解りやすく教えてくれる映画です。そして彼らの状況は我が映画フォーラムそのものです。音楽と映画の違いこそあれ、心に響く感動を伝えたい気持ちは同じです。厳しい経済事情のなかでも皆さんの身近で多くの映画を観てもらいたい、そして何かを感じてもらえれば、私たちはこの思いで8年間を過ごしてきました。観客の皆さんが満足して会場を後にしてくださる姿、表情が私たちの救いです。これからも是非応援してください。最終日にお客さまを無事に見送った時、私たちの「威風堂々」が流れるのです。 (亜)

キャリア・ガールズ
CAREER GIRLS
1997年/イギリス/シン・マン/フランス映画社配給/1時間27分
 
監督・脚本=マイク・リー
撮影=ディック・ポープ
音楽=マリアンヌ・ジャン=バチスト、トニー・レミー、ザ・キュアー
美術=イヴ・スチュアート
編集=ロビン・セールズ
出演=カトリン・カートリッジ、リンダ・ステッドマン、ケイト・バイアーズ
 
キャリア・ガールズ
 
[ストーリー]
 ロンドンの大学で同期だったハンナ(K・カートリッジ)とアニー(L・ステッドマン)。文学専攻のハンナは勝ち気でボーイッシュで攻撃的。心理学専攻のアニーは懸命につっぱってはいるが、内気で引っ込み思案。そんな二人がエレガントで素敵な30才になって、卒業以来6年ぶりに週末の金曜日に再会する。現代を懸命に生きる二人にとってそれは、ちょっぴり悲しくて、懐かしい友情の日々をよみがえらせていくものだった……。
 
[コメント]
 有希ちゃんへ。元気にしていますか? 今頃あなたは何処で何をしているのでしょうか? 一緒に同じ時を過ごした高校時代の3年間がつい昨日のことのように思えます。朝から放課後遅くまで、本当に一緒にいていろいろなことをしたし、話しもしたし、泣いたり笑ったり喧嘩したり……。今思えばくだらないこと、簡単なこと、間違えてることでも、いつも真剣で一所懸命だったあの時の二人が、今とてもいとおしいのです。胸をキュッとつかまれたような痛みがやがて切なさに変わる。こんなことは今だから思えるのでしょう。
 ねぇ、あのこと覚えてる? 自殺の現場に遭遇した時のこと。学校が終わって寄り道した帰りに駅のホームで私たちの目の前を男の人が駆けてきて、線路に向かって体が宙にポーンと……人が死ぬことの衝撃を体で実感したのはあの時が最初でした。そんな私たちも今年で30歳。この日のことなどあの当時は想像もできなかったね。でも卒業してからお互いさまざまな経験を積んで、きっとそれなりに「いい大人」になってると思うよ。いつの日か必ず逢いましょうね。じゃあ、またね……。
 ——ハンナとアニーは決して特別な二人ではない。大人になれば誰でも共有できる出来事。この作品は余りに個人的で心に留めておきたいのです。きっとあなたも大切な友達に逢いたくなるはず。 (亜)