シェイクスピア ワールド

11月27日 「シェイクスピア ワールド」 (やまばとホール)

●Time Table●
11:00−11:10
11:10−13:10
13:40−14:15
14:30−16:33
16:50−19:04
オープニング
ロミオ&ジュリエット
講演 松岡和子氏(翻訳家、演劇評論家)
恋におちたシェイクスピア
十二夜

ロミオ&ジュリエット
ROMEO & JULIET
1996年/アメリカ/バズマーク・プロ製作/20世紀FOX配給/2時間
 
監督・脚色=バズ・ラーマン
原作=ウィリアム・シェイクスピア
脚色=クレイグ・ピアーズ
撮影=ドナルド・M・マカルパイン
音楽=ネリー・フーパー
美術=キャサリン・マーティン
編集=ジル・ビルコック
出演=レオナルド・ディカプリオ、クレア・デーンズ、ジョン・レグイザモ、ポール・ラッド、ジェシー・ブラッドフォード
 
[ストーリー]
 ヴェローナ・ビーチの町では、町の2大勢力、名門モンタギュー家と新興キャピレットの抗争が絶えなかった。モンタギュー家の一人息子ロミオ(L・ディカプリオ)は、仲間と潜り込んだキャピレット家のパーティーでキャピレット家の一人娘ジュリエット(C・デーンズ)に一目ぼれ。そして二人は恋におちる。しかし、密かに結婚式を挙げた二人に悲劇が待っていた。結婚式帰り両家の乱闘に巻き込まれたロミオが、ジュリエットの従兄のティボルトを殺し、追放処分を受けたのだ。二人のことを知るロレンス神父は二人を助けようとするのだが……。
 
[コメント]
 シェークスピアによって書かれたこの悲劇を現代的にアレンジすると、短剣が銃になり、タイツアロハシャツになる。神父様だって、背中に十字架のタトゥー(?)が入っている。そして、オープニングからスピード感ある映像の連続。しかし、ストーリーは原作に忠実だ。ジュリエットが「おー、ロミオよロミオ、あなたはなぜロミオなの」とつぶやく、超有名なバルコニーのシーンも原作どおりである。この映画を観る前は古典的な台詞と現代の舞台の組み合わせがアンバランスになると思っていたが、始まった途端この2つの絶妙なバランスに引き込まれてしまう。そして、最も有名な最も悲しいラブストーリーはこんなにスタイリッシュだったのかと考えさせられる。
 主演のレオナルド・ディカプリオとクレア・デーンズは、68年版の作品に比べて濃厚さが少ないけれど(オリビア・ハッセーに比べて細いから?)、その分とても鮮やかで好印象をもてる。脇役もロレンス神父役のピート・ポステルスウェトをはじめとして、それぞれに個性的で面白い。とくに、ティボルト役のジョン・レグザイモはとても強烈な印象を残すことは間違えなしだ。 (内)

恋におちたシェイクスピア
SHAKESPEARAE IN LOVE
1998年/アメリカ/ミラマックス・フィルム製作/UIP配給/2時間3分
 
監督=ジョン・マッデン
脚本=マーク・ノートン、トム・ストッパード
撮影=リチャード・グレートレックス
音楽=スティーヴン・ウォーベック
美術=マーティン・チャイルズ
編集=ディヴィッド・ギャンブル
出演=グウィネス・パルトロウ、ジョセフ・ファインズ、ジェフリー・ラッシュ、コリン・ファース、ベン・アフレック
 
[ストーリー]
 16世紀末のロンドン。エリザべス女王の元で民衆の芝居熱が高まっているなか、人気劇作家シェイクスピア(J・ファインズ)が、ドタバタ喜劇を書こうとしている。
 ところが、彼は大スランプ中で、筆が進まない。そんな折、ふと紛れ込んだ夜会で、美しい女性と出会う。その名はヴァイオラ(G・パルトロウ)。二人はたちまち恋におち、その愛は燃え盛るものとなる。そして交わす愛の言葉はそのままシェイクスピアの書く芝居のセリフとなって、書こうとしていた喜劇は皆が注目する一大恋愛劇と生まれ変わっていく。
 だが、ヴァイオラには婚約者がいたのだ。
 
[コメント]
 劇聖とまで呼ばれる大スト−リーテーラーであるシェイクスピアが主人公の物語だ。
 彼の書物は世界中で翻訳され、関連図書も山のようにある。ところが何故か今までシェイクスピア本人が題材となっている物語や映画はなかった。そのシェイクスピアがこの映画のなかで、華やかなエリザベス王朝を背景に、ポップな現代感覚で生き生きと蘇った。
 <偉大なシェイクスピアもスランプに陥ってカウンセラーを受けていた>という意外なオープニング。その上、単身赴任中の不倫の恋という展開。書けずにいる時、酒場でライバル作家に何を書いているのかと聞かれ、「海賊物だ」と答えると、そこにいる面々に渋い顔をされ、頭を抱え込んでしまうシェイクスピア。ロミオのように木登りをしてバルコニーから彼女の部屋に入ろうとするのだが、乳母と鉢合わせしてびっくりして木から落ちてしまうドジなところもある。芝居の中のロミオとは大違いだ。そんな気弱な一面を見せている彼が、恋を知り、大劇作家としての本領を発揮する。手を黒墨だらけにして、白い紙にペンを走らせていく。その様は書かずにいられない突き上げるような衝動をまざまざと見せてくれる。愛する彼女への想いが彼のエネルギーとなり、書くことが彼女への一層の情熱になっていく。
 正に愛すべき人間、シェイクスピアなのである。 (Kazu)

十二夜
THE TWELFTH NIGHT
1996年/イギリス/ルネッサンス・フィルムズ製作/アスミック・エース・エンタテインメント配給/2時間14分
 
監督・脚色=トレヴァー・ナン
原作=ウィリアム・シェイクスピア
撮影=クライヴ・ティクナー
音楽=シャウン・デイヴィ
美術=ソフィー・ベーシャル
出演=ヘレナ・ボナム=カーター、イモジェン・スタッブス、トビー・スティーヴンス、スティーヴン・マッキントッシュ
 
[ストーリー]
 19世紀末期イリリア。仲の良い双子の兄妹セバスチャン(S・マッキントッシュ)とヴァイオラ(I・スタッブス)は船旅のなか、嵐に遭遇し難破した船から投げ出され遭難してしまう。奇跡的に助かった妹ヴァイオラは男装し、その土地の領主オーシーノ公爵(T・スティーブンス)の小姓として仕えることになる。ヴァイオラは公爵に恋心を抱くようになるのだが、彼は伯爵令嬢のオリヴィア(H・B・カーター)を愛していた。そんな彼女に公爵は、オリヴィアに愛の告白をする代弁者としての用を言いつける。複雑な思いで赴く彼女は皮肉にもオリヴィアに見初められてしまい……。
 
[コメント]
 舞台劇を映画化するにあたっての最大の難点はそのロケーションにあるのではないだろうか。舞台という限定された空間の中から外へと展開される開放感。それを上手く引き出すことが成功させる重要なポイントになるような気がする。監督が「秋を思わせるシェイクスピア作品」として想定したというこの映画は、晩秋のコーンウォール地方で撮影されていて、和らかな陽光が差し込む紅葉の美しい秋の景色、とりわけ落ち葉などがまばらに散る風光明媚な庭園風景は、作品世界の広がりに深く寄与しているように思った。また秋といえば<四季の物語>シリーズ完結編である巨匠E・ロメールの『恋の秋』という映画があり、豊穣かつどこか憂いをふくんだ秋の魅力が満載された至福の一時を過ごせる作品として、是非こちらの作品も堪能してもらいたい。
 現代劇に置き換えるという斬新なアイデアとスタイリッシュな映像の野心作『ロミオとジュリエット』、『ヘンリー5世』や『から騒ぎ』といったシェイクスピア作品でおなじみのケネス・ブラナーによる74ミリで制作された超大作『ハムレット』。『十二夜』はこれらの作品のなかで、いまいち目立つことのなかった映画ではあるがオーソドックスながらも実にイギリスらしいウィットに富んだユーモアあふれる佳作として、とても気にいっている。 (齋)