米軍の新基地建設に今まさに揺れている沖縄・辺野古。新空港建設に反対した成田市・三里塚。2つのドキュメンタリーから浮かび上がる私たちの国・ニッポンとは?戦後70年の今年、私たちの国のミンシュシュギとは?Tell me what democracy looks like!――世代も立場も違う3人のゲストトークも必見・必聴です!!
1966年、農村地帯の成田市三里塚に、日本政府は一方的に空港建設を決定。地元農民を中心にすぐに反対運動が組織され、学生や青年労働者が支援に加わり、三里塚では激しい抵抗運動が繰り広げられたが――当時の映像や写真とともに、今の三里塚の人たちを描く「忘れられた人々の、忘れられない物語」。
1968年に大阪で生まれた私は三里塚を知らなかった。鉄塔が倒されたり放水したりという光景はニュースで見ていたがその程度だった。一昨年『標的の村』と『映画「立候補」』を映画祭で上映した際、会場のお客様から「『標的の村』を観ると三里塚を思い出す」と感想をいただき(そうか、三里塚か……)と思っていたところにこの作品が公開された。
畑を耕し作物を黙々と収穫する姿や、かつての三里塚の生活を語る人々の皺が刻まれた浅黒いお顔は皆、誇らしく、生き生きと見えた。けれど戦後たった20年しか経っていないその時、彼らは根を張って生きていた土地を国により突然奪われたのだ。生きる場を奪われ、生きる尊厳を傷つけられるその姿は、本当に沖縄とダブる。
そのように思えるのも、二人の監督――大津幸四郎のカメラ、代島治彦の問いかけがどちらも誠実で相手に最大限の尊敬を払い、節度を持って対峙しているからにほかならないからだと思う。代島さんは勿論だが、珠玉の作品を遺して下さった大津幸四郎さんにも私は感謝の意を表したい。(越)
米軍の新基地建設のため埋め立てが進む沖縄・辺野古の海。住民による抗議活動とそれを排除しようとする警察や海上保安庁との衝突も起きている。そうした激しい対立の現実や、平成の島ぐるみ闘争、基地と折り合って生きる人々の思い、沖縄の苦難の歴史や豊かな文化や暮らしも描き出していく。
「ここに住みたいんだよ!」……沖縄のキャンプシュワブ前で抗議行動を行う男性は叫ぶ。そう、彼は、そして彼らはこの土地で楽しく安心してフツーに暮らしたいのだ。
前作『標的の村』から2年。三上智恵監督は今度は辺野古に舞台を移した。放送局のアナウンサーからフリーの監督へと立場も変わったが、彼女の「人間賛歌」という視点は揺るがない。反対行動をする住民、米軍基地や国と折り合いをつけた住民、沖縄防衛局に雇われた海人、海上保安庁の職員たち、警察官たち――皆、沖縄で「生きていてよかった」と思える生活をしたい、誇らしく胸を張って生きたい、相対している人同士は本当の敵ではない、では本当の敵は誰だ?――そのことを力強くあぶり出す。
昨年末の知事選挙と衆議院選挙で沖縄の人々は「戦場ぬ止み(いくさばぬとぅどぅみ)」――戦場であることはもうやめましょうという民意を示した。けれども沖縄以外からの本土・国から示されたのは一体なんだ。Tell me what democracy looks like! (越)
1953年生まれ、北海道旭川市出身。テレビ記者、キャスター。77年にTBSに入社。以降一貫して報道現場を歩み続ける。「ニュースコープ」副編集長、「筑紫哲也NEWS23」編集長、モスクワ支局長、ワシントン支局長、ニューヨーク勤務などを経て、2010年より「報道特集」キャスター。早稲田大学大学院客員教授。著書に「ロシアより愛をこめて」「二十三時的」「テレビニュースは終わらない」「沖縄ワジワジー通信」など多数。
1973年生まれ、東京都出身。ジャーナリスト、メディア・アクティビスト。「ポリタス」編集長。大阪経済大学客員教授。京都造形芸術大学客員教授。テレ朝チャンネル2「津田大介 日本にプラス+」キャスター。フジテレビ「みんなのニュース」ネットナビゲーター。ソーシャルメディアを利用した新しいジャーナリズムをさまざまな形で実践。 2011年9月より週刊有料メールマガジン「メディアの現場」を配信中。
1991年生まれ、沖縄県宜野湾市出身。沖縄県立普天間高校卒業。国際基督教大学教養学部政治学専攻4年。SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)、SEALDs RYUKYU中心メンバー。「世界」(岩波書店、2015年4月臨時増刊号)に寄稿。