授賞式には、黒沢清監督、石井裕也監督、相澤虎之助さん、川瀬陽太氏さん、池松壮亮さん、満島ひかりさん、長澤まさみさん、菊地健雄監督、瀬田なつき監督、間宮祥太朗さん、高杉真宙さん、石橋静河さん、土屋太鳳さんが登壇されました。
第9回TAMA映画賞授賞式を、受賞者のコメントから振り返りましょう。黒沢清監督は、「いくつかの映画祭で賞をいただいておりますが、今回やっと作品賞がとれました。一等賞ですね。ずっと映画を撮り続けているとこんなに幸せな日が来るのだと思いました」と喜びのコメント。石井裕也監督は、「感覚的に自由に作った映画を評価していただいて嬉しいし、励みになります」と感慨深げに語りました。
池松壮亮さんは、「思い入れのあるこの作品で受賞できたことが嬉しいです。(今後も)1本1本こだわってあきらめずにやっていきたいと思っています」と力強く決意を述べました。
浅野忠信さんは、「映画のなかで信を演じさせてくれて、真の家族を演じさせてくださった共演者とスタッフ、何より三島有紀子監督に深く深く感謝致します。そして、私、浅野忠信を選んでくださったTAMA映画祭の皆様、本当に本当にありがとうございます」とメッセージを寄せました(江守徹プロデューサーが代読)。
長澤まさみさんは、「今までの積み重ねがこの先に生きていけばいいなと。観た方に価値を感じていただけるよう努力していかなければと思います」と抱負を語り、満島さんは「(『海辺の生と死』舞台の奄美大島は)しゃべり言葉が生まれ育った場所に近かったので、島の言葉で使って撮影することで自分の心に近づいた言葉を吐けた」と、撮影時の心境を振り返りました。
高杉真宙さんは、「去年は“もっと、もっと”と、貪欲に成長していきたいという風に生きて、それで今年こうしてここに立っていられるのだと思います」とコメント。間宮祥太朗さんは、「僕はずっと映画少年で、映画にいろんなことを教えられて育ちました。こうして初めて賞をいただけて、本当に幸せです。土屋太鳳さん、高杉真宙さんとともに受賞できたこと、本当に嬉しく思います!」と喜びを語りました。
土屋太鳳さんは、「受賞理由は、“それでいいんだよ”って包み込んでくださるような、これからの自分の背中を押してくださるような言葉でした。この言葉を胸に、尽力していきます」と、抱負を述べ、石橋静河さんは、「映画の現場が好きです。自分のなかに隠れている弱さや強さを全部さらけ出せる女優さんになりたい」と女優としての意気込みを表明しました。
瀬田なつき監督は、「青春のきらめきみたいなものを未来の人にも残せたら」と今後の意欲を示しました。菊地健雄監督は、「(助監督として)現場で修行を積ませていただいた12年間に思っていたことを監督として形にするように日々努力しています」と語りました。
-本年度最も活力溢れる作品の監督、及びスタッフ・キャストに対し表彰-
『散歩する侵略者』
黒沢清監督、及びスタッフ・キャスト一同
|
侵略者の地球襲来を通して不穏さを帯びる現代社会を暗喩しつつ、サスペンス、アクションなどテイストの異なるシークエンスを積み重ねながら、見応えのある新しい世界観のエンターテインメントを創り上げた。 |
『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』
石井裕也監督、及びスタッフ・キャスト一同
|
今の東京において溢れんばかりに飛び込んでくる情報と都会の情景。そのなかで孤独と見えない不安に苛まれながら愚直なまでの優しさを携えて寄り添う若者の姿は、観客に希望を与え、一人ひとりの内なる感情と共鳴した。 |
-映画ファンを魅了した事象に対し表彰-
エモーショナルな躍動感をスクリーンから解き放つアニメの新たな可能性を切り拓く先駆者として
湯浅政明監督、及びスタッフ・キャスト一同
『夜は短し歩けよ乙女』『夜明け告げるルーのうた』
|
他者との巡り会うなかで過ごす人生の愛おしさを、アニメーションであることを最大限に活かした縦横無尽・闊達自在な映像表現によってスクリーンの前に放流し、観客に醒めやらぬ刺激と幸福感を与えた。 |
身近な仲間と自分たちの生きる世界を捉えてきた映像制作集団・空族の試みが、更なる拡がりをみせた『バンコクナイツ』に対して
富田克也監督、及びスタッフ・キャスト一同
|
東南アジアの楽園のイメージと現実とを俯瞰しつつ、その間で翻弄される人々の坩堝に分け入って世界を捉えた本作は、スクリーンの彼岸と此岸とを共振させ、映画と現実がオーバーラップする圧倒的な映画体験をもたらした。 |
-本年度最も心に残った男優を表彰-
浅野忠信
『幼な子われらに生まれ』『沈黙 -サイレンス-』『淵に立つ』『新宿スワンⅡ』
|
長いキャリアのなかでさまざまな役柄を演じてきたからこそ生まれる存在感で映画に深みと魅力を与え、観客の想像力を掻き立てるクリエイティビティあふれる俳優として唯一無二の存在であり続けるであろう。 |
池松壮亮
『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』『続・深夜食堂』『デスノート Light up the NEW world』『永い言い訳』
|
いずれの作品においてもすぐ身近にいる人間のように思わせてくれる緩急自在で豊かな人物造形力は、作品に奥行きを与えると共に周囲の人物をも輝かせ、心置きなく観客を作品の世界観に誘う魅力に溢れている。 |
-本年度最も心に残った女優を表彰-
満島ひかり
『海辺の生と死』『愚行録』
|
『海辺の生と死』において、島尾ミホが降臨したかのように加計呂麻島の言葉とリズムで語り歌いふるまい、島の神話的世界と終戦間際の生と死の極みにおける愛を匂い立つように表現して、圧倒的な存在感を観客に与えた。 |
長澤まさみ
『散歩する侵略者』『銀魂』『追憶』『金メダル男』
|
『散歩する侵略者』において、予期せぬ出来事に運命を翻弄されながら情味のある日常感覚でそれに対峙し、極限状態においてすべてを包み込む寛大で奥深い愛情表現に磨き上げられた女優としての器の大きさを感じさせた。 |
-本年度最も飛躍した監督、もしくは顕著な活躍をした新人監督を表彰-
菊地健雄監督
『ハローグッバイ』『望郷』
|
現場で培った確かな表現力と人間観察力で少女たちの今しか撮れない瞬間をリアルに切り取りつつ、すべての世代に響く普遍的でビタースイートな青春映画を誕生させた。監督の「映画」に対する誠実さは、遠からず大輪の花を咲かせることを予感させる。 |
瀬田なつき監督
『PARKS パークス』
|
一つの公園で時を超えて広がるメロディーが、そこで過ごしたさまざまな人々の息づかいに触れて幾重にも重なり世界が彩られていく様を、軽やかなタッチで描き、映画の豊かさを味わわせてくれた。 |
-本年度最も飛躍した男優、もしくは顕著な活躍をした新人男優を表彰-
間宮祥太朗
『トリガール!』『帝一の國』『劇場版 お前はまだグンマを知らない』『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』
|
真っ直ぐでアグレッシブな役柄を、豊かな表情と鍛え上げた身体を使ってエネルギッシュ且つ繊細に演じて、観客をスクリーンに釘付けにした。鋭く優しい瞳の奥に、作品と役への深い愛情が感じられる。 |
高杉真宙
『逆光の頃』『散歩する侵略者』『トリガール!』『想影(おもかげ)』『ReLIFE リライフ』『PとJK』
|
『逆光の頃』において、マイペースに生きてきた少年が過去の自分から脱皮して大人へと一歩踏み出していく確かな成長を体現し、華奢に見えながら力強い眼差しや気概によって発せられる逞しさに心を奪われた。 |
-本年度最も飛躍した女優、もしくは顕著な活躍をした新人女優を表彰-
石橋静河
『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』『PARKS パークス』『密使と番人』
|
スクリーンのなかで語り動き回るさまは、漠然とした不安や孤独といった心の揺らぎを繊細に表現して内面から輝きを放った。その確かな存在感は、息の長い女優になっていくことを観客に確信させた。 |
土屋太鳳
『トリガール!』『PとJK』『兄に愛されすぎて困ってます』『金メダル男』
|
どの役に対しても誠心誠意ひたむきに向かい合い、あふれる笑顔と抜群の運動神経で弾けんばかりに演じ切る姿は、観客の心をわしづかみにすると共に、今後一層の活躍を期待させる輝きに満ちていた。 |