第30回映画祭TAMA CINEMA FORUM
開場前、例年のような長蛇の列ではなく、どりーむホール前の広い広場に整然と入場順に区分けされていく様子がコロナ渦の新様式を思わせました。『海辺の映画館-キネマの玉手箱』上映終了後、一旦降りた幕が上がると多数のアクリル板が並べられた舞台が現れ、豪華ご登壇者をお迎えしてのセレモニーが始まる緊張感に包まれました。
トップバッターは最優秀新進監督賞のふくだももこ監督。出産されたばかりの監督は司会者から二重のお祝いの言葉を贈られると笑顔で応え、「映画業界に保育部を作りたいとずっと思っていました。監督に子どもがおることは結構な圧力になるので、色々な人たちが働きやすい環境を作っていけたら。応援してください!」と未来を見据えた力強いメッセージをいただきました。お二人目のHIKARI監督はリモートでご参加。「(『37セカンズ』主演の)佳山明(めい)さんはオーディションの際、か細い声に惹きつけられたのですが、更に彼女が現場での状況を受け入れて対応していく姿が素晴らしかった」と主演の佳山さんを賞賛されました。
最優秀新進女優賞では、まず森七菜さんが登場。段取りを間違えて「あ、今からか」と場内をほのぼのとさせた後、「今年は『なんだこの小娘はいきなり現れて?』と『?』と思われた方が多かったと思いますが、来年はそれを『なるほど!』と『!』マークに変えるような1年にしたい」と抱負を語られました。松本穂香さんは、『君が世界のはじまり』のふくだももこ監督との同時受賞を喜んでくださり、アクリル板越しに並んだふくだ監督から「静かな情熱をもっていてどんどんきれいになっている。監督と女優の関係でずっと撮り続けたい」と熱烈なラブコールを受けられていられました。
続く最優秀新進男優賞では北村匠海さんがビデオメッセージをくださり、「"新進"、新たに進むという言葉に恥じないように頑張りたい」と力強く抱負を語ってくださりました。宮沢氷魚さんは、「俳優になって3年、初めて受賞した賞なので一生忘れないと思う」と映画祭スタッフに嬉しい言葉をくださりました。
特別賞では、『音楽』を7年間かけて製作された岩井澤健治監督は「長い時間をかけて制作すると面倒くさい奴と思われるのか仕事のオファーはないけれど、今後も個人制作を続けていきます」と志を語ってくださりました。『アルプススタンドのはしの方』では城定秀夫監督と主要キャスト5名がご登壇。各々が作品への想いを語った後、城定監督が「(司会者から命名された)天才料理人にふさわしい映画を作り、またこの場に呼ばれるに頑張りたい」と締めくくってくださりました。
最優秀女優賞では、長澤まさみさんの代理の『MOTHER マザー』大森立嗣監督が「厳しい役に挑んでくれた長澤さんに感謝しています。やってきたことに間違いがなかったことを改めて思った」と語ってくださりました。水川あさみさんは「(『喜劇 愛妻物語』の)脚本をいただいたときに絶対にこの役をやりたいと思った。この作品で賞をいただけたこと、この受賞を泣いて喜んでくれたスタッフの方々に感謝したい」と喜びを語られました。
最優秀男優賞では、濱田岳さん受賞の際に『喜劇 愛妻物語』で妻役の水川あさみさんと本作夫婦のモデルとなった足立紳監督ご夫妻が登壇され、妻が夫を罵倒する夫婦像について話が盛り上がりました。福山雅治さんは、「(『ラストレター』の)乙坂鏡史郎は十代を演じた神木隆之介さんと二人で作った役なので、今度神木さんに会ったら何かおごります」と観客の笑いを誘っておられました。
最優秀作品賞では、『ラストレター』の岩井俊二監督は、福山雅治さん、森七菜さんと現場の雰囲気について語った後「コロナ禍の状況が続くなか、皆さんに喜んでもらえるものを創り出していきたい」と抱負を語られました。大トリの『海辺の映画館-キネマの玉手箱』チームとなり、大林恭子プロデューサー、奥山和由プロデューサー、常盤貴子さんほか7名がご登壇。一人一人大林宣彦監督への想いを語った後、最後に恭子夫人が「大林監督が観客の皆さんに伝えたかった言葉があります。ありがとうという言葉です。監督から、ありがとうございました」と頭を下げて締めくくってくださり、拍手と熱い想いのなか幕を閉じました。
カーテンコールで15名ずつアクリル板を挟んで15人ずつ横に並んで2回に分けて記念撮影。コロナ禍ならではの光景でしたが、受賞者がずらりと並んだ壮観そのものの光景でした。ご登壇者、観客、スタッフの映画愛に包まれて、暖かい雰囲気を共有できて幸せでした。来年開催時にどのような状況になっているか想像がつきませんが、またこのような空間を生み出していきたいと思います。