『風の波紋』上映関連企画

「風」を感じて ― 『風の波紋』とあわせて観たいおすすめ映画12選

date : 2016/07/07

TAMA映画フォーラム実行委員会は2016年7月16日(土)に開催する特別上映会において、ドキュメンタリー映画『風の波紋』(小林茂監督)を上映します(上映の詳細はこちら)。今回の特集では、『風の波紋』が提示するテーマや世界観に関連があると思われるおすすめ映画を紹介いたします。

「地方移住」「交流」

『祖谷物語 ―おくのひと―』
(監督:蔦哲一朗/2013年/169分)

日本最後の秘境、徳島県・祖谷を舞台にしたドラマ。全編35ミリ・フィルム撮影された。東京から移住した青年が、山奥で質素な生活を送るお爺と女子高生と交流する。武田梨奈、田中泯、大西信満らが出演

『おおかみこどもの雨と雪』
(監督:細田守/2012年/117分)

山奥の古民家に移住、自給自足の暮らしがはじまる――。人間と狼の2つの顔をもつ「おおかみこども」の姉弟を育てる人間の女性・花の13年間を描いた細田守監督のオリジナル・アニメーション。宮﨑あおい、大沢たかお、黒木華、西井幸人らが声の出演

『キツツキと雨』
(監督:沖田修一/2011年/129分)

のどかな山村にやってきたゾンビ映画の撮影隊。気難しい木こりと悩み多き若手映画監督の交流を描く。監督は『南極料理人』(2008年)、『横道世之介』(2013年)などの沖田修一。役所広司、小栗旬が主演

『愛を積むひと』
(監督:朝原雄三/2015年/125分)

エドワード・ムーニー・Jrの小説「石を積むひと」を原作とし、舞台を北海道におきかえて描いたドラマ。夫婦で東京から北海道に移住したが妻に先立たれた篤史は、妻からの手紙をきっかけに周囲との関係を見直していく。佐藤浩市、樋口可南子、野村周平、北川景子、杉咲花らが出演

「地域社会と課題、共生」

『祝の島』
(監督;纐纈あや/2010年/105分)

瀬戸内海に浮かぶ祝島の住民を描いたドキュメンタリー。上関原発の建設計画にたいし反対を続けてきた島の人たち、豊かな海との共生を描いている。『ある精肉店のはなし』(2013年)の纐纈あや監督による長編第一作

『阿賀に生きる』
(監督:佐藤真/1992年/115分)

新潟県・阿賀野川の流域で、川とともに生きている人びとの日常を収めたドキュメンタリー。新潟水俣病の被害を受けながら、代々の田んぼを守り、川舟づくりを継承する。監督は2007年に急逝した佐藤真

『アラヤシキの住人たち』
(監督:本橋成一/2015年/117分)

北アルプスの山裾にある長野県小谷村にある共働学舎の1年間を追ったドキュメンタリー。20代〜60代の男女十数人が犬や猫、ヤギ、鶏などの動物たちとともに暮している。監督は『アレクセイと泉』(2002年)、『ナミイと唄えば』(2006)などを手がけた本橋成一

「自然のめぐみを味わう」

『リトル・フォレスト 夏・秋』『リトル・フォレスト 冬・春』
(監督:森淳一/[夏・秋]2014年・[冬・春]2015年/[夏・秋]111分・[冬・春]120分)

五十嵐大介による同名漫画が原作。自給自足・旬をいかした食事をとおして自分と向き合う若い女性を描く4部作。おいしそうな料理もみどころ。橋本愛、三浦貴大、松岡茉優、温水洋一、桐島かれんらが出演

「DIY」

『モバイルハウスのつくりかた』
(監督:本田孝義/2011年/98分)

坂口恭平を描いた初のドキュメンタリー。路上生活者の家を取材した写真集『0円ハウス』などの著書のある坂口が“多摩川のロビンソンクルーソー”の手ほどきを受けてモバイルハウスを製作する様子を収める。建築・土地・所有をはじめ、現代のライフスタイルを問う姿勢が印象的

『ゲット・ラウド ―ジ・エッジ、ジミー・ペイジ、ジャック・ホワイト×ライフ×ギター―』
(監督:デイビス・グッゲンハイム/2009年/97分)

ギターをめぐって、U2のジ・エッジ、レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジ、ザ・ホワイト・ストライプスのジャック・ホワイトが語る。一弦ギターを自作し「ギターを買う必要はない」と言い放つジャック・ホワイトに感嘆!

「静寂」「自然の厳しさ」

『大いなる沈黙へ ―グランド・シャルトルーズ修道院―』
(監督:フィリップ・グレーニング/2005年/169分)

申請から16年、音楽・ナレーション・照明なしという条件で撮影が許可されたフランスにある男子修道院。静けさのなかに聴こえ、みえてくるものとは――。サンダンス映画祭2006審査員特別賞受賞作

『イントゥ・ザ・ワイルド』
(監督:ショーン・ペン/2007年/140分)

作家・登山家のジョン・クラカワーによるノンフィクション「荒野へ」を映画化。大学を卒業したクリス・マッキャンドレスは身分証を捨て、放浪の旅に出た。いくつもの出会いにより様々な価値観に触れた彼はアラスカの荒野で生活を始めるが、次第に厳しい自然に包まれていく……

『風の波紋』とは

豪雪地帯として知られる越後妻有の里山で暮らす人びとを捉えたドキュメンタリー。古民家や田畑を借りている木暮さん、草木染め職人の松本さん、旅館を経営する長谷川さんなどの移住してきた人たちも含め、そこに暮らす人びとが自然の厳しさに向き合いながら協力する様子を捉えている。茅葺き、田植え、雪かきなど、さまざまな場面で助け合い、宴をともにして自然をいただく生活は、2011年3月に新潟・長野県境地震が集落を襲っても変わらず、木暮さんは仲間の協力を得て自宅の古民家再生に取組む

小林茂監督について

『阿賀に生きる』(佐藤真監督/1992年、日本映画撮影監督協会 第1回JSC賞)、『地域をつむぐ』(時枝俊江監督/1996年)、『闇を掘る』(藤本幸久監督/2001年)などで撮影を務める。監督作の『わたしの季節』(2004年)は文化庁映画大賞、毎日映画コンクール記録文化映画賞、山路ふみ子福祉映画賞などを受賞。前作はケニアのストリートチルドレンを描いた『チョコラ!』(2009年)

実行委員コメント

『風の波紋』は、これからの社会を先取りした地域コミュニティの姿を描いています。そう遠くない将来、利便性が高まれば高まるほど、あらためて「手しごと」のもつ価値が強く意識されるようになるはずです。テクノロジーが物理的距離の問題を解決したとき、「生きている実感」を得るすばらしい時間・自然とかかわるくらしは、いまよりももっと輝くとともに、身近な選択肢のひとつになっているのだという確信のようなものを私は感じました。ありふれた言葉でいえば「豊かさの転換」です。そう思わせてくれる何かをスクリーンから見つけだす機会として、多くの方々と本作を共有できたら大変うれしく思います。(山口渉)