明日への元気を与えてくれる・夢をみせてくれる活力溢れる<いきのいい>作品・監督・俳優を、映画ファンの立場から感謝をこめて表彰します。映画賞前年の10月から当年9月に一般劇場で公開された作品及び監督・キャスト・スタッフを対象として、TAMA映画フォーラム実行委員(市民ボランティア)の合議により選考が行われます。

TAMA映画賞受賞一覧


第15回TAMA映画賞

2023年
最優秀作品賞
『怪物』
是枝裕和監督、及びスタッフ・キャスト一同
『雑魚どもよ、大志を抱け!』
足立紳監督、及びスタッフ・キャスト一同
特別賞
宮﨑駿監督、及びスタッフ・キャスト一同
上田誠氏、山口淳太監督、はじめヨーロッパ企画、及びスタッフ・キャスト一同
最優秀男優賞
佐藤浩市
鈴木亮平
最優秀女優賞
菊地凛子
黒木華
最優秀新進監督賞
福永壮志監督
金子由里奈監督
最優秀新進男優賞
目黒蓮
奥平大兼
最優秀新進女優賞
山田杏奈
髙石あかり

第14回TAMA映画賞

2022年
最優秀作品賞
『LOVE LIFE』
深田晃司監督、及びスタッフ・キャスト一同
『ハケンアニメ!』
吉野耕平監督、及びスタッフ・キャスト一同
特別賞
芦田愛菜、宮本信子、及びスタッフ・キャスト一同
小林啓一監督、及びスタッフ・キャスト一同
最優秀男優賞
佐藤二朗
松坂桃李
最優秀女優賞
倍賞千恵子
広瀬すず
最優秀新進監督賞
片山慎三監督
森井勇佑監督
最優秀新進男優賞
磯村勇斗
横浜流星
最優秀新進女優賞
河合優実
伊東蒼

第13回TAMA映画賞

2021年
最優秀作品賞
『ドライブ・マイ・カー』
濱口竜介監督、及びスタッフ・キャスト一同
『あのこは貴族』
岨手由貴子監督、及びスタッフ・キャスト一同
特別賞
土井裕泰監督、坂元裕二氏、及びスタッフ・キャスト一同
横浜聡子監督、及びスタッフ・キャスト一同
最優秀男優賞
役所広司
菅田将暉
最優秀女優賞
尾野真千子
有村架純
最優秀新進監督賞
藤元明緒監督
松本壮史監督
最優秀新進男優賞
藤原季節
金子大地
最優秀新進女優賞
三浦透子
伊藤万理華

第12回TAMA映画賞

2020年
最優秀作品賞
『海辺の映画館-キネマの玉手箱』
大林宣彦監督、及びスタッフ・キャスト一同
『ラストレター』
岩井俊二監督、及びスタッフ・キャスト一同
特別賞
城定秀夫監督、及びスタッフ・キャスト一同
岩井澤健治監督、及びスタッフ・キャスト一同
最優秀男優賞
福山雅治
濱田岳
最優秀女優賞
水川あさみ
長澤まさみ
最優秀新進監督賞
HIKARI監督
ふくだももこ監督
最優秀新進男優賞
宮沢氷魚
北村匠海
最優秀新進女優賞
松本穂香
森七菜

第11回TAMA映画賞

2019年
最優秀作品賞
『嵐電』
鈴木卓爾監督、及びスタッフ・キャスト一同
『長いお別れ』
中野量太監督、及びスタッフ・キャスト一同
特別賞
新海誠監督、及びスタッフ・キャスト一同
藤井道人監督、及びスタッフ・キャスト一同
最優秀男優賞
山﨑努
井浦新
最優秀女優賞
蒼井優
前田敦子
最優秀新進監督賞
山戸結希監督
奥山大史監督
最優秀新進男優賞
成田凌
清水尋也
最優秀新進女優賞
岸井ゆきの
シム・ウンギョン

第10回TAMA映画賞

2018年
最優秀作品賞
『万引き家族』
是枝裕和監督、及びスタッフ・キャスト一同
『寝ても覚めても』
濱口竜介監督、及びスタッフ・キャスト一同
特別賞
沖田修一監督及び山﨑努・樹木希林、はじめスタッフ・キャスト一同
上田慎一郎監督、及びスタッフ・キャスト一同
最優秀男優賞
東出昌大
松坂桃李
最優秀女優賞
安藤サクラ
松岡茉優
最優秀新進監督賞
今泉力哉監督
三宅唱監督
最優秀新進男優賞
吉村界人
吉沢亮
最優秀新進女優賞
深川麻衣
伊藤沙莉

第9回TAMA映画賞

2017年
最優秀作品賞
『散歩する侵略者』
黒沢清監督、及びスタッフ・キャスト一同
『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』
石井裕也監督、及びスタッフ・キャスト一同
特別賞
湯浅政明監督、及びスタッフ・キャスト一同
富田克也監督、及びスタッフ・キャスト一同
最優秀男優賞
浅野忠信
池松壮亮
最優秀女優賞
満島ひかり
長澤まさみ
最優秀新進監督賞
菊地健雄監督
瀬田なつき監督
最優秀新進男優賞
間宮祥太朗
高杉真宙
最優秀新進女優賞
石橋静河
土屋太鳳

第8回TAMA映画賞

2016年
最優秀作品賞
『オーバー・フェンス』
山下敦弘監督、及びスタッフ・キャスト一同
『団地』
阪本順治監督、及びスタッフ・キャスト一同
特別賞
真利子哲也監督&柳楽優弥、及びスタッフ・キャスト一同
鈴木卓爾監督、及びスタッフ・キャスト一同
最優秀男優賞
三浦友和
オダギリジョー
最優秀女優賞
小泉今日子
蒼井 優
最優秀新進監督賞
前田司郎監督
小泉徳宏監督
最優秀新進男優賞
若葉竜也
村上虹郎
最優秀新進女優賞
松岡茉優
小松菜奈

第7回TAMA映画賞

2015年
最優秀作品賞
『海街diary』
是枝裕和監督、及びスタッフ・キャスト一同
『きみはいい子』
呉美保監督、及びスタッフ・キャスト一同
特別賞
塚本晋也監督、及びスタッフ・キャスト一同
最優秀男優賞
永瀬正敏
綾野剛
最優秀女優賞
樹木希林
綾瀬はるか
最優秀新進監督賞
岨手由貴子監督
松居大悟監督
最優秀新進男優賞
中島歩
野村周平
最優秀新進女優賞
広瀬すず
杉咲花

第6回TAMA映画賞

2014年
最優秀作品賞
『野のなななのか』
大林宣彦監督、及びスタッフ・キャスト一同
『ぼくたちの家族』
石井裕也監督、及びスタッフ・キャスト一同
最優秀男優賞
妻夫木聡
大泉洋
最優秀女優賞
二階堂ふみ
池脇千鶴
最優秀新進監督賞
劇団ひとり監督
坂本あゆみ監督
最優秀新進男優賞
菅田将暉
太賀
最優秀新進女優賞
能年玲奈
門脇麦
特別賞
蔦哲一朗監督、及びスタッフ・キャスト一同

第5回TAMA映画賞

2013年
最優秀作品賞
『さよなら渓谷』
大森立嗣監督、及びスタッフ・キャスト一同
『横道世之介』
沖田修一監督、及びスタッフ・キャスト一同
特別賞
原恵一監督、及びスタッフ・キャスト一同
大根仁監督、及びスタッフ・キャスト一同
最優秀男優賞
松田龍平
最優秀女優賞
真木よう子
吉高由里子
最優秀新進監督賞
中野量太監督
白石和彌監督
最優秀新進男優賞
星野源
池松壮亮
最優秀新進女優賞
黒木華
刈谷友衣子

第4回TAMA映画賞

2012年
最優秀作品賞
『この空の花 -長岡花火物語
大林宣彦監督、及びスタッフ・キャスト一同
『桐島、部活やめるってよ』
吉田大八監督、及びスタッフ・キャスト一同
特別賞
塚本晋也監督&Cocco
入江悠監督、及びスタッフ・キャスト一同
最優秀男優賞
役所広司
最優秀女優賞
樹木希林
宮﨑あおい
最優秀新進監督賞
ヤン・ヨンヒ監督
沖田修一監督
最優秀新進男優賞
神木隆之介
満島真之介
最優秀新進女優賞
前田敦子
橋本愛

第3回TAMA映画賞

2011年
最優秀作品賞
『一枚のハガキ』
新藤兼人監督、及びスタッフ・キャスト一同
『奇跡』
是枝裕和監督、及びスタッフ・キャスト一同
特別賞
故・原田芳雄さん、阪本順治監督、及びスタッフ・キャスト一同
岸田繁(くるり)
最優秀男優賞
光石研
最優秀女優賞
永作博美
小西真奈美
最優秀新進監督賞
深田晃司監督
前田弘二監督
最優秀新進男優賞
古舘寛治
染谷将太
最優秀新進女優賞
井上真央
二階堂ふみ

第2回TAMA映画賞

2010年
最優秀作品賞
『告白』
中島哲也監督、及びスタッフ・キャスト一同
『さんかく』
吉田恵輔監督、及びスタッフ・キャスト一同
特別賞
若松孝二監督
最優秀男優賞
堤真一
最優秀女優賞
寺島しのぶ
最優秀新進監督賞
川口浩史監督
山本寛監督
最優秀新進男優賞
大西信満
金田哲
最優秀新進女優賞
安藤サクラ
忽那汐里

第1回TAMA映画賞

2009年
最優秀作品賞
『ディア・ドクター』
西川美和監督、及びスタッフ・キャスト一同
『ウルトラミラクルラブストーリー』
横浜聡子監督、及びスタッフ・キャスト一同
特別賞
八千草薫
木村大作監督
最優秀新進監督賞
深川栄洋監督
北川悦吏子監督
最優秀新進男優賞
高良健吾
渡辺大知
最優秀新進女優賞
満島ひかり
金澤美穂

TAMA映画賞受賞詳細

第15回(2023年)


最優秀作品賞

-本年度最も活力溢れる作品の監督、及びスタッフ・キャストに対し表彰-

『怪物』
是枝裕和監督、及びスタッフ・キャスト一同

声に出すことのできない思いを抱えて苦しむこどもたちがその悩みから解放された光溢れる世界を映し出すことで、誰しもが「怪物」になり得、「怪物」に見立てられてもしまう実社会の生きづらさを如実に描き出した。

『雑魚どもよ、大志を抱け!』
足立紳監督、及びスタッフ・キャスト一同

さまざまな家庭環境のなかで楽しい時間を過ごしている少年たちを温かくユーモラスに描き、友に降りかかった危機にそれぞれの覚悟で立ち向かう雑魚どもの奮闘は、大人へと成長する逞しさを感じさせると共に観る者の胸に熱く迫った。

特別賞

-映画ファンを魅了した事象に対し表彰-

溢れ出るイマジネーションと絶え間なく豊かなアニメーションで観客に「物語」の深さを伝えてくれた『君たちはどう生きるか』に対して
宮﨑駿監督、及びスタッフ・キャスト一同

メタファーが絶妙に織り込まれた物語から溢れ出るイマジネーションと細部のリアリティを、余すことなく表現しようとスタッフ・キャストが紡いだアニメーションは、主人公・眞人同様、観客にも創造の積み木を持ち帰らせてくれた。

時空間SFの尽きることないアイデアで観客の心を躍らせた『リバー、流れないでよ』に対して
上田誠氏、山口淳太監督、はじめヨーロッパ企画、及びスタッフ・キャスト一同

「2分間」が繰り返される時の牢獄は、翻弄される人間模様の可笑しみとともに、日々の傍らで川のように流れる「時間」の存在を立ち現わせた。ヨーロッパ企画ならではのグルーヴが生み出す物語は、観客に軽妙な笑いと発見の喜びを与えてくれる。

最優秀男優賞

-本年度最も心に残った男優を表彰-

佐藤浩市
『春に散る』『せかいのおきく』『仕掛人・藤枝梅安2』『大名倒産』『キングダム 運命の炎』『ファミリア』『映画ネメシス 黄金螺旋の謎』

俳優・佐藤浩市ならではの滲み出る渋さと颯爽と放つ華が、若手俳優の魅力も最大限引き出し、作品を輝かせ続けている。時を重ね磨き上げられた刃のような役者魂は、今後も日本映画界を切り開いていくに違いない。

鈴木亮平
『エゴイスト』『劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室』

『エゴイスト』において、愛とエゴの狭間で葛藤しながらも恋人とその母に注ぐ献身的な愛は繊細で切なく時に痛々しいほどの表現力だった。入念な準備と深い洞察により強さと脆さを併せ持った主人公・浩輔は実在感あるものとして観る者の心に刻まれた。

最優秀女優賞

-本年度最も心に残った女優を表彰-

菊地凛子
『658km、陽子の旅』

故郷へ北上する旅のなかでさまざまな人と出会い、孤独にすごしてきた自身の人生と向き合って、静かに奮い立つ瞬間を表現した。踏み出した明日への一歩には、力強い希望がたしかに込められていた。

黒木華
『せかいのおきく』『ヴィレッジ』『映画 イチケイのカラス』『ほつれる』『#マンホール』

『せかいのおきく』において、凛とした所作が美しい武家の娘であり、気っぷがよいおきゃんな娘でもある「おきく」の創出によって、下肥買いの若者たちとの友情や恋を織り込んだ爽やかな青春ドラマに昇華させた。

最優秀新進監督賞

-本年度最も飛躍した監督、もしくは顕著な活躍をした新人監督を表彰-

福永壮志監督
『山女』

村社会の縛りに耐えるだけだった凛が、村を離れ山に入って解放される姿は時代を越えて今にも通じる。畏怖される自然を圧倒的な映像と音響で表現し、自然を前にした人間の弱さとその社会から自立する姿を鮮明に描き出した。

金子由里奈監督
『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』

自分の思いをぬいぐるみに話しかけ、慎重に思慮深く他者と関係を紡ぐ姿を絶妙なバランス感覚で描いた。スクリーンから溢れ出す優しさは、誰一人同じ人がいないことの尊さを認識させ、私たちを包み込むかのように寄り添ってくれた。

最優秀新進男優賞

-本年度最も飛躍した男優、もしくは顕著な活躍をした新人男優を表彰-

目黒蓮
『わたしの幸せな結婚』『月の満ち欠け』

『わたしの幸せな結婚』において、現実世界とかけ離れたキャラクターを華がある演技でスクリーンに焼き付け、観る者をとりこにした。アクションで動きのキレを魅せる一方、美世への想いの移ろいを繊細な感情表現で演じきった。

奥平大兼
『君は放課後インソムニア』『ヴィレッジ』『あつい胸さわぎ』『映画 ネメシス 黄金螺旋の謎』

いずれの作品においても物語に溶け込み、若さゆえの輝きや脆さを繊細に表現した。役柄を的確に捉える優れたバランス感覚と素直な表現力は、映画の未来を担っていくことを予感させる。

最優秀新進女優賞

-本年度最も飛躍した女優、もしくは顕著な活躍をした新人女優を表彰-

山田杏奈
『山女』

『山女』における陰湿な村社会など、どんな困難な状況にも屈せずに逞しく凛と存り続けた姿に圧倒させられた。その強い眼差しには観客たちの心を揺さぶるエネルギーを感じた。

髙石あかり
『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』『Single8』『セフレの品格 決意』『わたしの幸せな結婚』『終末の探偵』『ハッピーエンディングス』『追想ジャーニー 』

言葉にせずとも目で訴えかける静の佇まいから抑えきれない感情の抑揚を全身で体現する躍動感まで、変幻自在に役に入り込んだ。観客を画面に釘付けにさせるキュートな魅力から目が離せない。


第14回(2022年)


最優秀作品賞

-本年度最も活力溢れる作品の監督、及びスタッフ・キャストに対し表彰-

『LOVE LIFE』
深田晃司監督、及びスタッフ・キャスト一同

平和な日常が一転し、深い哀しみやばかばかしいほどの虚しさに覆われたヒロインが、深層にあった愛を選び、踏み出していくさまは人生の本質を映し出していた。映像と楽曲を重奏させた「LOVE LIFE」に拍手を贈りたい。

『ハケンアニメ!』
吉野耕平監督、及びスタッフ・キャスト一同

好きを原動力に「誰かの胸に刺され」と強い想いで邁進する登場人物たちと、この映画製作に関わったすべての人々の情熱がリンクし、主人公と同じように生きる私たちに大きな共感と明日への希望を見せてくれた。

特別賞

-映画ファンを魅了した事象に対し表彰-

年齢差を超えた二人の友情を越えた関係が、前に踏み出せないでいる私たちの背中を押してくれた『メタモルフォーゼの縁側』に対して
芦田愛菜、宮本信子、及びスタッフ・キャスト一同

芦田愛菜さん演じるうららの内に秘めた「好き」と宮本信子さん演じる雪のまっすぐな「好き」が響きあって前に進む姿が、縁側のひだまりのような温もりを感じさせると共に、自分らしく自由に生きることの大切さと喜びを教えてくれた。

“恋とは何か?”という哲学的なテーマを扱いながら作品世界を何度も体験したくなる多幸感に浸れる『恋は光』に対して
小林啓一監督、及びスタッフ・キャスト一同

恋における心の揺れ動きを可視化及び言語化した独自のファンタジー世界を構築し、趣きのあるロケーションや魅力的なキャラクターを活かしてみずみずしく表現することで、恋愛映画の枠組みを越えた魅惑の作品を誕生させた。

最優秀男優賞

-本年度最も心に残った男優を表彰-

佐藤二朗
『さがす』『truth 姦しき弔いの果て』『バイオレンスアクション』

『さがす』において、堕落した生活困窮者、妻思いの夫、冷血な犯罪加担者といった多面性のある父親役を多彩で濃淡をつけた演技は、観客を震撼させると共に感動にまで導き、役者としての凄みを見せてくれた。

松坂桃李
『流浪の月』

文という人間が抱え続けた繊細な感情の機微を零すことなく丁寧に演じた。役を存在させる温度感が絶妙で、長い年月をかけた愛の灯を静かに的確に表現し、観客を物語へ引き込んだ。

最優秀女優賞

-本年度最も心に残った女優を表彰-

倍賞千恵子
『PLAN 75』

長寿が祝福されない世相においても日々の暮らしを大切に営み、根源的に持つ「生」の力が何より優先することを示してくれた。生き抜くことを訴えかける目の力と陽に照らされた凛とした佇まいの残像が頭から離れなかった。

広瀬すず
『流浪の月』

過去の傷を背負い生きてきた主人公・更紗が、愛する人との再会によって抑圧から解放され、少女期のように溌剌と息づく様は、燃え立つ愛の炎のように静かな美しさを放っていた。

最優秀新進監督賞

-本年度最も飛躍した監督、もしくは顕著な活躍をした新人監督を表彰-

片山慎三監督
『さがす』

観客がどこに連れていかれるのか予想だにしない展開のなかで命の尊厳や家族愛を描く構成力と、衝撃的なシーンのみならず心に残るカットを織り込みながら市井の男を狂気の沙汰に追い詰める演出力が絶妙に調和した。

森井勇佑監督
『こちらあみ子』

常識に染まる前のピュアな心を持ち、自由闊達なあみ子の視点を通して、不条理な出来事を達観して描く世界観が秀逸だった。他者に届かぬ思い「応答せよ、応答せよ、こちらあみ子」の明るい声が観る者の胸の内で響いた。

最優秀新進男優賞

-本年度最も飛躍した男優、もしくは顕著な活躍をした新人男優を表彰-

磯村勇斗
『ビリーバーズ』『PLAN 75』『異動辞令は音楽隊!』『さかなのこ』『前科者』『彼女が好きなものは』『ホリック xxxHOLiC』『劇場版 きのう何食べた?』『MIRRORLIAR FILMS Season3』

どの役柄でも演技以上の工夫を凝らした見せ方で、存在感のあるキャラクターを造形していた。『ビリーバーズ』では欲望との葛藤や内なる狂気を表現し、人間の振り切れるほどの幅を演じ分けられる俳優としての力量を見せてくれた。

横浜流星
『流浪の月』『アキラとあきら』『嘘喰い』『あなたの番です 劇場版』『DIVOC-12』

『流浪の月』において、恋人の心が離れていると悟ったときの豹変した姿に、抱えていた孤独や愛への渇望から生じた心の闇の深さがずしりと伝わり、俳優として底知れぬスケールを感じさせた。

最優秀新進女優賞

-本年度最も飛躍した女優、もしくは顕著な活躍をした新人女優を表彰-

河合優実
『PLAN 75』『愛なのに』『ちょっと思い出しただけ』『女子高生に殺されたい』『百花』『冬薔薇』『偽りのないhappy end』

さまざまな役柄で物語を動かす印象的な役作りを行い、洞察力・想像力に裏打ちされたメッセージを籠めた視線が観客の心を射抜いた。多様化し、変容する社会において、発信力のある稀有な役者として輝き続けることを期待したい。

伊東蒼
『さがす』『恋は光』『MIRRORLIAR FILMS Season4』

『さがす』において、突然の親の失踪により孤独と不安に苛まれながら、思慮深さや健気さを失わず果敢に父の真実をさがし求める姿は、観客の心を掴んだ。難役を見事にこなした研ぎ澄まされた感性は今後更に光り輝くだろう。


第13回(2021年)


最優秀作品賞

-本年度最も活力溢れる作品の監督、及びスタッフ・キャストに対し表彰-

『ドライブ・マイ・カー』
濱口竜介監督、及びスタッフ・キャスト一同

手話を含む多言語が交錯する舞台劇とさまざまな人物から語られる物語が幾重にも重なり、これまで味わったことのない、新しい感性を刺激する映画が誕生した。常に喪失を抱えながら生きる人々は私たち自身であり、その再生への道のりには涙を禁じ得ない。

『あのこは貴族』
岨手由貴子監督、及びスタッフ・キャスト一同

東京を舞台に、出自も生きる階層(セカイ)も違う二人の女性がその出会いを通して、恋愛や結婚だけではないそれぞれの幸せを見つけ、人生を自らの手で切り拓いていくさまを丁寧に描くことで、生きづらさを抱える人々の心を解放へと導いた。

特別賞

-映画ファンを魅了した事象に対し表彰-

幅広い世代が語り合わずにはいられなくなる珠玉の恋愛作『花束みたいな恋をした』に対して
土井裕泰監督、坂元裕二氏、及びスタッフ・キャスト一同

20代という時季にある恋愛・生活・心の移ろいを、脚本・演出・演者が一体となって緻密に描きだした。日常と地続きのような作品世界は、スクリーンを飛び越えて観客自身の物語と呼応し、誰しも「語りたくなる」ほどの感動を残した。

わかりやすさに忖度しない生粋の津軽弁と、津軽三味線のリズムにのって、じょっぱり(意地っ張り)の成長譚を描いた『いとみち』に対して
横浜聡子監督、及びスタッフ・キャスト一同

ヒロイン・いとがコンプレックスの源泉だった津軽弁訛りや三味線演奏に「わあ(自分)」を見い出し、周囲の「けっぱれ(がんばれ)」の声によって爽やかに力強く「いとみち=自分の道」を歩みだす姿が、多くの観客の琴線に触れた。

最優秀男優賞

-本年度最も心に残った男優を表彰-

役所広司
『すばらしき世界』『バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら~』『竜とそばかすの姫』

『すばらしき世界』において、報われない一人の男の美しさ、暗さと人生のさまざまな深遠を憎めない愛らしい一面をも覗かせることで、観る者に胸を締め付けられるような切なさ、虚しさの思いを掻き立たせ、[純真]という秋桜の花言葉の意味を気づかせてくれた。

菅田将暉
『花束みたいな恋をした』『キャラクター』『キネマの神様』『浅田家!』

時代・地域・役柄・作風の全く異なる幅広いジャンルの作品に出演し、日常も虚構も自在に着こなして魅せる個性は、実在の人物のような手触りとともに唯一無二の輝きを放っていた。その陰影は作品の世界観に奥行を与え、観客の記憶には鮮烈な彩りをも残した。

最優秀女優賞

-本年度最も心に残った女優を表彰-

尾野真千子
『茜色に焼かれる』『明日の食卓』『ヤクザと家族 The Family』『心の傷を癒すということ 劇場版』

『茜色に焼かれる』において、理不尽な現実を怒りとともに飲み込みながら、愛と未来のために戦い続ける母親を、緩急の巧みさと気迫ある演技で見事に表現した。全身全霊を投じ生き抜くさまを、鮮烈にスクリーンへ焼きつけた。

有村架純
『花束みたいな恋をした』『映画 太陽の子』『るろうに剣心 最終章 The Beginning』『バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら~』

『花束みたいな恋をした』において、生活のなかにある会話や沈黙、表情、仕草を細やかに表現し、「八谷絹」という一人の女性に命を吹き込んだ。役柄への深い洞察に基づいた体温を感じさせるような演技は、観客を物語に惹きこむ大きな原動力となった。

最優秀新進監督賞

-本年度最も飛躍した監督、もしくは顕著な活躍をした新人監督を表彰-

藤元明緒監督
『海辺の彼女たち』

凍てつく漁港のどんよりとした空の色と吹きすさぶ風音が観客の身に染みるのは、不法労働を強いられる彼女らの視点に立ち、高い倫理観と問題意識によって創られていることに他ならず、国際問題に真正面から挑む創作姿勢が素晴らしい。

松本壮史監督
『サマーフィルムにのって』『青葉家のテーブル』

『サマーフィルムにのって』において、映画製作に取り組む個性的な高校生たちのひと夏を、SF、ラブコメ、時代劇、友情ドラマなど目が離せない展開により潔いラストまで一気に見せ、映画の可能性と楽しさを明示して観客を魅了した。

最優秀新進男優賞

-本年度最も飛躍した男優、もしくは顕著な活躍をした新人男優を表彰-

藤原季節
『のさりの島』『佐々木、イン、マイマイン』『空白』『くれなずめ』『明日の食卓』

『のさりの島』において、悪事に手を染めながらも、本当の孫のように接する老婆に対して生来の優しさを滲ませる青年を繊細に表現した。単純に良し悪しを決められない深みのある人物像を魅力的に創り上げることに秀でていて、ますます目を離せない。

金子大地
『サマーフィルムにのって』『猿楽町で会いましょう』『先生、私の隣に座っていただけませんか?』『バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら~』

混じり気のないストレートな感情を熱く演じる一方で、複雑な感情のゆらぎといった言葉だけでは表しきれない心の機微をも体現した。その多彩な表現力は作品をより一層魅力的にし、末永く俳優として愛されていくことを確信させる。

最優秀新進女優賞

-本年度最も飛躍した女優、もしくは顕著な活躍をした新人女優を表彰-

三浦透子
『ドライブ・マイ・カー』『椿の庭』『おらおらでひとりいぐも』『アイヌモシリ』

『ドライブ・マイ・カー』において、心地よいなめらかな運転同様に相手の心を柔らかく受け止められる女性ドライバーを、感情を表に出さない抑えた演技で体現し、彼女の発する言葉の一つ一つが観客の心のなかで反響した。

伊藤万理華
『サマーフィルムにのって』『息をするように』

『サマーフィルムにのって』において、表情がクルクル変化するかと思えば女子高生のダルさを醸し出し、極めつけはキレキレの殺陣で潔さを表した。我武者羅に役に入り込む伊藤万理華ならではの情熱で、今後どんな表現をするのか楽しみでならない。

第12回(2020年)


最優秀作品賞

-本年度最も活力溢れる作品の監督、及びスタッフ・キャストに対し表彰-

『海辺の映画館-キネマの玉手箱』
大林宣彦監督、及びスタッフ・キャスト一同

大林監督の頭の中に蓄積された膨大な映画の記憶・映像世界をすべて叩き込んだと思われる、壮大かつ鮮烈なイマジネーションが炸裂し、戦争とは何か人間の本性とは何かを明示しつつ、映画の未来は明るいと観客に希望を託した。

『ラストレター』
岩井俊二監督、及びスタッフ・キャスト一同

初恋の記憶・亡き母の人生が「手紙」によって現在に呼び起こされ、過去への憧憬や悲しみを抱きながらも人生を歩みつづける希望として、登場人物たちの心に差し込んでいくさまを、瑞々しい映像と多面的な物語のなかで描きあげた。

特別賞

-映画ファンを魅了した事象に対し表彰-

高校演劇の素晴らしさを発信すると共に映画ならではの表現であらゆる世代の共感の輪を広げた『アルプススタンドのはしの方』に対して
城定秀夫監督、及びスタッフ・キャスト一同

応援席の高校生たちにフォーカスしたカメラフレームは、風で揺れる木々やブラスバンドの演奏、打球音を織り込み、「しょうがない」から「ガンバレ」へと感情の変化を捉え、観客をアルプススタンドに引き込んで、落涙するほどの感動を与えた。

手作りアニメーションのきめ細かいモーションによって音楽のエモーションを伝えた『音楽』に対して
岩井澤健治監督、及びスタッフ・キャスト一同

音楽に縁遠かった男子高校生たちが初めて音を出した喜びからその魅力に目覚めていくさまを、繊細且つ膨大な線の動きと音楽のシンクロによってエモーショナルな作品に仕上げ、観客を興奮の坩堝に誘い込んだ。

最優秀男優賞

-本年度最も心に残った男優を表彰-

福山雅治
『ラストレター』『マチネの終わりに』

『ラストレター』において、若かりし日の恋慕を引きずりつつも前を向かないといけないと逡巡する作家の姿を、一文字一文字大切に綴る手紙の如くワンシーンごとに情感をこめて演じることにより、作品の世界観に溶け込み、観客の心に強く響いた。

濱田岳
『喜劇 愛妻物語』『グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇』『コンフィデンスマンJP プリンセス編』『決算!忠臣蔵』『ヒキタさん! ご懐妊ですよ』

『喜劇 愛妻物語』において、妻との丁々発止のやりとりのなかでダメ男の願望やリアクションを絶妙の間で展開しつつも、根っこにある家族への愛情をにじませ、どこにでも居そうだけれど唯一無二のにくめないキャラクターを創りあげた。

最優秀女優賞

-本年度最も心に残った女優を表彰-

水川あさみ
『喜劇 愛妻物語』『グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇』『ミッドナイトスワン』

『喜劇 愛妻物語』において、うだつの上がらない夫に浴びせる辛辣で小気味良い罵倒で悪態をつきつつも、心のどこかで夫を信じ、期待している芯の強さを示し、切れ味ある演技に悲喜交々をまとわせて一段の進境を示した。

長澤まさみ
『MOTHER マザー』『コンフィデンスマンJP プリンセス編』

『MOTHER マザー』において、感情移入する毎に絶望の底へ観客を落とし込むかのごとく翻弄し、脳裏から離れられない凄みを表現した。壮絶なまでの“影”に挑み、自堕落でありながら魅惑的な母親を演じることで、新境地をスクリーンに刻み付けた。

最優秀新進監督賞

-本年度最も飛躍した監督、もしくは顕著な活躍をした新人監督を表彰-

HIKARI監督
『37セカンズ』

生まれつき障がいをもつ一人の女性が、人生の喜びを得たいと願い、愛がゆえに掛け違う母との関係をも克服しながら、殻を破って自分の世界を輝かせていくさまを、アニメーションや漫画などを織り交ぜ、多彩に表現してみせた。

ふくだももこ監督
『君が世界のはじまり』

さまざまな悩みを抱え、一筋縄ではいかない高校生たちの心の内側を描きあげた。孤独を感じる彼らが人を想うことで痛みを伴いながらも他者と心を通わせようと世界を切り拓いていく姿に勇気づけられた。

最優秀新進男優賞

-本年度最も飛躍した男優、もしくは顕著な活躍をした新人男優を表彰-

宮沢氷魚
『his』

物静かな佇まいと透き通るような眼差しは、孤独や不安など、心の揺れ動くさまをありのままに表現し、葛藤しながらも壁を乗り越えていく姿からは、静かな力強さが感じられた。役に真摯に向き合う姿勢は、表現者としてのさらなる飛躍を予感させる。

北村匠海
『サヨナラまでの30分』『思い、思われ、ふり、ふられ』『影踏み』『ぼくらの7日間戦争』『思い、思われ、ふり、ふられ(アニメ版)』

憂いをおびた眼差しや細やかな心情を表現するふとした仕草で魅了するだけでなく、心に届く声のトーンでも観客の共感を呼び覚ました。どのジャンルにおいても地に足の着いたキャラクターとして存在させる力は、今後の躍進を確信させた。

最優秀新進女優賞

-本年度最も飛躍した女優、もしくは顕著な活躍をした新人女優を表彰-

松本穂香
『君が世界のはじまり』『わたしは光をにぎっている』『酔うと化け物になる父がつらい』『his』『青くて痛くて脆い』

映画の情景と調和する創造的な柔軟性で、時に言葉以上に全身の表情やふるまいで語り、作品に確かなリアリティを与えてくれた。静かな情熱に支えられた豊かな表現力でこの先より高く羽ばたくことを感じさせる。

森七菜
『ラストレター』『青くて痛くて脆い』『地獄少女』『最初の晩餐』

『ラストレター』において、天真爛漫な役を輝くような透明感をもって活き活きと演じ、物語に爽やかな風を送り込んだ。高い感受性で、あどけなさから愁いをおびた表情まで豊かに表現する姿は、女優としての未来を期待させる。

第11回(2019年)


最優秀作品賞

-本年度最も活力溢れる作品の監督、及びスタッフ・キャストに対し表彰-

『嵐電』
鈴木卓爾監督、及びスタッフ・キャスト一同

映画草創期に撮影所が立ち並んだ京都の街並みを誰かの想いをのせて走る嵐電は映画を撮ること、観ること、生活することという確かな手ざわりを夢幻の眼差しでとらえていた。孤独と向きあいながらも、想像することの尊さに気づかせてくれた。

『長いお別れ』
中野量太監督、及びスタッフ・キャスト一同

<長いお別れ>により家族の形態に変化が訪れても、心に刻まれている何かは変わらない。夫婦の深い愛情によって親を敬う心や家族のDNAが育まれるさまを丁寧に描き、演技・台詞・演出の絶妙なブレンドにより至福な思いに観客をあまねいた。

特別賞

-映画ファンを魅了した事象に対し表彰-

天空のさまざまな事象をモチーフに、観る人の心を奮わせるような『天気の子』の壮大であり緻密なアニメーション描写に対して
新海誠監督、及びスタッフ・キャスト一同

まばゆいばかりに緻密に描かれた雨の描写や東京の街並みは魅惑的で、少年・少女が彷徨っていたその街並みから壮大な天空に放たれた開放感は言葉に表現できないほどの映像体験を観客にもたらし、圧倒した。

政治テーマのサスペンス・ドラマとして、 幅広い世代の共感を得た『新聞記者』に対して
藤井道人監督、及びスタッフ・キャスト一同

昨今の政治的題材に取り組みながら、大きな情勢に翻弄され苦悩する個人に光を当てた人間ドラマを作り上げ、劇場では満席が相次ぎ、終演で拍手が起こるという所謂「新聞記者現象」を引き起こした。

最優秀男優賞

-本年度最も心に残った男優を表彰-

山﨑努
『長いお別れ』

認知症の進行により周囲が見えなくなり言葉や表情が失われていくなかで一瞬みせる敬愛する家族の長としてのお父さんの姿は、観客からも応援したくなる魅力に溢れ、俳優・山﨑努の凄みを感じさせた。

井浦新
『嵐電』『こはく』『赤い雪』『止められるか、俺たちを』『宮本から君へ』『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』

経験に裏打ちされる思慮深さ、知性と品、大人の色気、それらを役柄によって自在に調節し作品のカラーに溶け込む、映画界になくてはならない存在である。また、作品への愛に溢れるふるまいは賞賛に値する。

最優秀女優賞

-本年度最も心に残った女優を表彰-

蒼井優
『長いお別れ』『宮本から君へ』『斬、』『ある船頭の話』『海獣の子供』

『長いお別れ』で病が進む老父の傍らで笑い泣きする次女を、『宮本から君へ』で公然プロポーズを意地で撥ね退ける愛しい恋人を、『斬、』で無常の時代に届かない叫びをあげる村娘を。多岐にわたる役柄を演じ分け、観客の脳裏に鮮烈に焼き付けた。

前田敦子
『旅のおわり世界のはじまり』『葬式の名人』『町田くんの世界』『マスカレード・ホテル』『コンフィデンスマンJP』

『旅のおわり世界のはじまり』において、右も左もわからない異国の地で孤独感に苛まれるかよわさと、それに対峙してはね返す強靭さを兼ね備える女性像は、女優・前田敦子の資質・魅力と鮮やかにシンクロし、稀有な存在感を放った。

最優秀新進監督賞

-本年度最も飛躍した監督、もしくは顕著な活躍をした新人監督を表彰-

山戸結希監督
『ホットギミック ガールミーツボーイ』『21世紀の女の子』

瞬きも出来ないような映像の密度と美しさ、胸を高鳴らせる音楽と言葉、そして語られる闇と光が交差する物語。「新しい映画」の定義を更新し続ける山戸結希監督と同じ時代に生きて最新作を受け取れることはこの上ない希望である。

奥山大史監督
『僕はイエス様が嫌い』

少年の無垢な思いが神聖な輝きを放ち、セリフはわずかなのに画面が雄弁に語りかけて観客の心を揺さぶる。一方、テーマにアクセントを与える手のひらサイズのイエス様が出現。初の長編作品で崇高且つユーモア溢れる作品を創り上げた才気に感服した。

最優秀新進男優賞

-本年度最も飛躍した男優、もしくは顕著な活躍をした新人男優を表彰-

成田凌
『愛がなんだ』『チワワちゃん』『さよならくちびる』『人間失格 太宰治と3人の女』『翔んで埼玉』『スマホを落としただけなのに』『ビブリア古書堂の事件手帖』『ここは退屈迎えに来て』

『愛がなんだ』『さよならくちびる』ではごく身近にいそうな自然な佇まいで役に溶け込み、『チワワちゃん』では誰もが持つ弱い部分を丁寧に演じるなど多彩な表現力で観客を魅了した。

清水尋也
『ホットギミック ガールミーツボーイ』『パラレルワールド・ラブストーリー』『貞子』

『ホットギミック ガールミーツボーイ』において、冷徹な態度と相反する狂熱な想いを秘めている不器用で一途な少年を、優れた感性と瞬発力で的確に内面を引き出した。 清水尋也にしかない独特な存在感は、何かを起こしてくれそうな期待を抱かずにはいられない。

最優秀新進女優賞

-本年度最も飛躍した女優、もしくは顕著な活躍をした新人女優を表彰-

岸井ゆきの
『愛がなんだ』『ここは退屈迎えに来て』『いちごの唄』『ゲキ×シネ「髑髏城の七人」Season風』

『愛がなんだ』において、振り切った感情で突き進んでいくヒロイン・テルコを、大胆な立ち居振る舞いと繊細な眼差しで体現し、リアルな恋愛群像劇のなかにキュートな魅力をもって立ち上がらせた。

シム・ウンギョン
『新聞記者』

真実を問いかけ追い続ける真剣な表情・確かな演技力は、言葉や思想を越えて観るものを強烈に作品に引き込み、初出演の日本映画で鮮烈な印象を残した。これからの彼女の歩みの先を期待せずにはいられない。

第10回(2018年)


最優秀作品賞

-本年度最も活力溢れる作品の監督、及びスタッフ・キャストに対し表彰-

『万引き家族』
是枝裕和監督、及びスタッフ・キャスト一同

人は寄り添わなければ生きていけない。血がつながっていてもいなくても、いがみあうこともあれば無償の愛を注ぐこともある。この作品は当たり前と思っているその集合体がどのような結びつきなのか、改めて観客に問いかけ、胸に迫る。

『寝ても覚めても』
濱口竜介監督、及びスタッフ・キャスト一同

「人は人のどこに惹かれ、愛する気持ちが生まれるのか」。この哲学的なテーマを本能の赴くままの行動が引き起こす乱反射から炙り出し、理性の影に潜む愛の奥深さを観客に味わわせた。

特別賞

-映画ファンを魅了した事象に対し表彰-

1日の暮らしから「画家・熊谷守一」の豊かな世界を描き出した『モリのいる場所』に対して
沖田修一監督及び山﨑努・樹木希林、はじめスタッフ・キャスト一同

熊谷守一夫妻のお互いの深い理解と愛情に裏打ちされた労わりあう姿や、草木が生い茂り、多様な生き物たちが生息する庭で飽くことなく過ごすモリの佇まいが、ほっこりとした感動をもたらしてくれた。

面白い映画を観てもらいたいとの熱意と工夫が大きなムーヴメントを起こし、自主映画界に勇気を与えた『カメラを止めるな!』の快挙に対して
上田慎一郎監督、及びスタッフ・キャスト一同

めくるめく仕掛けによる映画の楽しさと手作り感溢れる上田監督・スタッフ・キャストの疾走感が観客にも感染し、映画界だけでなく多くの人を巻き込むムーヴメントを起こしている。

最優秀男優賞

-本年度最も心に残った男優を表彰-

東出昌大
『寝ても覚めても』『菊とギロチン』『パンク侍、斬られて候』『OVER DRIVE』『予兆 散歩する侵略者 劇場版』

二役を演じた『寝ても覚めても』をはじめ、静から動まで役柄を幅広く演じ、躍動的でありながら温もりをも感じさせた。それは東出昌大の人間的魅力が画面ににじみ出て、役者・東出昌大のアイデンティティを確立させたようにも思えた。

松坂桃李
『孤狼の血』『娼年』『不能犯』『彼女がその名を知らない鳥たち』

作品ごとにまったく異なる境遇に生きる若者の姿をほとばしる情熱で息衝かせた迫真の演技は観客を魅了した。役を生き、役と共に成熟へと向かう姿は観客の心を掴んで離さない。

最優秀女優賞

-本年度最も心に残った女優を表彰-

安藤サクラ
『万引き家族』『DESTINY 鎌倉ものがたり』

『万引き家族』において、信代という女性のこれまで生きてきた時間が体温ごと伝わってくるような迫真の演技は、架空の人物と思えないほど、観終わった後の観客の心に確かな実在感を残した。

松岡茉優
『勝手にふるえてろ』『万引き家族』『ちはやふる -結び-』『blank13』

『勝手にふるえてろ』において、稀にみるこじらせ型のヒロインに血を通わせ、強いシンパシーと共に観客の心をふるわせるバイタリティ溢れる女優は松岡茉優以外に考えられない。

最優秀新進監督賞

-本年度最も飛躍した監督、もしくは顕著な活躍をした新人監督を表彰-

今泉力哉監督
『パンとバスと2度目のハツコイ』

ままならない人生や、行き場のない想いや、孤独も引き受けて自分の足で歩いていく人たちの姿が清々しく、平凡な日常のなかにも存在する美しさや尊さに気付かせてくれる。

三宅唱監督
『きみの鳥はうたえる』

いつか終わってしまう青春を抱きしめるような男女3人のささやかなやりとりは愛おしく、柔らかな光に包まれた函館の街を歩き、音楽に身をまかせ夜を越えていく様は幸福感に溢れている。

最優秀新進男優賞

-本年度最も飛躍した男優、もしくは顕著な活躍をした新人男優を表彰-

吉村界人
『モリのいる場所』『悪魔』『サラバ静寂』『ビジランテ』

『悪魔』をはじめ劇中で発せられる言葉にならない叫びは痛みを伴い、真に迫る姿は観る者の心を強く揺さぶった。また、『モリのいる場所』では小さくも豊かな日常の出来事に好奇心を募らせていく様を表現し、モリとその世界に心惹かれる体験を観客と共有した。

吉沢亮
『リバーズ・エッジ』『猫は抱くもの』『銀魂2 掟は破るためにこそある』『ママレード・ボーイ』『悪と仮面のルール』『レオン』『斉木楠雄のΨ難』

多彩な表情で心の奥に闇を抱えた役から相手を包み込む優しさをもつ役まで幅広く演じ、その奥深い眼差しは観る者を虜にした。繊細で深みのある佇まいは、まだ見ぬ新たな表現を期待させる。

最優秀新進女優賞

-本年度最も飛躍した女優、もしくは顕著な活躍をした新人女優を表彰-

深川麻衣
『パンとバスと2度目のハツコイ』

淡々とした日々の生活のなかでひとりで生きる時間を尊ぶ姿を身に備わった奥ゆかしさで表し、役に融和した。孤独に包まれ佇んでいる様に表情・しぐさ・声色で繊細な表現を加え、作品に温もりを与えた。

伊藤沙莉
『榎田貿易堂』『パンとバスの2度目のハツコイ』『寝ても覚めても』『blank13』

悩み、寄り添い、実直に物言う姿は、小さな日常にある誰しも思いあたる一面を気づかせてくれた。周りの俳優と化学反応を起こしながら自在に作品に溶け込み、「伊藤沙莉」ならではのキャラクター造形により作品に奥行きを与えている。

第9回(2017年)


最優秀作品賞

-本年度最も活力溢れる作品の監督、及びスタッフ・キャストに対し表彰-

『散歩する侵略者』
黒沢清監督、及びスタッフ・キャスト一同

侵略者の地球襲来を通して不穏さを帯びる現代社会を暗喩しつつ、サスペンス、アクションなどテイストの異なるシークエンスを積み重ねながら、見応えのある新しい世界観のエンターテインメントを創り上げた。

『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』
石井裕也監督、及びスタッフ・キャスト一同

今の東京において溢れんばかりに飛び込んでくる情報と都会の情景。そのなかで孤独と見えない不安に苛まれながら愚直なまでの優しさを携えて寄り添う若者の姿は、観客に希望を与え、一人ひとりの内なる感情と共鳴した。

特別賞

-映画ファンを魅了した事象に対し表彰-

エモーショナルな躍動感をスクリーンから解き放つアニメの新たな可能性を切り拓く先駆者として
湯浅政明監督、及びスタッフ・キャスト一同
『夜は短し歩けよ乙女』『夜明け告げるルーのうた』

他者との巡り会うなかで過ごす人生の愛おしさを、アニメーションであることを最大限に活かした縦横無尽・闊達自在な映像表現によってスクリーンの前に放流し、観客に醒めやらぬ刺激と幸福感を与えた。 

身近な仲間と自分たちの生きる世界を捉えてきた映像制作集団・空族の試みが、更なる拡がりをみせた『バンコクナイツ』に対して
富田克也監督、及びスタッフ・キャスト一同

東南アジアの楽園のイメージと現実とを俯瞰しつつ、その間で翻弄される人々の坩堝に分け入って世界を捉えた本作は、スクリーンの彼岸と此岸とを共振させ、映画と現実がオーバーラップする圧倒的な映画体験をもたらした。

最優秀男優賞

-本年度最も心に残った男優を表彰-

浅野忠信
『幼な子われらに生まれ』『沈黙 -サイレンス-』『淵に立つ』『新宿スワンⅡ』

長いキャリアのなかでさまざまな役柄を演じてきたからこそ生まれる存在感で映画に深みと魅力を与え、観客の想像力を掻き立てるクリエイティビティあふれる俳優として唯一無二の存在であり続けるであろう。

池松壮亮
『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』『続・深夜食堂』『デスノート Light up the NEW world』『永い言い訳』

いずれの作品においてもすぐ身近にいる人間のように思わせてくれる緩急自在で豊かな人物造形力は、作品に奥行きを与えると共に周囲の人物をも輝かせ、心置きなく観客を作品の世界観に誘う魅力に溢れている。

最優秀女優賞

-本年度最も心に残った女優を表彰-

満島ひかり
『海辺の生と死』『愚行録』

『海辺の生と死』において、島尾ミホが降臨したかのように加計呂麻島の言葉とリズムで語り歌いふるまい、島の神話的世界と終戦間際の生と死の極みにおける愛を匂い立つように表現して、圧倒的な存在感を観客に与えた。

長澤まさみ
『散歩する侵略者』『銀魂』『追憶』『金メダル男』

『散歩する侵略者』において、予期せぬ出来事に運命を翻弄されながら情味のある日常感覚でそれに対峙し、極限状態においてすべてを包み込む寛大で奥深い愛情表現に磨き上げられた女優としての器の大きさを感じさせた。

最優秀新進監督賞

-本年度最も飛躍した監督、もしくは顕著な活躍をした新人監督を表彰-

菊地健雄監督
『ハローグッバイ』『望郷』

現場で培った確かな表現力と人間観察力で少女たちの今しか撮れない瞬間をリアルに切り取りつつ、すべての世代に響く普遍的でビタースイートな青春映画を誕生させた。監督の「映画」に対する誠実さは、遠からず大輪の花を咲かせることを予感させる。

瀬田なつき監督
『PARKS パークス』

一つの公園で時を超えて広がるメロディーが、そこで過ごしたさまざまな人々の息づかいに触れて幾重にも重なり世界が彩られていく様を、軽やかなタッチで描き、映画の豊かさを味わわせてくれた。

最優秀新進男優賞

-本年度最も飛躍した男優、もしくは顕著な活躍をした新人男優を表彰-

間宮祥太朗
『トリガール!』『帝一の國』『劇場版 お前はまだグンマを知らない』『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』

真っ直ぐでアグレッシブな役柄を、豊かな表情と鍛え上げた身体を使ってエネルギッシュ且つ繊細に演じて、観客をスクリーンに釘付けにした。鋭く優しい瞳の奥に、作品と役への深い愛情が感じられる。

高杉真宙
『逆光の頃』『散歩する侵略者』『トリガール!』『想影(おもかげ)』『ReLIFE リライフ』『PとJK』

『逆光の頃』において、マイペースに生きてきた少年が過去の自分から脱皮して大人へと一歩踏み出していく確かな成長を体現し、華奢に見えながら力強い眼差しや気概によって発せられる逞しさに心を奪われた。

最優秀新進女優賞

-本年度最も飛躍した女優、もしくは顕著な活躍をした新人女優を表彰-

石橋静河
『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』『PARKS パークス』『密使と番人』

スクリーンのなかで語り動き回るさまは、漠然とした不安や孤独といった心の揺らぎを繊細に表現して内面から輝きを放った。その確かな存在感は、息の長い女優になっていくことを観客に確信させた。

土屋太鳳
『トリガール!』『PとJK』『兄に愛されすぎて困ってます』『金メダル男』

どの役に対しても誠心誠意ひたむきに向かい合い、あふれる笑顔と抜群の運動神経で弾けんばかりに演じ切る姿は、観客の心をわしづかみにすると共に、今後一層の活躍を期待させる輝きに満ちていた。

第8回(2016年)


最優秀作品賞

-本年度最も活力溢れる作品の監督、及びスタッフ・キャストに対し表彰-

『オーバー・フェンス』
山下敦弘監督、及びスタッフ・キャスト一同

心に痛みを抱え、未来に望みを持てずにいる人々の悲哀がそれぞれの迷いに寄り添いながら描かれ、彼らが自らの殻を破って新たな道を歩んでいくさまは、雲の切れ間から差す光のように観客に希望を与えた。

『団地』
阪本順治監督、及びスタッフ・キャスト一同

団地という小宇宙における市井の人々の生活をコミカルに描く一方、天から見下ろした世界観で家族の情愛を描き、見事な演技のアンサンブルで両者を融合させて、慈愛に溢れる心に響くドラマを誕生させた。

特別賞

-映画ファンを魅了した事象に対し表彰-

現代社会に画然と存在する暴力を善悪を超えてストレートに描き出した『ディストラクション・ベイビーズ』の衝撃に対して
真利子哲也監督&柳楽優弥、及びスタッフ・キャスト一同

常軌を逸した主人公の理由なき暴力は、人間が潜在的に持つ暴力への渇望やみなぎる魂の叫びを鮮烈に浮かび上がらせ、戦慄と共にその本質が何であるかを観客に強く投げかけた。

『ジョギング渡り鳥』における映画の新たな可能性を切り開く自由で豊かな創造性に対して
鈴木卓爾監督、及びスタッフ・キャスト一同

新しい映画を共に探求するスタッフ・キャストそれぞれの眼差しの交錯が、登場人物の孤独ひいてはそれをみつめる観客の孤独をも優しく包み込み、かつてない驚きと喜びに溢れた映画体験をもたらした。

最優秀男優賞

-本年度最も心に残った男優を表彰-

三浦友和
『葛城事件』『64 -ロクヨン-』

『葛城事件』において、孤立無縁の自分のありさまに目をつむり、屈折した愛情で家族を支配するモンスターのような父親でありながら、家族の小さな幸せを願う心根の優しい一面をものぞかせる奥行きの深い演技で、その存在を観客の脳裏に深く刻んだ。

オダギリジョー
『オーバー・フェンス』『FOUJITA』

『オーバー・フェンス』において、内面に欠落を抱えた男が、心に傷を持つ人々や自分自身と向き合うことで、新たに人生を切り開いていく姿を演じきった。歳を重ねたことで、豊かな表現力に磨きがかかり、人生の苦さをにじませる役柄に血を通わせた。

最優秀女優賞

-本年度最も心に残った女優を表彰-

小泉今日子
『ふきげんな過去』

小泉今日子として生きてきた時間のすべてが役柄を演じるうえで厚みとなり、非日常的な不思議な世界のなかで忘れがたい存在感を残した。年齢を重ねた美しさと何ものからも自由である強さは女性にとっての希望である。

蒼井 優
『オーバー・フェンス』『岸辺の旅』『家族はつらいよ』

『オーバー・フェンス』において、傷つきながらも他者との繋がりを渇望し、愛を希求し続ける女性の姿を大胆かつ危うげに演じ、その豊かな表情と奔放でしなやかな動きは見る者すべてを夢中にさせた。

最優秀新進監督賞

-本年度最も飛躍した監督、もしくは顕著な活躍をした新人監督を表彰-

前田司郎監督
『ふきげんな過去』

少女にとって想像の域を出ない平凡な日常に苛立つ日々のなか、それを壊していく爆弾のような母との交流を経て、想像よりも面白い日常に気づき未来が拓けていく、唯一無二のひと夏の空気を切り取った。

小泉徳宏監督
『ちはやふる -上の句-』『ちはやふる -下の句-』

「ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは」の歌にある眩い紅葉と煌めく水面の如く輝く登場人物の青春を描き、その輝きで作品のすみずみまで色鮮やかに染め上げた。

最優秀新進男優賞

-本年度最も飛躍した男優、もしくは顕著な活躍をした新人男優を表彰-

若葉竜也
『葛城事件』

支配的な父の元で心を歪ませていく少年の姿と、事件を起こした後の面会で目が据わりふてくされた自暴自棄の態を、実在する人物と見紛うまでに真に迫って演じ、観客を圧倒した。

村上虹郎
『ディストラクション・ベイビーズ』『夏美のホタル』『さようなら』

思春期の危うい空気感を醸し出しながらいつも遠くをみつめている、不安と希望をあわせ持つ若者像をセンシティブに創りだす姿は、日本映画の新たな地平を切り拓いていく大きな期待を抱かせた。

最優秀新進女優賞

-本年度最も飛躍した女優、もしくは顕著な活躍をした新人女優を表彰-

松岡茉優
『ちはやふる -下の句-』『猫なんかよんでもこない。』

若くして役柄やシーンの魅力を掌握できる力は群を抜き、『ちはやふる』ではかるたクィーンとして主人公・千早とのライバル関係を際立たせることにより、青春映画としての躍動感を一気に加速させた。

小松菜奈
『ディストラクション・ベイビーズ』『黒崎くんの言いなりになんてならない』『バクマン。』『ヒーローマニア -生活-』

白いキャンパスが何色にも染められるように、多彩な役柄を色鮮やかに演じた。吸い込まれそうな奥深い瞳は観客を魅了するとともに、将来の活躍を期待させる魅力に満ちている。

第7回(2015年)


最優秀作品賞

-本年度最も活力溢れる作品の監督、及びスタッフ・キャストに対し表彰-

『海街diary』
是枝裕和監督、及びスタッフ・キャスト一同

家族や友人との別れや死によって新たな関係が築かれていく時の移ろいを、四姉妹と街の人々の日々の営みをとおして描き、 人生がほろにがくも素晴らしいことを深く響かせてくれた。

『きみはいい子』
呉美保監督、及びスタッフ・キャスト一同

現代に生きる痛みと微細な心の震えを多面的に描くことで登場人物に寄り添い、彼らが他者との関わりを通して閉塞した日常に小さな光を見いだすさまは、等身大の救いとなる一歩前に踏み出す力を観客に与えてくれた。

特別賞

-映画ファンを魅了した事象に対し表彰-

高い志と使命感で制作され、戦争とは何かを新しい形で後世に伝えた『野火』に対して
塚本晋也監督、及びスタッフ・キャスト一同

戦場で極限状態に置かれた人間の、本能と理性のせめぎ合いを臨場感あふれる表現で描き出し、戦争体験のない観客にも真の恐怖や痛みを追体験させた。平和を誠実に希求しながら生きる礎(いしじ)として幅広い世代に強く深く永く刻まれる作品となった。

最優秀男優賞

-本年度最も心に残った男優を表彰-

永瀬正敏
『あん』『KANO~1931海の向こうの甲子園~』

役柄を心と体で受け止め、まさにそこに生活している人として演じきった。民族・病苦・差別などの壁を乗り越えて互いに敬意を払って生きていく姿の美しさを身をもって観客に示した。

綾野剛
『新宿スワン』『ピース オブ ケイク』『天空の蜂』『ソレダケ / that’s it』『S-最後の警官- 奪還RECOVERY OF OUR FUTURE』

どの役柄にも常に全力投球することで、重さと軽さのバランスを的確にコントロールし、時に屈託のない笑顔をのぞかせ、時に研ぎ澄まされた狂気も感じさせる幅広い表現力と魅力をたたえた俳優へと飛躍した。

最優秀女優賞

-本年度最も心に残った女優を表彰-

樹木希林
『あん』『駆込み女と駆出し男』『海街diary』

作品に添いながら、どの役においてもふさわしい輝きを放ち、ふくよかさとおかしみと希望とを私たちに感じさせてくれた。そして、どのような状況に置かれていても、この世に生き、存在することの素晴らしさを伝えてくれた。

綾瀬はるか
『海街diary』

鎌倉の日本家屋に住む四姉妹の家族の長としての凛とした佇まいや立ち居振る舞いの美しさは昭和の女優の面影を漂わせ、身近な人の死を受け入れることによって自己を内面から変える女性の成長を演じきった。

最優秀新進監督賞

-本年度最も飛躍した監督、もしくは顕著な活躍をした新人監督を表彰-

岨手由貴子監督
『グッド・ストライプス』

結婚を目前にした男女の日常を独創的な視点で切り取ることで、完璧ではない人生の愛おしさを描き出し、ドラマチックでない日々のなかに幸せな瞬間があることを気付かせてくれた。

松居大悟監督
『私たちのハァハァ』『ワンダフルワールドエンド』

「今」という瞬間を夢中で駆け巡る10代の少女たちの姿を、身勝手さや儚さを交えながら等身大の目線で描き、瑞々しくも骨太な青春映画を誕生させた。

最優秀新進男優賞

-本年度最も飛躍した男優、もしくは顕著な活躍をした新人男優を表彰-

中島歩
『グッド・ストライプス』

結婚という人生の大きな節目を前にした青年が、逡巡しながらも少しずつ歩みを前に進めていくなかで見せる表情の移り変わりや佇まいに目を見張った。今後、ますます深く役柄を掘り下げ、豊かな表現力を磨いていくに違いない。

野村周平
『愛を積むひと』『日々ロック』『ビリギャル』『台風のノルダ』

内面の葛藤や周囲へのいらだちを抱えた少年期のトンネルを抜け青年へと成長していく姿を真摯に演じた。そのひたむきさは観客に強い印象を残した。

最優秀新進女優賞

-本年度最も飛躍した女優、もしくは顕著な活躍をした新人女優を表彰-

広瀬すず
『海街diary』『バケモノの子』

桜並木のトンネルを自転車で駆け抜けるシーンの爽快感、おでこをあげてドリブルするサッカーシーンの躍動感、少女のかけがえのない輝きをスクリーンに表現した存在感は、映画女優としての未来を感じさせた。

杉咲花
『トイレのピエタ』『愛を積むひと』『繕い裁つ人』

『トイレのピエタ』において、余命幾許もない青年にストレートな言葉を投げつけながら無鉄砲に思えるほど全身全霊で生の素晴らしさを伝えようとする少女の姿に胸を強く打たれた。 

第6回(2014年)


最優秀作品賞

-本年度最も活力溢れる作品の監督、及びスタッフ・キャストに対し表彰-

『野のなななのか』
大林宣彦監督、及びスタッフ・キャスト一同

3.11以後、社会が軋みをたてて揺れ動くなか、戦争とそれに翻弄された人々を通して、平和への強い願いと時空を超えた美しい愛の物語をスクリーンに刻み込むような手法で描き、確固とした決意をもって未来への道を示したことに敬意を表して。

『ぼくたちの家族』
石井裕也監督、及びスタッフ・キャスト一同

一見、平穏で幸せそうな家庭に内在する不協和音や愛だけでは解決し得ない問題など、想像だにしなかった現実の苦さに直面し、それでもなお家族がそれを乗り越えていくなかで生まれた強い絆が、暗闇の中の希望として強く胸に響いた。

最優秀男優賞

-本年度最も心に残った男優を表彰-

妻夫木聡
『ぼくたちの家族』『清須会議』『ジャッジ!』『小さいおうち』『渇き。』『STAND BY ME ドラえもん』『舞妓はレディ』

『ぼくたちの家族』において、この家族の長男のごとく周囲の登場人物の役割・存在を受け止め、それを際立たせ輝かせるとともに、困難に愚直に立ち向かいながら成長していく姿を体温を持って演じ、作品に厚みを与えた。

大泉洋
『青天の霹靂』『清須会議』

『青天の霹靂』では屈折した性格でありながらも誰もが親しみを覚える主人公を、『清須会議』では天下人の野望を抱く天性のひとたらし秀吉を演じきり、幅のある役柄のなかで人情喜劇を演じる当代きってのコメディ俳優へと階段を駆け上がった。

最優秀女優賞

-本年度最も心に残った女優を表彰-

二階堂ふみ
『私の男』『ほとりの朔子』『渇き。』『四十九日のレシピ』

ある時は瑞々しい少女、ある時は危うげで魅惑的な女性へと変貌し、女性の持つさまざまな側面を表現する自在な演技力とスクリーンでの存在感に圧倒させられた。

池脇千鶴
『そこのみにて光輝く』『潔く柔く』『くじけないで』『神様のカルテ2』

『そこのみにて光輝く』において、自分のおかれた環境から生じる絶望感や倦怠感を背中で物言うように発散させながらも、時として無性に甘くそして優しい、情愛の深い女性像を見事に体現した。

最優秀新進監督賞

-本年度最も飛躍した監督、もしくは顕著な活躍をした新人監督を表彰-

劇団ひとり監督
『青天の霹靂』

お笑い芸人出身ならではの笑いをはさみつつ、大泉洋がノーカットで披露したマジックの鮮やかさなど、画面の隅々までこだわる監督のあくなき探求が、誰もが感情移入できるウェルメイドの人情劇を誕生させた。次回作を観たいと思わせる魅力に溢れている。

坂本あゆみ監督
『FORMA』

誰もが起こし得る些細な罪悪や人間の性を描き出す繊細な表現力と、独創的な手法で想像力をかき立て観客を惹き付ける手腕は、世界に通じる力強い作家性を感じさせる。

最優秀新進男優賞

-本年度最も飛躍した男優、もしくは顕著な活躍をした新人男優を表彰-

菅田将暉
『そこのみにて光輝く』『男子高校生の日常』『陽だまりの彼女』『闇金ウシジマくん Part2』

どの役を演じるときも、生い立ちや生活感、長所・短所や生き様までも丸ごと飲み込んだように全身全霊で立ち向かい、鮮烈に演じきる実力と勢いに目を見張らされた。

太賀
『ほとりの朔子』『男子高校生の日常』『人狼ゲーム』『MONSTERZ モンスターズ』『私の男』『スイートプールサイド』

内面から役を作りこむことにより役の振れ幅をきめ細かく演じ分け、周囲の俳優と化学反応を起こしながら作品の空気感を醸成できる資質は、若くして名優の佇まいを感じさせる。

最優秀新進女優賞

-本年度最も飛躍した女優、もしくは顕著な活躍をした新人女優を表彰-

能年玲奈
『ホットロード』

純粋さ、切なさ、切実さといった少女の心情を黒い瞳の奥の輝きで表現し、80年代の古典的なラブストーリーを現代に甦らせた圧倒的な存在感は、新たな時代の映画女優誕生を感じさせる。

門脇麦
『愛の渦』『闇金ウシジマくん Part2』

おとなしくおどおどしている女性像が相応しいのかと思いきや、一転してみせる肝の据わった攻めの演技が鮮やかで、これまでにないタイプの女優としてどのようなスタイルを構築していくのか今後の活躍が楽しみでならない。

特別賞

-映画ファンを魅了した事象に対し表彰-

『祖谷物語 ~おくのひと~』において、四季折々の祖谷の大自然に真っ向から挑み、重厚な人間ドラマを構築させた映画にかける情熱に対して
蔦哲一朗監督、及びスタッフ・キャスト一同

日本三大秘境といわれる祖谷の厳しい大自然のなかで営む生活を、1年間かけて撮影したその情熱と真に迫る映像の迫力は、都会の便利な生活に慣れきってしまった現代人に、人間としての生き方を考え直す機会を与えてくれた。

第5回(2013年)


最優秀作品賞

-本年度最も活力溢れる作品の監督、及びスタッフ・キャストに対し表彰-

『さよなら渓谷』
大森立嗣監督、及びスタッフ・キャスト一同

極限の愛の形・人間関係のなかで、人間の持つ繊細さと力強さ、愛と憎しみ、罪と赦し、そして再生と希望を、スクリーンの中で言葉と沈黙と痛みをもって鮮烈に表現した。

『横道世之介』
沖田修一監督、及びスタッフ・キャスト一同

何気ない日常のできごとや些細な記憶、人間の優しさや愛おしさを心地良いテンポでユーモラスに描き、「世之介」に出会えたことで、自分もまた、誰かの人生に関わって生きているということの素晴らしさに気付かせてくれた。

特別賞

-映画ファンを魅了した事象に対し表彰-

『はじまりのみち』を通して木下惠介監督のヒューマニズムと信念を真摯な姿勢で現代に甦らせたことに対して
原恵一監督、及びスタッフ・キャスト一同

時代の波に翻弄されながらも、力を尽くして生きていく庶民の生活と、人間の醜さや美しさ、弱さや強さ、そして日本人の心を描いた木下惠介監督の世界観を真摯に表現し、時代を越えた人間愛を現代に甦らせた。

若者を熱狂の坩堝に巻き込んだ『恋の渦』のエンタテインメント性に対して
大根仁監督、及びスタッフ・キャスト一同

チャラチャラしているけれどなんとも憎めないキャラクターを生み出した若き俳優たちの熱演と、恋愛を軸にしたスリリングな脚本、そして目くるめくテンポで描き切った演出によって、堂々たるエンタテインメントを創りあげた。

最優秀男優賞

-本年度最も心に残った男優を表彰-

松田龍平
『舟を編む』『探偵はBARにいる2』『北のカナリアたち』

『舟を編む』において、実直な青年の成長を内に秘めた情熱と共に体現し、言葉の大切さを言葉でないもので見事に表現した。年齢を重ねるごとに深まる魅力と、これからの日本映画界を担う俳優としての輝きに期待する。

最優秀女優賞

-本年度最も心に残った女優を表彰-

真木よう子
『さよなら渓谷』『そして父になる』『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』『つやの夜』

『さよなら渓谷』において、女性としての尊厳を完膚なきまでに叩き壊され、生きることの絶望を味わいながらも、赦し、自己を立て直し、生き抜く生身の女性を繊細かつ深く豊かな表現力と洞察力で演じきった。

吉高由里子
『横道世之介』『真夏の方程式』

『横道世之介』において、お嬢様育ちの天真爛漫な少女から、時を経て愛おしくかけがえのない日々を振り返る成長した姿へと演じ分け、時の重みと若き日の記憶が人生を豊かにしてくれることを鮮やかに体現した。

最優秀新進監督賞

-本年度最も飛躍した監督、もしくは顕著な活躍をした新人監督を表彰-

中野量太監督
『チチを撮りに』

笑いあり、涙ありの小さな家族の物語でありながら、登場人物の明日に向かって生きていこうとする前向きな姿勢が<人生讃歌>として観客に元気と勇気を与えた。

白石和彌監督
『凶悪』

役者の力を最大に引き出し、容赦ない暴力描写と次第に暴かれる真実によって観客を震わせながら、何が悪で何が正義なのか、答えのない問いへのあくなき探究が日本映画に類を見ないバイオレンス作品を誕生させた。

最優秀新進男優賞

-本年度最も飛躍した男優、もしくは顕著な活躍をした新人男優を表彰-

星野源
『箱入り息子の恋』『地獄でなぜ悪い』『聖☆おにいさん』

『箱入り息子の恋』において、抑え込んでいた熱を爆発させる「箱入り男」の不穏な暴走と崩壊を瑞々しく好演した。今後も俳優のみならず声優や映画音楽など幅広く観客を魅了することを確信させてくれた。

池松壮亮
『横道世之介』『上京ものがたり』

『横道世之介』において、まるで作品中の人物としてずっと生きてきたかのように役柄にはまり、鮮やかな印象を残した。作品ごとに異なる魅力を発見できる俳優であり、これからどんな新しい顔を見せてくれるのか期待が高まる一方である。

最優秀新進女優賞

-本年度最も飛躍した女優、もしくは顕著な活躍をした新人女優を表彰-

黒木華
『シャニダールの花』『舟を編む』『草原の椅子』

ゆったりとした時間を感じさせる古風な雰囲気や文学的な気品を漂わせている一方で、時に明確な自己主張を行い、透明感溢れる演技のなかに役柄を際立ただせる魅力を兼ね備えている。

刈谷友衣子
『シャニダールの花』『中学生円山』『鈴木先生』

映画の世界観を的確に把握することで、非現実的なシーンにおいてもリアリティを与えるだけなく、観客のイマジネーションを高める力があり、これから映画界で高い存在感を示す期待を抱かせた。

第4回(2012年)


最優秀作品賞

-本年度最も活力溢れる作品の監督、及びスタッフ・キャストに対し表彰-

『この空の花 -長岡花火物語』
大林宣彦監督、及びスタッフ・キャスト一同

平和を願い、未来への希望を祈る想いとイマジネーションがずっしり詰まったこの作品は、大震災の体験をとおして生き方を見つめ直している私たちに、生きることの意義を改めて喚起し、勇気を与えてくれた。

『桐島、部活やめるってよ』
吉田大八監督、及びスタッフ・キャスト一同

ごく普通の高校生たちの日常生活を、多面的に登場人物・できごとに光を当てることによって、この年代のもつ心の揺らぎを繊細に救い上げて、青春の一瞬のきらめきとほろ苦さを鮮やかに切り取った。

特別賞

-映画ファンを魅了した事象に対し表彰-

ありあまる母性によって自らが破綻していく、『KOTOKO』の壮絶な女性像に対して
塚本晋也監督&Cocco

母親なら誰しも感じたことのある、弱い存在を抱えて世界と向き合わねばならない恐怖を、塚本晋也監督とCoccoの創造力をもってこの上なく美しく痛ましい映像で表現し、生きていくことへの覚悟を示してくれた。

映画界に新風を巻き起こした「SR サイタマノラッパー」シリーズの快進撃に対して
入江悠監督、及びスタッフ・キャスト一同

シリーズをとおして、インディーズ精神はそのままに、出演者、制作者一丸となって本格派エンタテインメント作品へとステップアップしていった快進撃は映画ファンを熱狂させた。

最優秀男優賞

-本年度最も心に残った男優を表彰-

役所広司
『わが母の記』『キツツキと雨』『聯合艦隊司令長官 山本五十六』

自然体の穏やかな演技のなかにしっかりとした自己を感じさせる人物像をつくりあげるだけでなく、画面にいるだけでまわりの俳優がいきいきと見えてくる影響力を発揮して、作品全体を輝かせていた。

最優秀女優賞

-本年度最も心に残った女優を表彰-

樹木希林
『わが母の記』

時に微笑ましく、時に憎たらしく、時に愛おしく。観客誰しもが自分の母親と重ねあわせ、そのありがたさ、温もりを呼び覚ませてくれる、家族の源・太陽のような母親像の造形に感謝して。

宮﨑あおい
『わが母の記』『天地明察』『ツレがうつになりまして。』『おおかみこどもの雨と雪』

『わが母の記』において、父への反発心を持つ無邪気な少女時代から垣間見える“女”の立ち居振る舞いまで、時間の移ろいのなかで貫き通すまっすぐな家族への想いを女性としての成長のなかで演じきった。

最優秀新進監督賞

-本年度最も飛躍した監督、もしくは顕著な活躍をした新人監督を表彰-

ヤン・ヨンヒ監督
『かぞくのくに』

祖国・北朝鮮の政策とそれに翻弄される家族という重いテーマに対し、その狭間で揺れる家族一人ひとりの心情が手に取るようにわかる普遍性あるドラマに仕立てた手腕は見事というほかはない。

沖田修一監督
『キツツキと雨』

成人した息子と父の情景を、キコリと映画監督の交流を通してユーモラスかつ愛情深く包み込んだ作風は、次の作品を早く観たいと思わせる心豊かな温もりが感じられる。

最優秀新進男優賞

-本年度最も飛躍した男優、もしくは顕著な活躍をした新人男優を表彰-

神木隆之介
『桐島、部活やめるってよ』『SPEC 天』

ナイーブさとコミカルさ、危うさと親しみやすさ、無邪気と屈折、絶妙のバランスと間合いで演じ、幅広い役柄を演じ分ける高い将来性を感じさせた。

満島真之介
『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』

三島由紀夫に心酔する若き活動家・森田の純粋なまでの一途な敬慕と頑強な意志を鋭い眼光で体現し、映画初出演にして第一線の映画俳優になりうることを知らしめた。

最優秀新進女優賞

-本年度最も飛躍した女優、もしくは顕著な活躍をした新人女優を表彰-

前田敦子
『苦役列車』

単なるミューズではなく、生活の実感や煩悶、不安を抱え、バブル期を前にした時代の空気感を身にまとった演技に、今後息の長い女優としての活躍する大きな可能性を感じさせた。

橋本愛
『桐島、部活やめるってよ』『Another』『HOME 愛しの座敷わらし』『貞子3D』など

10代中盤ならではの透明感、苛立ち、戸惑い、不敵さを、時にひらりとした軽さで、時に物語の核となる重さで、青春映画からホラー映画まで見事に演じ分けた。

第3回(2011年)


最優秀作品賞

-本年度最も活力溢れる作品の監督、及びスタッフ・キャストに対し表彰-

『一枚のハガキ』
新藤兼人監督、及びスタッフ・キャスト一同

「今日はお祭りですがあなたがいらっしゃらないので何の風情もありません。」実際に妻から兵士に送られた一枚のハガキから、戦争への憎しみと共に生きることの大切さをユーモアを交えて瑞々しく描きだし、次世代に受け継ぐ豊かな実りを結実させた。

『奇跡』
是枝裕和監督、及びスタッフ・キャスト一同

子どもたちが抱く切実な願いとそれをかなえるための試行錯誤、そして訪れる現実との対峙を、希望をもって描き、<夢を見失ったかつての子どもたち>の背中を後押ししてくれる宝物のような作品を誕生させた。

特別賞

-映画ファンを魅了した事象に対し表彰-

日本映画界の至宝・故・原田芳雄さんと、最期にその情熱を注ぎ映画魂の宿った『大鹿村騒動記』に対して
故・原田芳雄さん、阪本順治監督及びスタッフ・キャスト一同

死してより一層、その存在の大きさを映画ファンの心に刻み込んだ原田芳雄さんと、最期に情熱を注いだ『大鹿村騒動記』の農村歌舞伎に魅せられた人々の喜怒哀楽を大きな心で包んだ人間ドラマの映画的な広がりに敬意を表して。

作品に寄り添い、重層的に盛り上げる岸田繁(くるり)の映画音楽に対して
岸田繁(くるり)

『まほろ駅前多田便利軒』『奇跡』において、登場人物に寄り添い、時に感情の趣を牽引し、あるいは作品に化学反応を起こして、作品をより重層的に盛り上げる映画音楽を創りあげた。

最優秀男優賞

-本年度最も心に残った男優を表彰-

光石研
『あぜ道のダンディ』『毎日かあさん』『太平洋の奇跡』など

33年ぶり主演の『あぜ道のダンディ』で、憎めないオヤジの心情を、歌って踊って走って怒って、そして泣く・・・多彩な顔で見事に表現し、世代を問わず強い共感を呼んだ。

最優秀女優賞

-本年度最も心に残った女優を表彰-

永作博美
『八日目の蝉』『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』

(『八日目の蝉』において、)連れ去った愛人の子どもに対して、罪の意識を背負いながら理性よりも母性としての本能が勝って愛情が高まっていく様を全身全霊を傾けて演じ、その思いを残像として観客の脳裏に深く刻み付けた。

小西真奈美
『東京公園』『行きずりの街』

清楚な魅力も湛えつつ、時折見せる憂いのある表情や秘めた情熱を感じさせる佇まいは、はっとするほど観るものを惹きつけ、忘れられない存在感を残した。

最優秀新進監督賞

-本年度最も飛躍した監督、もしくは顕著な活躍をした新人監督を表彰-

深田晃司監督
『歓待』

閉塞感漂う現代日本社会の中で、映画と演劇の垣根を軽やかに越えてそれらを愉快に、シニカルに破壊して、刷新した日本社会像を創ろうと意気込む、野心的な大傑作を生み出した。

前田弘二監督
『婚前特急』

主演吉高由里子をはじめとする個性的なキャストを存分に活かし、単純ではない男女の心理をコメディ満載に描いて、笑えて楽しいエンターテインメント作品として仕上げた。

最優秀新進男優賞

-本年度最も飛躍した男優、もしくは顕著な活躍をした新人男優を表彰-

古舘寛治
『歓待』『マイ・バック・ページ』

映画のなかで類い稀なる飄々とした存在感で観客の意識を惹き付け、他の誰でもなく「古舘寛治」でしかできない独特の演技で役柄を演じ切った。

染谷将太
『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』『東京公園』『あぜ道のダンディ』

作品によって骨太にも軽やかにも演じ分け、そこはかとない色気も漂わせつつも、どの作品においてもその場にふさわしい存在感を持ち得る演技力に対して。

最優秀新進女優賞

-本年度最も飛躍した女優、もしくは顕著な活躍をした新人女優を表彰-

井上真央
『八日目の蝉』『太平洋の奇跡』

(『八日目の蝉』において、)自らの生い立ちにぶつけようのない憤り、癒やされない傷を抱えながらも誰にも頼らず生きていこうとする芯の強さをしなやかにかつ清冽に演じた。

二階堂ふみ
『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』

才能がある故の苦悩、怒りをダイナミックに表現し、全編流れる歌同様にパワフル且つ個性に溢れて、次世代を担う輝きを放っている。

第2回(2010年)


最優秀作品賞

-本年度最も活力溢れる作品の監督、及びスタッフ・キャストに対し表彰-

『告白』
中島哲也監督、及びスタッフ・キャスト一同

現代社会のドロドロした不条理な一面をえぐった刺激的な原作をはるかにスケールアップさせた衝撃的な映像が万人の胸に鋭利に突き刺さった。

『さんかく』
吉田恵輔監督、及びスタッフ・キャスト一同

若いカップルにおきた三角関係を軸に、恋愛のなかで生じる「すれ違い」「思い込み」「独りよがり」等の身近なテーマを軽妙なタッチながら実に繊細に心理描写を描きこみ、強い共感を呼んだ。

特別賞

-映画ファンを魅了した事象に対し表彰-

若松孝二監督のまっすぐなインディペンデント魂に対して(『キャタピラー』)
若松孝二監督

戦後意識が薄れつつある日本において、戦争の悲惨さを力強くストレートに訴える『キャタピラー』の人間ドラマの崇高さ・映像の力に敬意を表して。

最優秀男優賞

-本年度最も心に残った男優を表彰-

堤真一
『孤高のメス』『ヴィヨンの妻』

『孤高のメス』で、出世や名誉には一切無頓着で患者の命を救うことだけに執念を燃やす医師の姿を誠実かつチャーミングに演じきり、その生き様が観客の心に強く残った。

最優秀女優賞

-本年度最も心に残った女優を表彰-

寺島しのぶ
『キャタピラー』

手足を奪われた夫の欲求に嫌悪感を持ちながらも、世間に対する見栄を張りつつ母性愛で包み込む女性の包容力とたくましさを体現した圧倒的な演技に対して。

最優秀新進監督賞

-本年度最も飛躍した監督、もしくは顕著な活躍をした新人監督を表彰-

川口浩史監督
『トロッコ』

陽のこぼれる森林の緑の美しさを背景に芥川龍之介の原作で描かれる「子供たちの時間」を台湾を舞台にすることで現代に鮮やかに甦らせた。

山本寛監督
『私の優しくない先輩』

奇想天外な発想を鮮やかにフィルムに焼き付け、「こんな映像を観たかったんだ」と観客に想起させるたぐいまれなる青春映画を世に送り出した。

最優秀新進男優賞

-本年度最も飛躍した男優、もしくは顕著な活躍をした新人男優を表彰-

大西信満
『キャタピラー』

戦争によって奪われた手足と甦る悪夢、それでも本能のままに「生きていかねばならない」帰還兵の苦しみと痛みを全身全霊で表現した。

金田哲
『私の優しくない先輩』

うざい、むさ苦しい兄貴分になるところを、高い身体能力とキレのある演技で爽やかに演じきり、珠玉の青春ドラマに昇華させた。

最優秀新進女優賞

-本年度最も飛躍した女優、もしくは顕著な活躍をした新人女優を表彰-

安藤サクラ
『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』『SRサイタマノラッパー2』『TORSO』など

どの役柄を演じても、画面からその息遣いからワキガまで伝わってくるほどの存在感は若手俳優のなかで群を抜いている。

忽那汐里
『半分の月がのぼる空』『BECK』

『半分の月がのぼる空』では透明感のある活発な少女でありながら自分の運命の儚さを悟っている影の部分をナチュラルに演じきった。

第1回(2009年)


最優秀作品賞

-本年度最も活力溢れる作品の監督、及びスタッフ・キャストに対し表彰-

『ディア・ドクター』
西川美和監督、及びスタッフ・キャスト一同

人間に対する奥深い洞察力に加え、社会問題、ユーモア、地方社会のありようを包み込んで普遍的な人間ドラマに昇華させた。

『ウルトラミラクルラブストーリー』
横浜聡子監督、及びスタッフ・キャスト一同

この作品全編を貫くまっすぐな想いの力強さは、現代社会の閉塞感を超越した永遠の力がある。

特別賞

-映画ファンを魅了した事象に対し表彰-

八千草薫さんの演技に対して(『ディア・ドクター』、『ガマの油』)
八千草薫

品のあるチャーミングな魅力がこれまで以上にスクリーンで輝いていたことに敬意を表して。

『劔岳 点の記』の撮影に対して(『劔岳 点の記』)
木村大作監督

CGによる映像実現が大勢を占めるなか、大自然に真正面から挑んだ撮影で真実であることによる映像の迫力・ドラマの重みを十二分に体感させた。

最優秀新進監督賞

-本年度最も飛躍した監督、もしくは顕著な活躍をした新人監督を表彰-

深川栄洋監督
『60歳のラブレター』

監督自身が30代前半ながら、団塊世代の恋愛ドラマを描き上げた演出力は本物である。

北川悦吏子監督
『ハルフウェイ』

役者の息遣いが伝わってくるようなナチュラルで身近な高校時代の恋愛模様を透明感溢れる映像でヴィヴィッドに表現した。

最優秀新進男優賞

-本年度最も飛躍した男優、もしくは顕著な活躍をした新人男優を表彰-

高良健吾
『フィッシュストーリー』『ハゲタカ』『蟹工船』『南極料理人』

出演作相次ぐ中、どの作品も確実に強い印象を残し、同年代の俳優のなかでひときわ抜きん出た存在感と演技力を見せた。

渡辺大知
『色即ぜねれいしょん』

初出演、初主演にも関わらず、良い意味で力の抜けた自然な演技とフレッシュな存在感で作品を最後まで引っ張っていった。

最優秀新進女優賞

-本年度最も飛躍した女優、もしくは顕著な活躍をした新人女優を表彰-

満島ひかり
『愛のむきだし』『プライド』

ヒロインを堂々と演じられる実力を持っており、大胆な演技のなかに、凛とした清らかさを放つ希少な存在感が素晴らしい。

金澤美穂
『容疑者Xの献身』『はじめての家出』『60歳のラブレター』

年頃の女の子にありがちな言葉にできないもどかしい感情のもつれを体現し、スクリーン上での存在感を発揮した。