『夏をゆく人々』上映関連企画
『夏をゆく人々』とあわせて観たいおすすめ映画10選
date : 2016/08/24TAMA映画フォーラム実行委員会は2016年8月27日(土)に開催する特別上映会において、第67回カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作『夏をゆく人々』(アリーチェ・ロルヴァケル監督)を上映します。今回の特集では、映画とあわせて鑑賞いただきたいおすすめ映画を紹介いたします。
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『裸足の季節』
(監督:デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン/2015年/97分/フランス、トルコ、ドイツ)
トルコの閉鎖的な田舎町で古い慣習から抜けだそうとする5人の姉妹が瑞々しいタッチで描かれる青春映画。女性に対して抑圧的な世間の視線の中、自由を求める少女たちの思春期の一瞬と、その表情が眩しい。監督は1978年にトルコで生まれ、フランス・アメリカで育ち、パリの国立映画学校フェミスを卒業。本作では、アカデミー賞外国語映画賞のフランス代表となりノミネートされる等、ヨーロッパの若手女性監督として大きな注目を集める存在となった。
『SOMEWHERE』
(監督:ソフィア・コッポラ/2010年/98分/アメリカ)
華やかで気ままな生活を送っているハリウッドスターのジョニー。ある夏、離婚して離れて暮らしていた思春期の娘クレオと再会し、夏休みの僅かな日々を一緒に過ごすことに。家族という形ではなく共にする父娘の時間が、夏の景色の中で幸福に、どこか切なく映される。『夏をゆく人々』がグランプリを受賞した2014年カンヌ国際映画祭で審査員を務めたソフィア・コッポラの長編4作目。思春期の少女の心の機微が丁寧に掬い取られる様子は、『夏をゆく人々』とも通じる。
『ラブン』『細い目』『グブラ』『ムクシン』―オーキッド4部作
(監督:ヤスミン・アハマド/マレーシア)
主人公オーキッドの、幼少時代から学生時代の恋、大人になるまでが4つの作品をとおして描かれる、マレーシアの女性監督ヤスミン・アハマドの代表作。多文化共生社会のマレーシアで、オーキッドと彼女をとりまく人々の様々な関係が、ユーモアあふれる独特のタッチで表現される。監督のヤスミン・アハマドは、この4部作の後『タレンタイム』等を手がけ、日本人祖母のルーツを辿る新作「ワスレナグサ」の製作に取りかかっていたが、2009年に51歳の若さで逝去している。主人公オーキッドのチャーミングなキャラクターはアジア映画のヒロインとして強い存在感を残し、現在も新たなファンを増やし続けている。
『スカイラブ』
(監督:ジュリー・デルピー/2011年/113分/フランス)
『ビフォア・サンセット』や、『汚れた血』などで知られるフランスの女優ジュリー・デルピーが監督、脚本を手がけている本作は、1979年の夏、ブルターニュ地方に住む祖母の誕生日に集まった大家族の週末を、少女の視点から描いた群像劇。ちょっと変わった親戚たちが集まった1日をユーモアたっぷりに描き、家族の素晴らしさを感じさせる。ある夏の日に少女が感じた気持ちを瑞々しく切り取って見せる本作は、監督ジュリー・デルピーの思い出に基づいて作られているそうだ。
『天空のからだ』
(監督:アリーチェ・ロルヴァケル/2011年/100分/イタリア)
思春期の少女がとまどいや葛藤を抱きつつも自分なりの生き方を見つけていく歩みを、繊細な演出と瑞々しい映像でたどるロルヴァケル監督デビュー作品。女性監督だからこそ撮れた13歳主人公マルタが初潮を迎え自分の身体の変化に戸惑うなど、少女の瑞々しいけれど、危うい表情の演出など1作目とは思えない作品である。また、閉鎖されたイタリア南部カトリックの堅信式を通して、精神性が全くなくなり、空洞と化してしまっている宗教問題も痛烈にしっかりと描いている。
『ディーパンの闘い』
(監督:ジャック・オディアール/2015年/115分/フランス)
2015年・第68回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した作品。スリランカの戦禍から逃れるため疑似家族を装い、フランスへ亡命しようとする元兵士ディーパンと女と少女の3人。内戦で妻と子供を失ったディーパンは、本当の家族ではない“新しい家族”のため暴力を捨てた闘いに挑む。移民問題に揺れるヨーロッパ社会を背景に、愛を求め、そして光を求めた人々を描いたヒューマンドラマ。
『海と大陸』
(監督:エマヌエーレ・クリアレーゼ/2011年/93分/イタリア、フランス)
南イタリアのシチリアから遠く離れた地中海に浮かぶリノーサ島を舞台に、イタリアが抱える重い問題を描き、アカデミー賞外国語映画賞イタリア代表として出品された作品。漁業衰退で観光業へとその糧を変えてゆかざるを得ない厳しい島民の状況や、観光客を脅かし、島民の脅威となりつつあるアフリカからの不法移民問題を鋭く描いている。シチリアの澄んだ綺麗な海に美味しい料理といった陽気なイメージとはかけ離れた現実で、観光だけでは分からない閉鎖的な島社会で生きる苦しさを伝えるイタリアの今を象徴する1本。
『ル・アーヴルの靴みがき』
(監督:アキ・カウリスマキ/2011年/93分/フィンランド、フランス、ドイツ)
日本でも人気の名匠アキ・カウリスマキ監督が、北フランスの小さな港町ル・アーヴルの裏通りを舞台に移民をテーマに贈る作品。昔パリで暮らしていた元芸術家のマルセルは現在、港町ル・アーヴルで靴磨きをしながら生計を立てている。マルセルは自分に尽くしてくれる妻と愛犬ライカとの暮らしを楽しんでいた。しかし、ある日妻が病気で入院。その後、アフリカからの難民の少年と出くわし、警察に追跡されている彼をかくまうことにする。密入国の少年と貧しい人々の温かな善意と希望を描いた心温まるヒューマンドラマ。
『ミツバチのささやき』
(監督:ビクトル・エリセ/1973年/99分/スペイン)
スペインの田舎の小さな村に住むアナは、ある日姉のイザベルと一緒に町にやってきた移動映画で『フランケンシュタイン』を見る。映画を見て、怪物が少女を殺したこと、怪物が殺されたことに疑問を持つアナは、彼に会おうと村はずれの空き家に通うようになる。少女がまだ見ぬものに出会った瞬間の好奇心と疑問。ある一晩の少女の放浪と出会いは、誰もが持つ子ども時代の忘れられない記憶や感覚を想起させる。
『道』
(監督:フェデリコ・フェリーニ/1954年/104分/イタリア)
もはや説明不要、フェリーニの映画史に残る美しい1作。『夏をゆく人々』の主人公もジェルソミーナという名前である。アリーチェ・ロルヴァケル監督の現実と幻想が入り混じる神秘的で美しい作品は魔術師と呼ばれたフェリーニをしっかり受け継いでいる。
『夏をゆく人々』ストーリー
イタリアの自然豊かなトスカーナ州で、頑固一徹なドイツ人の父とイタリア人の母のもとに生まれ育った養蜂一家の4人姉妹。長女のジェルソミーナは、まだ12歳ながら父親の寵愛を受け、一家の仕事を支えるのに不可欠な存在として忙しく立ち働く毎日。そんなある日、地方文化の伝統をPRするTVのコンテスト番組のロケ現場にふと遭遇し、女性司会者ミリーの美しさにすっかり魅せられたジェルソミーナは、ひそかにある決意をする。