『東京の恋人』下社敦郎監督インタビュー

date : 2019/05/15
『東京の恋人』主演の川上奈々美さん、森岡龍さん

第17回TAMA NEW WAVEコンペティションにノミネートした『WALK IN THE ROOM』の下社敦郎監督が、新作の長編作品『東京の恋人』を準備している。今秋開催のMOOSIC LAB 2019長編部門での上映も決定した『東京の恋人』の制作に向けて、下社監督からは次のようなコメントが出された。

『東京の恋人』を監督します下社敦郎と申します。

脚本自体は三年前くらいから練っていて、共同脚本した赤松とあーだこーだ酒飲んで討論する日々が続きましたが、ひょんなきっかけでMOOSIC LABの直井さんがひろって乗ってくれて、高校の頃から好きだった東京60WATTSの音楽で映画化する運びとなりました。

今でも嘘みたいだなと思います。昔の自分が聞いたら泣いて喜ぶんじゃないかと思います。俺の人生はそんなに大きなことがないと思っていたけれど、こういうこともあるんだな。

MOOSIC LABは新人、若手監督がミュージシャンとコラボして一本映画を作るというものですが、「MOOSICしている」監督で私が真っ先に思い浮かんだのは神代辰巳監督でした。

なので私は私なりに彼が創造した歌謡映画の復権と継承に力を注ぎたいと考えております。

また映画や音楽、とりわけロックンロールと呼ばれる音楽は、元来不良のものであると私は考えておりますので、その不良たちの破れたハートの受け皿になるような、あるいは前途あるティーンエイジャーが大きく道を踏み外す一助になるような、そんな映画が作れたらなと思います。

All The Young Dudes あれからみんなどう生きてますか?

あれからどんな人生生きていたって、君が好きです。

どうかよろしくお願い致します。

2019年3月 下社敦郎

「【森岡龍×川上奈々美 主演】MOOSICLAB2019上映!映画『東京の恋人』 - クラウドファンディングCAMPFIRE」より

『WALK IN THE ROOM』において、周縁的な人々を見つめる視線や、固有名詞の引用、そして劇中で大胆に音楽を導入するスタイルを用いながら、現代の風景とそこに生きる人々とをユニークに捉えた下社監督が、新作『東京の恋人』でどんな映画を届けてくれるのか。新作への期待とともに、下社監督のバックボーンを探るべく、『東京の恋人』を準備中の下社監督にインタビューを行った。

聞き手(実行委員:松田・内田・佐藤・宮崎)

——— 『東京の恋人』に向けてのコメントで、「昔の自分」「ティーンエイジャー」「All The Young Dudes」といった、過去の自分や若者たちについての言及がありましたので、まずは下社監督のこれまでについてお伺いできればと思います。三重県のご出身ということでしたが、どのような少年~青年時代を過ごしていたのでしょうか。

下社:三重県の南伊勢町というところの出身なのですが、市街地まで出ていくのに、その頃だと車で一時間くらい山を越えながら行くような田舎で、なかなか街にも出れなかったですね。子どものころは漫画が好きで、中学校を卒業するくらいまでは漫画家になりたいと思ってました。古谷実や井上雄彦の漫画、「ジョジョの奇妙な冒険」とか、当時、みんなが読んでいるものを読んでいたのですが、わりと絵が描けるほうだったので自分でも漫画を描いてました。10ページくらいの冊子を作って、クラスで回し読みさせたりして。でも、それが流行ってしまうと自分自身が飽きてきちゃうようなところがあって、それで書き手を違う人に任せたりしながら、何号か続いていたような記憶があります。自分で描くと、絵は描けるんですけど、なかなかストーリーが描けなかったんです。物語より、イメージの良さに惹かれるのが強かったかのかもしれません。ストーリーについては、あまり頭に入りにくい人間なのかなと思ってます。後々、映画美学校に入ったときも、ストーリーを勉強したいという思いがあって入った気がします。

——— 中学生までは漫画家になりたかったということでしたが、その後はどのような学生生活を送っていたのでしょうか。

下社:伊勢市の高校に進学して街に出るようになったので、この頃から映画を観たり、レコードを買ったりするようになりました。The Clashの1stアルバム(「白い暴動」)を聴いてパンクにのめり込むようになって、名古屋のAnswerや高円寺のBaseなんかのパンク専門店でCDやレコードを買ったりもしました。その頃好きで聴いていたバンドは、Slight Slappers、Charm、Breakfast、Exclaim、日本脳炎、struggle for pride、envy、ORdERとかですね。高校二年生のときには同級生とバンドを組んで、ただ進学校だったので、他のメンバーの受験勉強が始まっちゃったりして、そのバンドはすぐ解散しちゃったんです。でも自分はもっと音楽をやりたいという気持ちが強かったので、伊勢市の服屋でメンバー募集していたバンドを紹介してもらって、当時25歳くらいの人たちと結構本気でバンドをやってました。体育会のノリが厳しくて、平日の夜に練習して土日にライブをやったりと、結構ハードに活動してました。半年くらいたって喧嘩別れしちゃったんですけど、やっている間はすごく楽しかったです。

——— なにか映画に関する記憶などはありますか。

下社:高校の英語の先生が、映画についていろいろ話してくれたのを覚えてます。自分は好きな先生だったんですけど、女子生徒からは「授業進めてください」とか言われていて、好かれてなかったかもしれないですね。いま上映されている映画で、ジム・ジャームッシュの『コーヒー&シガレッツ』(2003)がおすすめだと言うので、観に行ったんだけど、寝てしまったんです。先生にそのことを伝えると「あれは寝る映画です。」と言われました(笑)。その後、大学に入って時間を持て余すようになってから、1日5本とか観るようになりました。そのときに青山真治監督や黒沢清監督の作品に出会って映画を作ってみたいという気持ちが芽生えてきた気がします。あと、青山真治監督やペドロ・コスタ監督はバンドもやっていたということで、どこかシンパシーを感じたりしてました。

——— その後、映画美学校に進まれてますが、青山真治監督や黒沢清監督のもとで学びたいという思いは、強かったのでしょうか。

下社:実は上京してすぐに美学校に入学したわけではないんです。学費を払えるほどの金銭的余裕がなかったというのもあるのですが、とりあえず東京の音楽や映画のシーンに近づきたいという田舎者の発想で、上京して高円寺に住み始めました。アルバイトでお金をためながら、なにかしないとと、出版社に漫画を持ち込んだりもして、それを気に入ってくれた人の紹介でチェリータイムスというフリーペーパーで漫画を描かせてもらってました。映画紹介記事を書くこともあって、最初に書いたのが『ライブテープ』(2009/松江哲明監督)のレビューでした。あとはTRASH-UP!!にZ級映画の紹介記事を書いたり、そんなことをしながら1年くらいでお金を貯めて、映画美学校に入学しました。青山さんに憧れて入ったものの、青山さんの授業があるのは年に1回だけだったんです。しかもよりによってその日にインフルエンザにかかって授業に出れなかったので、結局のところ青山さんには1回も会ったことがないんです(苦笑)。

——— 映画美学校では、『WALK IN THE ROOM』を制作する仲間と出会うこととなります。

下社:同期は80人くらいいたんだと思います。授業後の飲み会になるとシネフィルが多いので、映画の議論で盛り上がってるんですけど、自分は一歩引いているようなタイプでした。受講生には、ちょっと映画を撮ってみたいってくらいの軽い気持ちの女の子とかもいるんですけど、いま一緒にSALU-PARADISE(※1)をやってる鈴木知史は、そういう人たちに「君はケネス・アンガーを知ってるのか?」ってふっかけたりしてましたね(笑)。映画美学校には2年間通って、課題で短編を何本か撮ったりはしたのですが、修了制作ではシナリオが書けなくて、修了制作の企画選考などにもエントリーできないまま卒業しました。ただ、せっかく東京に出て来て美学校を卒業したんだから、1本は映画を撮らないとと思って、卒業後、数年経って同期の仲間たちを集めて作ったのが『WALK IN THE ROOM』です。

『WALK IN THE ROOM』(2016)

——— 2016年のTAMA NEW WAVEのコンペティションに選考された『WALK IN THE ROOM』は、非常にユニークな語り口を持っている作品として印象深い1本でした。この作品はどのような経緯で作られたのでしょうか。

下社:美学校に通っていた頃に書いたシナリオのプロトタイプがあって、学校生活が終わったあとも、いつかそれを形にできたらいいなとは思っていました。実際に動き始めるきっかけになったのは、2013年の年末に大瀧詠一さんが亡くなったことかもしれません。その頃は商業映画の美術の下っ端をやっていて、一応映画には関わっているんだけど、名前のない仕事というか、自分が作ったぞという感じがあまりないような時期でした。大瀧さんのことはとても好きで、音楽もそうですけど、考え方とか、ものの作り方とかにすごく影響されてるんですけど、大瀧さんも若い頃に自分の名前で頑張ってたし、自分もそういうふうにしなきゃなと、リスペクトも込めて自分も作らなきゃいけないという気がして、シナリオを書き上げて、2014年の4月くらいに美学校の同期に手伝ってもらい、役者も同期や友達を集めて、プロとかもあまりいない体制で、撮影しました。4日間撮影をして、その後すぐに追加撮影をする予定だったのですが、主演の役者が髪を切ってしまったため、髪が伸びるのを1年くらい待ってから追撮したりして、その後、編集して完成したのが2016年でした。

——— 『WALK IN THE ROOM』は、固有名詞や引用を散りばめることで、独特の世界観を構成しているようにも感じました。

下社:おそらくジム・ジャームッシュからの影響です。『WALK IN THE ROOM』は彼のデビュー作『パーマネント・バケーション』(1980)のような映画を当初は目指しました。その映画でもロートレアモンの引用があったり、ジャームッシュの映画はそういうの多いですね。固有名詞の多用はそれぞれ自分が好きなものというわけではなく、あくまで話や登場人物に合わせて配置しました。映画を撮ったのが20代後半だったんですが、初期衝動みたいなものが足りてないなと思っていて、自分の思いをダイレクトに出していくというよりも、引用で形を作っていくようなことを考えていたこともありました。

——— 石指拓朗や岡崎友紀の曲を1曲まるごと使っている音楽の使い方も面白かったです。このアイデアやこだわりはどのようにして生まれてきたのでしょうか。

下社:1曲まるまる使ったのは音楽の力を信じたかったからです。ライブハウスや通勤電車の中ではまるまる一曲聴くのに映画だと間が持たないといって編集してしまうのも変だと思うので。作り手としては1曲として、また1つのアルバムトータルで成立するよう使っているのに、それを映画を理由にしていいとこ取りでカットしてしまうのは不誠実だと思いました。また「テンポよく」物語を展開させることへの抵抗もありました。

——— そういうスタイルを選んだことと関連するのかもしれません。本作では恋人を亡くした主人公を描いていますが、人間に限らず、失われていくものや、懐かしくなっていたものへの眼差しが大変印象的でした。

下社:3.11の影響があったのかもしれません。映画では直接表現していませんが、裏設定で、恋人は東北の出身で、たまたま実家に帰った時に被災して亡くなってしまったという設定にした気がします。3.11以降のなにか今までと違うなという東京の感じを、震災を直接的に描かないでやってみても、その空気は映るんじゃないかとか思って、撮るならいま撮ったほうがいいなと思った記憶があります。

——— 『WALK IN THE ROOM』では、東京の郊外に住む中心から外れた人たちの生活模様が捉えられていて、その後に撮られた、ご自身の祖母を被写体とされた短編『ヴォワイヤンの庭』では、祖母が洗濯物を干す様子、つまり普段特別に意識に上らないような日常の所作を注意深く記録されていました。それぞれに共通しているのが、「周縁」的な小さなものを捉えるという点だと感じました。

下社:それが個性なのかはわかりませんが、ふと今、ランボーの「永遠」という詩について思い出しました。あの詩が指すところの永遠をどう解釈するかについてですが、自分は、横軸に広がっていく永遠についての詩なんだと思ってます。花火の一瞬の儚さが好きなんですけど、そこに宿っている永遠という感じでしょうか。映画もまた近いものがあると思いますが、その永遠を捉えたいという気はします。

——— 『WALK IN THE ROOM』や『ヴォワイヤンの庭』が、いくつかの映画祭で選出され上映されることになりましたが、上映前後で変わったことや気づいたことがあれば教えてください。

下社:映画の現場で美術の仕事をしていても全然儲からなくて、映画に関わること自体に疲れてきっていた時期に、自分で作品を作ってそれでも駄目だったなら、もう映画を辞めようと思って撮ったのが『WALK IN THE ROOM』でした。映画にうんざりしていたんです。そういうふうに撮った作品が映画祭で上映されたことで、次の作品も撮らないとなとは思いましたね。

『ヴォワイヤンの庭』(2018)

——— 次回作『東京の恋人』についてお伺いします。どんな映画になりそうか教えていただけますでしょうか。

下社:TAMA NEW WAVEで『WALK IN THE ROOM』が上映されたあとくらいから企画を考えていたのですが、以前、飲み屋で隣になった男2人・女1人のグループが、旅行の計画について話しているのが耳に入ったんです。その状況がいいなと思って、そこからロードムービーを想像しました。30歳を過ぎて、お互いに別々の相手と結婚している男女のロードムービーですね。あと、東京60WATTSの「外は寒いから」という楽曲が元々好きで、映画で流れたらいいなと思って相談したら、曲を使わせてもらえることになりました。青春の物語ではなく、青春の終わりの物語を描きたいなと思ってます。

——— 『東京の恋人』で森岡龍さんが演じる主人公の名前が「立夫」ということで、『WALK IN THE ROOM』の主人公と同じ名前となっています。この2作での「立夫」というキャラクターに共通して託したもの、あるいは共通して彼らが抱えているものがあれば教えてください。

下社:一応『東京の恋人』は『WALK IN THE ROOM』の続編ではないけど、連作のようなものです。僕の映画での立夫は、中上健次作品での秋幸のような存在です。今後も映画を作るならまた出てくると思われます。共通して言えるのはうまく波に乗れなかった人でしょうか。もがいたり、くたびれたり、あるときは他人の面倒ごとに巻き込まれたりします。そういった行動や周囲の人間によって男の輪郭や陰影がつけられるのは共通しています。今回の立夫は学生時代から映画を作っていたが志半ば諦めて結婚を機に地方へ引っ込んだという設定です。なので映画監督もされている森岡さんは気持ち的に入りやすいのではと考えました。森岡さんの誠実さと泥臭さに期待しております。

——— 『WALK IN THE ROOM』を再見して、下社監督が描くヒロインの魅力に改めて気付かされたのですが、「立夫」が今回どのような女性と触れ合うのか、『東京の恋人』のヒロイン像にも期待してしまいます。女性を描くときにはファム・ファタールというものを意識されると以前伺ったことがありますが、川上奈々美さんが演じる今回のヒロインはどのようなキャラクターになりそうでしょうか。

下社:川上さんとラインのやりとりをして川上さんに演じてもらう満里奈が一体どういう女性なのか僕なりに考え続けていますが、まだ明確な答えは見つかりません。ただ、一度森岡さんと顔合わせとホン読みをやっていただいたとき、川上さんの声色というかセリフを読んでもらっているだけの特に何にも演出していない芝居にハッとなりました。それはそこにいた人たち全員感じていたことではないかと思いました。先に公開になった特報でもその時の音声を一部使わせていただきました。「ファム・ファタール」とタグ付けしてしまうと、テンプレな気もするので、あくまで満里奈については、強くて儚くて芯があってかわいらしい女性じゃないですかね。承認欲求も他人より強かったけどもうそういうのには疲れている印象です。イメージ的にはZARDの坂井泉水さんとか、たとえ触れられても絶対にたどり着けないような女性かと思います。あ、それがファム・ファタールか……。川上さんは勘がいいので、あまり多くの言葉やテクニックを使わなくてもそこまでたどり着いてしまう人なので余裕持って楽しく演じてもらえればこちらも楽しくやれます。

——— “「MOOSICしている」監督で私が真っ先に思い浮かんだのは神代辰巳監督でした。”と、コメントを出されていたのが、大変印象的でした。MOOSIC LAB主宰の直井卓俊さんも、これを引用して「来るべくして漸く来た”真打ち”の登場といった気持ちにもなりました。」とコメントされていましたが、神代辰巳監督は下社監督にとってどのような存在でしょうか。また、「MOOSICしている」監督が神代監督だとすると、これからMOOSICにチャレンジする下社監督はどのようにMOOSICしようと考えていらっしゃいますか。

下社:神代さんはゴツゴツした手でフィルム編集している印象です。実際に手がゴツゴツしていたのかわかりようもないですが。いまおかさん(※2)は神代さんの遺作(『インモラル 淫らな関係』(1995))の助監督をしていて羨ましいなと思いました。ゴダールにもそのような印象を受けます。現在、器用な監督は多いのですが、そういった人の手で作られ、手垢まで付いているような印象を受ける映画はあんまり観られないような気がしています。神代監督はかなり練られた演出をされているのですが、豪快というか、役者さんも活き活きしていて、音楽の使い方も大味で好きです。神代さんの頃の制作体制や規模も時代も全く違うのでなんともいえませんが、歌がすっと入ってきて何故だか頭から離れないような、夜スナックの前を通ったら中から漏れ聞こえるおじさんの演歌に心を持っていかれるような、そんな調子でMOOSICしたいかなと思います。実はMOOSICのことがあまりよくわかっておりません……。

——— 下社監督の文化的なバックボーンはメインストリームから逸れたものが重要な位置にあると思われますが、下社監督の作品についてもメインストリームに対するカウンターという気持ちがあるのでしょうか。『東京の恋人』は、どんな人に届けたい映画になりますか。

下社:カウンター側だと思います。サブカルではなくてカウンターカルチャー。でも今はメインストリームもカウンターもサブカルも渾然一体というか、特に棲み分けされているようには思えないので、若い人たちにはそこから選び取るのが難しいのかもしれません。都内ミニシアターに足繁く通うお客さんは30代以上の割と生活も仕事も落ち着きつつ、でも映画が好きで刺激を求めて来られる方が多いのではという気がしますが、『東京の恋人』は年齢制限付いちゃうかもしれないんですけど、高校生とか大学生に観てもらいたいです。若い人に観てもらって道を踏み外して欲しいですね(笑)。自分も道を踏み外してきたので。こういう映画もあるんだと視野を広げられるような映画になればいいなと思います。あとはシネフィルよりも女性に観てもらいたいです。キツい意見をもらいたいです。

——— これから『東京の恋人』を撮影していくにあたって、最後に一言お願いします。

下社:たしか最初直井さんに送ったメールには2020年東京五輪において「東京」が記号化してしまう前に『東京の恋人』を撮りたいと書いた気がします。タイトルに「東京」と付けるのは結構勇気がいります。やはり田舎者だからスノッブにも感じるし、襟を正されるような気持ちにもなります。小津(安二郎)先生はそのへんどう思っていたのでしょう。当たり前ですけどみんな一人一人、東京でなくても、自分が自分の人生の主役でディレクターも兼ねてるので、『東京の恋人』でも主役とか脇役、端役に関係なくキャストのみなさんには全員主役のつもりで役を生きてもらいたいです。そういった個性が集まれば映画は出来るし、監督にできることはごく僅かなことだと思うので。もちろんすべて責任とりますけどね。

  • SALU-PARADISE…下社監督が映画美学校の仲間3人で作ったレーベル。SALU-PARADISEの成り立ちは、こちらで語られている。
  • いまおかしんじ(今岡信治)…1965年生まれ。映画監督、脚本家。下社監督はいまおか監督の『ろんぐ・ぐっどばい 探偵 古井栗之助』(2017)、『夫がツチノコに殺されました。』(2017)等に音楽で参加している。

映画『東京の恋人』は、6月の撮影に向けてクラウドファンディングでのサポートを募集中です。
【森岡龍×川上奈々美 主演】MOOSICLAB2019上映!映画『東京の恋人』 - クラウドファンディングCAMPFIRE


下社敦郎(シモヤシロ アツロウ)監督プロフィール

1987年三重県生まれ、映画美学校フィクションコース修了。監督作『WALK IN THE ROOM』(2016)でTAMA NEW WAVEコンペティション入選、カナザワ映画祭 期待の新人監督入選、『ヴォワイヤンの庭』(2018)にて妙善寺映画祭 最優秀芸術賞、オイド映画祭 ベストセレクション入選、福島映画祭、渋谷TANPEN映画祭、高円寺阿佐ヶ谷映画祭等で上映される。また、いまおかしんじ監督『ろんぐ・ぐっどばい』、『れいこいるか』(今年公開予定)、田尻裕司監督『愛しのノラ』などの映画音楽も担当している。
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下社敦郎監督作品紹介

『WALK IN THE ROOM』

数年前に恋人を亡くしたショックで声を失った、東京郊外の工場で働く立夫が、さまざまな人たちと出会いすれ違うなかで静かに再生していくさまを綴った作品。詩や音楽を引用しながらとり残された人たちの日常をそっと見つめるまなざしには、独特な詩情が漂っている。
『WALK IN THE ROOM』予告篇 - YouTube

『ヴォワイヤンの庭』

お盆に三重県南伊勢町の実家に帰省した監督が自身の家族と田舎を捉えたドキュメンタリー。物陰越しに祖母が洗濯物を干す様子などの何気ない日々の断片が、光/音の記録として紡がれることで、儚い生(せい)の時間がそこに刻まれている。
『ヴォワイヤンの庭』予告篇 - YouTube