第28回映画祭TAMA CINEMA FORUM
11月24日(土)ベルブホール、第一部は「アピチャッポン×遠藤麻衣子」と題して、アピチャッポン・ウィーラセタクン監督の『ブンミおじさんの森』と遠藤麻衣子監督の『KUICHISAN』を35㎜フィルム上映しました。その後、遠藤監督と批評家・編集者の夏目深雪さん(共編書『アピチャッポン・ウィーラセタクン 光と記憶のアーティスト』(フィルムアート社))をお招きしてのトークを開催しました。
遠藤監督と夏目さんの記事(遠藤麻衣子(『KUICHISAN』『TECHNOLOGY』監督)インタヴュー / boidマガジン』)でもふれられているように、アピチャッポンの作品を劇場で鑑賞する時はいつのまにか眠りについてしまうというお話を遠藤監督より紹介していただきました。本企画の上映当日、遠藤監督は『ブンミおじさんの森』を全編通して鑑賞して『KUICHISAN』と呼応する点を語っていただきました。作品で描かれる日常と非日常、超現実をあるがままにみつめる視点(ブンミおじさん、沖縄の少年)、現実と神話が混ざり合い異次元に没入していく感覚(タイと沖縄の歴史や土着性)、終盤の洞窟に入っていく臨場感も含めて両作品が響き合っていました。
会場には観客として来場された映画監督の姿もあり、遠藤監督の撮影エピソードや物語が立ち上がっていくさまをつぶさに語る姿に引き込まれていきました。そして、アピチャッポン監督がコロンビアで撮影する新作『MEMORIA』とともに、遠藤監督が東京で撮影する新作がどのようなものになるのか待ち遠しさが募りました。遠藤監督と夏目さんによるトークで作品の相違点や映画製作に迫っていくことで、境界を越えていく両監督の新作への予感を感じさせるものになりました。
アジアを越えて世界を新しくとらえ、観るものをどこか遠くに連れてきてしまう両監督の作品をフィルム上映することができ、関係者の皆さまに感謝いたします。