第30回映画祭TAMA CINEMA FORUM
幼少期に母を自殺で亡くした兄弟は、東京で2人きりのひっそりとした生活を送っていた。兄の祐介はある夜、橋から飛び降りようとする女性・菜月と出会い、惹かれていく。一方、弟の章大は期せずして菜月の秘密を知ってしまう。丹念な日常的セリフのなかに、時代の不思議な共感性をもつ作品。
恥ずかしながら、いわゆる実体験をもとにつくりあげた映画です。結果的に、僕にとってすごく大切な作品になりました。観客の皆さん全員にこの映画を楽しんでもらえるかは分かりませんが、この映画が皆さんにとって素敵な出会いになること、皆さんにとっても大切な作品になることを願っています。
1998年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学環境情報学部を中退後、映画美学校フィクションコース22期修了。同校の修了制作として本作『愛をたむけるよ』を監督。監督作の多くは会話劇で構成されていて、大半が自身の母親にまつわる話からインスパイアされている。
その日、明子は実家で暮らす姉から税理士との面会に誘われていた。前の年に父親を亡くしたためだった。今まで姉に家のことを任せきりにしていた明子は、申し訳なさからついていくことにしたが、仕事で姉が遅れたために一人で税理士のところに向かうことになる。
この作品で描かれているのはひとつの「子どもの時間の終わり」です。そこにある孤独や不安、迷いや焦燥といった言葉では収まりが悪いものに対して、自分がどのような視線を持つべきなのか、あるいは持つべきでないのか考えるためにこの映画を作りました。
1994年生まれ、茨城県出身。2016年に武蔵野美術大学映像学科に入学し映像制作を始める。本作を制作し卒業。現在、次回作の準備中。
「女の子に触れたい」という欲望を秘めたまま、おばさんになった高校教師の翔子。ある孤独な女子生徒にほだされ、人の道を逸脱し始める。40歳にして性に目覚めた女性の可愛らしさ、そして欲望に突き進む人間の怖さと滑稽さを描く。
ヤバい女を可愛く描きたい。その一心で作りました。この体にこびりついた30年分の醜さを、鰹節のように削って作った映画です。主人公の顛末を見返しては、「こんな女にはなるまい」と強く思う反面、「こんな風に生きられたらいいのに」と羨ましく思います。この映画は私にしか作れないと思います。
1988年生まれ、神奈川県出身。韓国ソウル在住歴あり。映画美学校の学内コンペにて監督に選出。修了制作として本作『泥』を撮る。在学中、短編『檸檬』でカナザワ映画祭「期待の新人」ノミネート。趣味・韓国語、園芸、猫。
地方の小さな町にそと子という女が住んでいる。ある夜、ある事を強要し、束縛する夫、敦也から逃れようと森を彷徨っていると、幹郎に出会う。彼は都会からやってきたよそ者だった。彼はそと子を気にかけはじめ、「自分ならなんとか出来る」と言うが、そと子は意に介さず、男を遠ざける。しかし、男の雰囲気に何かただならぬものを感じていた。そしてある日、町で殺人事件が起こる……。
閉鎖的な場所でサスペンスメロドラマを作りたいという気持ちで好きにやらせて頂きました。ずっと自分で見たいと思っていたものを、気づけば壊して、自分でも知らない場所に着地していました。一緒に作り上げてくれたキャスト、スタッフの皆さんに感謝しています。
1990年生まれ、神奈川県出身。立教大学卒業後、ニューシネマワークショップにて映画製作を学び始める。立教大学大学院で篠崎誠に師事し、修了作品として『彼女はひとり』を製作。その後東京藝術大学大学院にて黒沢清、諏訪敦彦に師事。実習作品『投影』はイランファジル映画祭にて上映。