第30回映画祭TAMA CINEMA FORUM
大学生の理枝は公園の砂場でフィルムケースを拾う。中に入っていたネガフィルムを現像すると、そこには海辺に立つ女と男の姿が写し出されていた。次の日、理枝はキャンパスでその二人によく似た学生を見つける。「由有」と名乗るその女に、理枝は次第に惹かれていく。
写真も映画も共に「過去の幻影」を映し出す媒体であるということを念頭に、キャスト・スタッフが一丸となり制作しました。スクリーンで映画を観るという当たり前だった行為がそうでなくなってきている今、私たちの作品を上映・配信していただけること、大変嬉しく思います。この映画が、心の奥にある何かを呼び起こすきっかけになれれば幸いです。
1998年生まれ、東京都出身。立教大学社会学部在学中。中学より自主映画を撮りはじめ、大学入学後は映画サークル「シネマトグラフ」に所属し、短編映画を中心に制作している。コロナ禍に制作したリモート映画『マージナル』(2020年)は、国外の複数のオンライン映画祭に選出された。
上京して音楽活動をしていた佐藤翔は、父親の訃報をきっかけに一年ぶりに帰郷した。一年ぶりの地元は何かが変わったわけではないのに、翔自身の事情も相まってどこか知らない町にも思える。地元に降り立った翔は、4人の知人を訪ね歩いた。各々と世間話をした翔は、もう一度4人のもとへ足を運んだ。翔は何のために再び4人に会いに行ったのか。東京から地元に帰省した男の一日を描いた物語である。
映画について何もわからなくなってしまったときにこの映画を撮ることになり、いざ撮り終えてみると余計にわからなくなりました。とても変な映画になったけれど、面白い瞬間がたくさん映っているので、とにかくそれに出会ってもらえると嬉しいです。
1996年生まれ、岡山県出身。イメージフォーラム映像研究所修了。映画美学校脚本コース高等科修了。岩手県住田町で映画を製作する「伯楽」の第二回作品として本作を監督。
クリーニング屋で働く心太の元にある日未来の自分がやってくる。しかし、年老いていて記憶が曖昧で役に立たない。一方、喧嘩して出て行った娘のみのりが夜になっても帰ってこない。何もかもが少しずつ狂っている夜。心太は運転中に車から飛び出していく。未来の自分の言葉が過去の記憶を呼び起こし、心太は森へと入っていく。
那須塩原の雨に打たれ、風に吹かれ、景色に魅了され圧倒されながら撮りました。過去も未来も今の中にあると僕は思います。でもだらだらと回る時間と日常のなかでそのことは忘れられがちです。だから映画にしてみました。ぜひご覧ください。
1987年生まれ、千葉県出身。早稲田大学卒。自主制作した映画『くだらない くだらない この世界。』、『アイニ向カッテ』、『コメディ』などが評価され、国内の映画祭で多数入選を果たしている。近年はWebCM、ジャズミュージシャンとのコラボレーション映像作品なども手がけている。監督作『アイニ向カッテ』が2019年全国で劇場公開された。
小野寺一郎は妻の洋子、弟の次郎と一緒に暮らしている。夫婦の性生活はうまくいかず、いつの間にか弟にも妻を抱かせている。そんな関係が続いていたが、ふと三人で関係を持った夜、一郎は失踪してしまう。それから二年がたち、次郎はたまたま兄をラーメン屋で見つける。帰ってきた一郎を洋子は受け入れる。また三人で性行為を行うが、微妙に立場の変わった三人にはズレがあり元の関係には戻れない。
描きたいと思ったのは、他人には理解されない兄弟の性生活と、社会一般には理解できないその考えが本人たちにとっては必要であるという姿です。また、一般的なレッテルから逃れるために、姿も人格も変えていく様を合わせて描こうと思いました。タイトルの≠という記号も、最後には三人の人間が身体を合わせて寝ている、という絵に見えて欲しいと思いました。
1987年生まれ。千葉県佐倉市出身。日本映画学校に入学し映画制作を学ぶ。同校卒業後、助監督としてサトウトシキ監督の作品など多数の作品制作に参加。2015年頃から自主制作映画を撮りはじめる。『≠』が福井映画祭13TH、ええじゃないか とよはし映画祭2020に入選する。