第30回映画祭TAMA CINEMA FORUM
『8日で死んだ怪獣の12日の物語』は劇場上映・オンライン上映を行っていますが、これまで多様な映画文化を支えてきたミニシアターが新型コロナウイルスの影響により苦境に直面していることから、売上の一部をミニシアター支援に充てる特別興行を実施。オンライン上映の売上の一部も本作上映のミニシアターに均等分配しています。
TAMA映画フォーラム実行委員会ではこの趣旨に賛同し、本プログラム売上の全額を支援に充当させていただきます。
2020年、世界で新型コロナウイルスの感染拡大により、人々は多大な被害と恐怖に陥った。サトウタクミ(斎藤)は通販サイトで見つけたコロナと戦う「カプセル怪獣」を買う。怪獣に詳しい樋口監督(樋口)に相談し、宇宙人を買った後輩(のん)や失業中の先輩(武井)からの連絡もあるなか、その成長を動画配信しながら見守る。
ほぼ、すべてをリモートで撮影するという新たな試みでつくられた、まさにコロナ渦中の2020年ならではの作品というのが率直な感想。主演の斎藤工氏をはじめどの出演者も、映画を観ているのかプライベートな会話なのか一瞬わからなくなるぐらい自然な演技で、感情移入させられる。コロナという見えない敵と戦う恐怖やその影響がじわじわっと伝わってくる。その敵に立ち向かわせるためにカプセル怪獣を飼育しようとするがうまくいかない。そのように本質から目を背け表面的な対処しかしていない大人たちに投げかける、のんの「地球ってこのままでいいと思います? じゃあなにかアクションを起こさないと」というセリフは、鑑賞している自分の世間への認識や甘えを顕(あらわ)にしてくれた。自分では何かをしているというつもりでいるが、果たしてそれが本当に何かのために行動出来ているのか? 頭上を飛んでいるロピを見ながら、カプセル怪獣は私たちのこのコロナに対する認識やこれからの取り組みへの道しるべになってくれているのではと思った。(杉)
1963年生まれ、宮城県出身。93年にテレビドラマシリーズの一篇『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』で日本映画監督協会新人賞を受賞。95年『Love Letter』で長編映画デビュー。翌年、『スワロウテイル』で第20回日本アカデミー賞優秀作品賞・話題賞を受賞。映画監督の枠を超え、テレビドラマ、ミュージックビデオ、CMなどで多岐にわたる映像制作活動をしている。本年は『ラストレター』『8日で死んだ怪獣の12日の物語』『チィファの手紙』を公開。
1981年生まれ、東京都出身。2001年に俳優デビュー。『愛と誠』(12年)、『昼顔』(17年)、『家族のレシピ』(19年)、『緊急事態宣言』(20年)等多数出演。『シン・ウルトラマン』(21年)など話題作の公開も控える。映画監督としても『COMPLY+-ANCE コンプライアンス』(20年)、『ゾッキ』(共同監督2021年公開予定)など精力的に取り組んでいる。新型コロナウイルスの影響で苦境に立たされている全国のミニシアター支援を目的とした「ミニシアターパーク」を発足するなど、映画界のための活動にも注力。