第31回映画祭TAMA CINEMA FORUM
2021年3月にスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)が名古屋入国管理局の施設で亡くなった。フォトジャーナリストの安田菜津紀さんは「施設内でのウィシュマさんの様子を写した約2週間分の映像はごく一部が遺族のみに開示されたのみで、真相の解明とは言えない内容だった。2017年以降、入管施設では17人が死亡し、そのうち5人は自殺だ。このままでいいはずがない。」という。様々な理由で、産まれた国を離れ、夢を持って日本にやって来た外国籍の人たち、しかし、日本においては、「生存権」すら認められていない様な状況に追い込まれている方たちが多く暮らしています。
このプログラムは、日本に暮らすクルド人を追ったドキュメンタリー映画『東京クルド』の上映と、本作監督の日向史有氏のトークを通して、報道すら稀にしかされない現実を、少しでも多くの日本人に知ってもらいたい、そんな思いで企画しました。
『東京クルド』は、日本で生きる2人のクルド人青年を5年以上にわたって取材し、日本におけるクルド難民の実情を切り取ったドキュメンタリー。故郷での迫害を逃れ、小学生の頃に日本へやってきたトルコ国籍のクルド人のオザンとラマザン。難民申請を続け、入管の収容を一旦解除される仮放免許可書を持つが、身分は非正規滞在者だ。いつ収容されるかわからない不安を常に感じながらも、2人は夢を抱き、将来を思い描く。しかし、現実は住民票もなく、自由に移動することも働くこともできない。2人のクルド青年の日常から、救いを求め懸命に生きようとする難民、移民に対する国や人々の在り方を問う。
トークは、日向史有氏から、製作のきっかけ、日本における難民の状況、入管法や仮放免など難民問題を考える上での知識など、映像に関する事や、非正規滞在者に対する日本の対応の問題点までにおよぶ内容を熱く語って頂き、スタッフが事前に用意した質問や、映像を観て頂いた後に集めた来場者からの質問票に答えて頂く形で進行し、最後にオザンとラマザンの現状をお伝え頂き、今後のご予定などをお聞きして締めくくりとしました。
半数以上の来場者の方が質問を書いて頂き、アンケートにも多くの方が、色々な感想やご意見をお寄せ下さり、日本における難民問題を知っていた方も知らなかった方も、改めて強い関心をお寄せ頂いた事を実感しました。難民問題に限らず、その問題について既にご存知の方にも、ドキュメンタリーとして具体的な事例をお伝えする事で、改めて問題の重要さを認識して頂ける事を再認識しました。今後も映画祭のプログラムを通して、さまざまな情報を発信していきたいと思います。
ご来場頂いたお客様、ゲストとしてお越し頂いた日向史有監督、上映を許諾頂いた配給会社、関連書籍のチラシを急遽制作頂いた出版社、企画を採用頂き、また、当日の運営を担って頂いたTAMA映画フォーラムの仲間に、改めて感謝致します。