第31回映画祭TAMA CINEMA FORUM
第13回TAMA映画賞で特別賞、最優秀男優賞、最優秀女優賞の3部門受賞に輝いた『花束みたいな恋をした』の上映と、土井裕泰監督をお招きしたゲストトークを開催いたしました。
翌週の授賞式に先駆けて行われたトークの冒頭では、場内から土井監督に向けて受賞を祝福する拍手が。特別賞の受賞理由につながる、観客が自分自身の物語を投影してしまうほどのリアリティについて、土井監督は「坂元裕二さんが書かれた、大きな事件や枷なくとも、日記のように淡々と日々を積み上げていくなかに感情のうねりが生まれる脚本に対して、撮影現場でも一日一日を積み重ねていくことを心掛けていった」とお話されました。
プログラム会場となった聖蹟桜ヶ丘ヴィータホールまで、作品に登場する京王線に乗り明大前で乗り換えをされて来場されたという土井監督。坂元さんが初稿として書かれた脚本では、聖蹟桜ヶ丘で映画『耳をすませば』の聖地巡りをしているシーンがあったという、多摩市のファンにとって嬉しい裏話も飛び出しました。京王線の車内や街なかに、麦と絹が今も居るような気がするというお話に、客席の多くが頷いていました。
2015年から2020年にかけての物語である本作は、コロナウイルス感染拡大や東京オリンピックの延期と開催といった現実社会の激動に前後して制作・公開がされたこともあり、劇中でオリンピックについて話すシーンや、深夜まで営業しているファミレスや居酒屋の風景など、制作時には思いもよらなかった発見や感慨があるというお話に、改めて本作における観客の日常と地続きにあるようなリアリティが感じられました。
SNS等で質問を募集したQ&Aのコーナーでは、「居酒屋のシーンで絹ちゃんの服の袖に枝豆がついているのは演出ですか?」との質問が。土井監督はこれまで映画を観ていても気づかなかったそうで驚かれつつ、意図的な演出ではなかったものの「深夜の居酒屋で語り合って知らぬ間に袖に枝豆がついている、というのもまたリアリティかもしれない」とコメントされ、客席で共感の笑みが飛び交いました。このほかにも、クライマックスとなったファミレスのシーンでの撮影エピソードなど、ファンの方から寄せられたQ&Aならではの貴重なお話を伺うことができました。
当日の来場者には、雑誌「ロケーションジャパン」の『花束みたいな恋をした』調布市ロケ地マップ掲載号を特別贈呈。会場ロビーでも、雑誌に掲載されているロケ地マップをTCF実行委員が実際にロケ地巡りをした際のスナップとともに展示するなど、映画の舞台のご近所であるTAMA CINEMA FORUMならではの特集でご来場のみなさまにお楽しみいただきました。
ご登壇いただいた土井裕泰監督、そしてご協力いただいた関係者のみなさま、誠にありがとうございました。