第31回映画祭TAMA CINEMA FORUM
第29回レインボー・リール東京でも上映された『恋人はアンバー』。日本未配給である本作を上映いたしました。また上映後には、コラムニストの山崎まどかさん、映画執筆家の児玉美月さん、歌手のゆっきゅんさんをお招きしてのトークを行いました。
同性愛者のエディとアンバーが出逢い、周囲にセクシュアリティを悟られないようカップルを演じることで仲を深めていく過程を描く本作について、ゆっきゅんさんは「学生時代を思い出した。男子/女子として存在する中のしがらみを抜け出す方法を模索していた」と語ります。児玉さんからは「メインテーマとしてゲイとレズビアンの交流を描く映画は、ありそうでなかった。一言で”同性愛者”というふうに括られても、一本の映画でレズビアンやゲイの差異を描けているのが素晴らしい」とお話しいただきました。山崎さんは本作について「男と女が背負っているものの違いを、交流により分かり合える」とお話しいただいたうえ、舞台である90年代のアイルランドの時代性や歴史についても伺うことができ、作品への理解をより深められました。
そしてトーク後半では、同じくアイルランドが舞台となっているドラマ『ノーマル・ピープル』や映画『ぼくたちのチーム』についての話も交えながら、本作でも描かれるアイルランドの抑圧的な社会性についてお話いただきました。また、作中の印象的な場面やラストシーンの感想などについても伺いました。
本作はロマンティック・コメディの伝統を踏襲したような展開である一方で、セクシャリティの”アウティング”(*1)と”カミングアウト”(*2)の違いを明確に描いたり、男女の規範がいたるところで逆転している構成や台詞の言い回しなど、細部まで丁寧に描かれていること、また友情をロマンティックに描き、男女の関係の広がりを感じる作品だったとお話しいただきました。
お三方による貴重なトークにより、本作の魅力をより深く探ることができました。山崎まどかさん、児玉美月さん、ゆっきゅんさん、ご来場いただきましたお客様、そして本作の上映にあたりご協力いただきました皆様へ、心より感謝申し上げます。
*1: 人のセクシュアリティを勝手に第三者へ言いふらすこと
*2: セクシュアリティを自らの意思で打ち明けること