第27回映画祭TAMA CINEMA FORUM
ヨーロッパの映画関係者の注目集めるブリィヴ映画祭から選りすぐりの作品2本、そして『ハッピーアワー』で世界的映画作家となった濱口竜介監督最新作『天国はまだ遠い』を上映する、大充実のプログラム。上映後には、エルザ・シャルビさん(ブリィヴ映画祭ディレクター)、ユベール・ヴィエルさん(『アルテミス〜』監督)、岡本英之さん(『天国〜』プロデューサー)らをお招きしてトークを行いました。
以下にトークの内容を一部ご紹介します。
エルザ・シャルビさん:
「ブリィヴ・ヨーロッパ中編映画祭は、1968年発足のフランスで最も古いフランス映画監督協会が主導して2004年に作られました。ブリィヴ映画祭を作ったきっかけは、中編映画(30分〜60分以内)は、短編映画祭で流すには少し長く、長編映画祭ではというちょっと短いことから、中編映画祭の必要性を感じたからです。
(…)ここ2年間では、一年に450本程の作品が応募されています。その中で選ばれるのはわずか22本です。ジャンルは問わず、フィクション、ドキュメンタリー、実験映画、アニメーションなど様々です。
(…)中編映画は、短編では足りないストーリーテリングや演出を充実させて、人物や物語を語ることができるよさがあります。長編映画に準ずる語りの形式を持ちつつ、また予算や制約の問題で長編映画では少し重たくなってしまうのを回避し、短編映画の軽快さや自由さも併せ持っています。ただこのフォーマットに挑戦するのは勇気がいると思います。普及するかどうかは未知数なので。監督やプロデューサーの強い意志がないとできないと思います。そういった意味でも出来上がった作品は力強いものとなっていると思います。(…)」
ユべール・ヴィエルさん:
「『アルテミス〜』は、元々別の大きなプロジェクトが頓挫したときに、自主でやろうと思って撮った作品です。しばらく撮影していなかったので友人たちとやろうという話になり、彼らにはボランティアで参加してもらいました。経済的には貧しい状況でスタートしましたが、結果的に演出面で自由を手にすることができました。本作の大きなアイデアとして、普通は混ぜない要素をミックスしてみるというものがありました。主役の二人の女の子は、本当だったら出会わない二人が出会うものですし、演技やフォルムにおいてもギャップのあるものを組み合わせてみようというアイデアがありました。とても現実的な写実主義の描写がある一方で、神話的なマジックな要素が混在するといったところを目指したのです。作品のトーンは、トラジコメディという悲劇と喜劇が混在している—どちらかというと本作はハッピーエンドで終わるのですが—違うトーンのものをミックスするというのが目指したトーンです。両極端のものに脚を伸ばす、いわば体操選手の「開脚体操」のような作品になりました。(…)」
岡本英之さん:
「『天国はまだ遠い』は、『ハッピーアワー』のクラウドファンディングの資金を提供してくれた人へ向けて作られた作品です。本来であれば『ハッピーアワー』と並行して撮影されるべき作品でしたが、時間が足りず、撮影後の製作になり、全く新しくキャスティングを行って生まれた作品です。クラウドファンディングの支援者にはご理解頂き、もっと多くの観客に観て欲しいということで今回このような上映の機会を頂きました。
「…」『ハッピーアワー』という作品はいわゆる商業映画として企画されたものではありません。結果として5時間17分という長さで、映画祭で上映することも難しい作品です。プロデューサーは私含めて3人いますが「長いよね」という話にはなります。そこは通常の作り方ではない作り方をしているわけですから、監督がその長さこそ最も正しい長さなのだとしたら、そのことは最大限尊重しなければなりません。それが監督の作りたいものである以上それが全てだという考えで僕たちはやっています。(…)」
映画祭ディレクター、監督、プロデューサーというそれぞれの視点からお話を頂き、あっという間に予定の時間が過ぎました。ブリィヴ映画祭という中編映画が対象のユニークな映画祭と、新たな才能を感じる作品を紹介するプログラムに、多くのお客さんにご来場頂けて企画者として大変嬉しかったです。
広島国際映画祭を終えて東京までお越しいただいたエルザさんとユベールさん、多忙な中お越しいただいた岡本さん、本当にありがとうございました。(佐藤)