第27回映画祭TAMA CINEMA FORUM
30分~100分の中・長編作品を対象とした若手作家のコンペティション、TAMA NEW WAVEコンペティション。第18回目の本年度は、全国から集った応募作品125作品のなかから実行委員の1次審査、2次審査の結果選出されたコンペティションノミネート7作品が上映され、各賞を競いました。
授賞式最初の発表、観客投票の結果で決定するベスト男優賞には『ウルフなシッシー』主演の大野大輔氏が選出。本作では監督も務めている大野氏は「俳優として賞を獲得するのが果たして僕でいいのか恐縮しておりますが、これも作品に協力していただいたスタッフや役者の皆様に尽力していただいたからこそだと思います。」と、スタッフ・キャストへの感謝をコメントしていただきました。
続いて発表されたベスト女優賞は『ウルフなシッシー』主演の根矢涼香氏が選出。当日の上映中に何度も観客の爆笑を引き出していた『ウルフなシッシー』の二人がベスト男優賞・ベスト女優賞に輝きました。根矢氏は当日欠席のため、大野監督が根矢氏から届いたコメントを代読。「今まで続けてきたことと、これからの大きな励みになります。今この場にいられないことがとても残念です。この役を私にくれた監督、映画祭、会場の皆様に感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。」とコメントをいただきました。
個人賞に続いては、ゲストコメンテーターによるプロフェッショナルな視点から選出される特別賞が発表されました。本年度のゲストコメンテーターにお迎えした石塚慶生プロデューサーと入江悠監督に選出されたのは岡倉光輝監督の『アマノジャク・思春期』。岡倉監督は「今回の入選までに4年の年月をかけて編集してきたので、今回受賞して努力が報われたという思いが強いです。それもこの作品を見て何か感じるところがあると思ってくれた人がいてくれてこその結果なので、この映画を見て評価してくださった方に感謝したいです。」と、感謝の思いを伝えていただきました。
石塚プロデューサーからは「苦労が結実したという一つの形であり、このテーマに挑んだという監督の挑戦が結果的に人の心を動かしたという、映画が本来持っている素晴らしさがあったと思っています。」と、『アマノジャク・思春期』の魅力を語っていただき、「監督はひとたらしでなくてはならない。人を巻き込んでいく能力は非常に大事です。」と今後の活動へのエールを送っていただきました。
入江監督は『アマノジャク・思春期』について「身体的なコンプレックスや自分の抱えている作家自身の問題をさらけ出すのは想像しているよりかなり辛いことだと思うんですけど、それを果敢にやったことを讃えたい。」とコメント。また本作のラストについて、「なにか収まりの良いところに着地しないで、登場人物の少年や、監督自身が抱えている不安というか、それをちゃんと映画の決着のところで世界に向けて放ったというのを僕はすごい評価したいと思って選ばせていただきました。」と特別賞選出の理由を語っていただきました。また、20代の頃に各地の映画祭へ自主制作映画を応募し続けていたというご自身の経験をもとに、「映画は作れば作るほど上手くなるので、今日上映した作品の監督は絶対これから活躍するはずだと思っていますので、是非これからも作り続けてください。」と、上映監督たちへ応援のメッセージもいただきました。
授賞式最後の発表では、実行委員票とコンペティション当日の一般審査員票で決定するグランプリとして大野大輔監督の『ウルフなシッシー』が選出。「何故こんなことを続けているのだろうかと、映画を作ることの業(ごう)を感じながらもここまで自主映画を撮り続けてきた」という大野監督には、「今日みたいな日もあるんだな、たまにはいいこと有るんだなということを思いながら、これからも映画をつくっていけたらいいなと思っております。」と、受賞の喜びと今後に向けての抱負を語っていただき、授賞式を締めていただきました。
今回の受賞結果は、『ウルフなシッシー』がベスト男優賞・ベスト女優賞・グランプリの3冠受賞となりましたが、上映した7本それぞれに高い評価が集まっていて、受賞結果についてもそれぞれ僅差で競るような展開となっておりました。ノミネートの7作品はどの作品も見応えのある作品となっており、観客の皆様からも新鮮な感想が集まっていたようでした。魅力的な作品をみせてくれた上映監督たちの今後の活躍を大いに期待していきたいと思います。